なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

高齢者の低ナトリウム血症~MRHE

2019年07月02日 | Weblog

 外科で胃癌術後のフォローをしている80歳男性は、以前から低ナトリウム血症(110~130)があり、食欲不振で入院していた。

 今回低ナトリウム血症・高カリウム血症で内科に相談されて、内科の若い先生が対応した。熱心に検査していたが、結論としては(高齢者の)鉱質コルチコイド反応性低ナトリウム血症(MRHE:mineralocorticoid-responsive hyponatremia of the elderly)と診断された。

 Na負荷で改善しなかったため、鉱質コルチコイド製剤フロリネフ0.1mg/日を開始して、血清ナトリウム値は正常化していた。診断は正しいのだろう。

 高齢者の低ナトリウム血症は時々見かけるが、きちんと検査することは少ない。血清ナトリウム120後半だと、特に症状がなければそのままになっていたりする。

 鉱質コルチコイド反応性低ナトリウム血症は、加齢による腎のNa保持能の減退により尿中へのNa排泄が増加して、循環血漿量が低下する。高齢者ではレニン・アルドステロン系のフィードバック機構が鈍化していて、循環血漿量が低下してもレニンが上昇しにくい。

 循環血漿量の低下でアルギニンバゾプレシン(AVP)が上昇して、腎集合管の水再吸収が増加して低Na血症になる(循環血漿量の低下は軽度になる)。

 低Na血症で、血漿浸透圧低下・尿浸透圧増加・レニン低下・AVP上昇なので、SIADHと同様になる。違いはSIADHが脱水症なしで、MRHEが軽度脱水症だが、高齢者では軽度の脱水症の有無はわかりにくい。

 SIADHの治療は水分制限だが、MRHEでそれをすると悪化してしまう。けっこう難しい。今回は甲状腺機能低下・副腎不全の有無を検査したり、浸透圧やレニン・アルドステロンを測定したりしていたが、高齢者の低Na血症全員にするかというとそれも難しい。血清Na120未満とか、症状があれば精査するというところか。

 

 

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 糖尿病性ケトアシドーシス | トップ | 尿カテーテルの良し悪し »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事