なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

「意識障害の評価方法」

2024年10月02日 | 脳神経疾患

 「集中治療医学講座6 意識障害の評価方法」は昭和57年発行の古い本だ。懐かしくなって、再度購入した。

 amazonでは一時品切れとなっていたが、楽天ブックでは出版社取り寄せになっていたので購入手続きをした。一定期間後に連絡がなければ取り消し扱いということだったが、無事届いた。

 昔、研修医3年目に勤務していた病院(研修病院から半年の派遣)で院内職員向けに講義することになった。この本をもとにして話をしたが、結構受けた。指導医の先生にも面白かったと褒められたが、この本の内容が良かったというだけだった。

 Japan coma scale(JCS、3-3-9度方式)を作成した脳外科医が詳しく説明していてわかりやすい。一部抜粋して記載する。

 

 JCS Ⅰ. 刺激しないでも覚醒している状態(1桁で表現)

  Ⅰ-1 大体意識清明だが、今は一つはっきりしない

 ”意識清明といい切るには今一つ抵抗がある”とはどういう場合をさすか。3-3-9度方式の最も非科学的部分で、判断する個人によりかなり違った結果が出てきそうなところである。このような意識レベルは除去してしまった方が良いように思われるが、事実使ってみると案外便利で使われることが多い。

 われわれが”1”と判断する例は。たとえば名前、生年月日がいえるし見当識もあるが、正しい答えが出るまでに何回も間違えるとか、時間がかかる場合、また連続引き算、たとえば100から9を連続して引かせてできなかったり、途中から引けなくなったりした場合も”1”にしている。このほか診察途中ほどんど喋らず、答えも”うなづく”とか”頭を横に振る”ような動作で返ってくるとか。”うん”と答えるような患者、また反対に診察中何かにつけて、”口をはさむ”患者の場合も、一応”1”にしている。

 このような判断が正しいかどうかわからないが、いずれの場合でも”1”には緩衝効果が期待できる。意識清明として無罪放免するには一抹の不安を覚えるなら、”1”と理解しておく方が無難である。

 Ⅰ-2 見当識障害がある

 ”今日は何月何日ですか?”と聞いて、どこまでを誤りとするか。たとえば今日は”11月3日”としてみよう。患者の答えが10月とか12月でしょうというのみで、日付をいえないときには見当識障害(時)があると判断する。これに対して11月までは正しく答えるが、日付のわからない場合はどうするか。このような場合には、”月の始め、中頃、終わりかどうか”を聞いてみる。月の初めだとこたえれば見当識正常と判断している。正常成人でもときに月日に対して無頓着な人がいるからである。なお、”場所”、”人”に関する見当識障害の判定で問題の起こることは少ない。正しい病院名がいえなくても”通称”病院名で正しければよいし、遠隔地から自動車で来院したような患者の場合、”大阪の病院”、”東京の病院”だけでも正しいと判断している。また愛妻を”うちのオバハン”といっても問題なかろう

 Ⅰ-3 自分の名前、生年月日がいえない

 名前を聞いて間違う正常成人はまずいない。したがってどんな形の間違いでもすべて誤りである。ときに結婚前の姓を名乗る女性がいる。生年月日も正常人で間違うことはまずなく、また答えるのに躊躇する女性もいない。これに反し、年齢を聞くと正常人でもときに1つや2つ間違うか、あやふやな人がいる。生年月日と年齢の大きな違いは、前者が過去の記憶であり、後者は最近の記憶に属することである。なお、幼児の場合には年齢を聞くか、学童児であれば誕生日を聞くとよい。

 

 飼い猫も、飼い主と他人を区別できて(人)、夕方家に帰って来るので(時、場所)、見当識障害はないと判断される、という話をしてけっこう受けた。

 お婆さんといえる年齢の女性が救急搬入されて、名前の姓が違っていたことがある(名は合っていた)。家族に訊くと、「ああ、お婆ちゃん旧姓だ」、といわれたことがあった。

 

意識障害の評価方法 (1982年) (集中治療医学講座〈6〉)

 

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