老いの途中で・・・

人生という“旅”は自分でゴールを設定できない旅。
“老い”を身近に感じつつ、近況や色々な思いを記します。

認知バイアス  その⑤  ~現在バイアス(現在志向バイアス)~

2019年06月29日 20時39分14秒 | 法則/心理効果・現象など
 いよいよ問題の現在バイアス(Present Bias)(或いは現在志向バイアス)です。

 上記の その② ~自分が可愛い/楽したい~ の代表的な例であると共に、後述の行動経済学で最も取り上げられるバイアスです。

 2002年にノーベル経済学賞を受賞した米国のダニエル・カーネマン博士が主張したバイアスで、将来の長期的な利益と現在の短期的な利益をはかりにかけると、将来の利益を軽く、現在の利益を重く感じる心の働きを言います。
 即ち、我々は未来の大きな利益の可能性よりも、目の前にある小さな利益の現実を重視する傾向があり、“近視眼性”と呼ばれることもあります


 私が、このバイアスをわざわざ別枠で取り上げるのは、このバイアスが個人レベルや経済活動のレベルに大きな影響を与えているだけでなく、最近では政治的目的の為に組織的にも利用されているからです。

 例をあげると、
<日本の場合>
大幅な財政赤字の継続にも拘わらず、政治家は有権者に不評を買う財政改善策には極端に消極的で、逆に財政健全策に逆行する様々なバラマキ施策で有権者に対して、“あなたの今の利益を尊重します”と目先の利益を約束して、選挙での勝利だけを最大目標とする政治が長期にわたって行われています。

<海外でも>
・英国の欧州連合(EU)離脱決定や、米国のトランプ大統領の政策などは、そのお手本でしょう。
・特に、トランプの「アメリカ・ファースト」や、欧米各国で台頭する反移民政策などは、このバイアスの代表でしょう。


 要するに、選挙に勝利することが最大の目的であり、
・色々な政策を掲げる際にはそのマイナス要因を隠ぺいしたままで(或いはオープンにしない)
・先人達が努力して積み重ねてきた合意過程や実績は無視し、
・更に将来の子供たちの世代の事をまったく考慮せず、
あくまで現在の有権者の現在バイアスに訴える政策を掲げる事が横行しています。

 正に、現在バイアスを利用して、現在の有権者の利益(?)を守るような政策を前面に打ち出すことで、自分達の選挙での勝利を最大目的とし、人間としての英知を集めた蓄積である過去と、子どもたちの将来である未来を分断してしまうような恥かしい政治がまかり通る事態になっています。

 将来に置いて、このような政治が非難されるような事態が起こっても、“その政策を有権者が同意したから推進した”との言い訳で責任を逃れることは想像できます。正に民主主義制度の悪しき利用なのです。

 このように、現在バイアスに訴えれば、大衆の共感や支持も集めやすくなりますし、更にこれと先に<その②>で述べた内集団バイアスを組み合わせると、国民の多数が選んだ民主主義の成果という美名の下に、大衆迎合主義(ポピュリズム)の流れが容易に出来るでしょう。(まさ)

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