施設に入所している81歳女性が、短時間(数秒?数十秒?)のけいれんで救急搬入された。搬入時は、この患者さんなりに意識清明だった。発熱があり、血液検査で炎症反応上昇を認め、肺炎があった。先月末に当院の外科医がやっている嚥下テスト(実際は聴覚言語療法士が行うが)を受けていた。肺炎自体は誤嚥性のようだ。頭部CTでは著明な脳萎縮と脳室拡大があった。
嚥下テストとして、当院ではX線透視で行っている。経鼻内視鏡を直接見ながら行う方が正確らしい。ただし、化学療法学会などで誤嚥性肺炎や嚥下障害の話を聞いたが、テストしても誤嚥は常に起こるとは限らず(常に起きている場合はテストするまでもない)、それほど正確なものではないそうだ。実際に、施設職員や病棟の看護師さんが食事の観察から、この患者さんは嚥下が難しいと判断するのが一番正確ということだった。
今回の患者さんはアルツハイマー型認知症で寝たきり状態で四肢は拘縮して固まっている。無理矢理両腕を広げないと胃瘻を造設すべき腹部が見えない。まず胃瘻の適応はないと思われるが、家族の意見では、嫁は処置に反対で、息子はお願いしますだった。たぶん肺炎治癒後に、胃瘻になるのだろう。施設に籍があるので、処置すればすぐに帰せるという点が、病院としては助かる。作ったはいいが、引き受け先がないと困ってしまうので。
81歳という年齢は微妙なところだ。90歳なら胃瘻はしない。70歳台なら、普通は行う。80歳台はケースバイケースだ。ただ、以前に比べて、胃瘻造設の件数は十分の一に減った。全国的に無意味な胃瘻に批判が出だしてから、当院でも適応を考えるようになった。以前は胃瘻造設が得意な先生がいて、とにかく作っていた。別の病院に転勤になったが、そこではどうしているのだろうか。