山と溪を旅して

丹沢の溪でヤマメと遊び、風と戯れて心を解き放つ。林間の溪で料理を造り、お酒に酔いしれてまったり眠る。それが至福の時間。

岩魚の溪へ

2008-08-18 23:25:53 | フライフィッシング
お盆中は殺生を控えて溪にも立たず、昼からビ-ル三昧の骨休めの日々を過ごした。

そして今日は事務所の夏休み最終日、計画していた岩魚の溪に入った。
林道を1時間ほど歩いた入溪点から2時間ほど釣り上り、後半は落差の厳しい落ち込みを源流帯へと遡行する。

来週と再来週は、南アルプスと中央アルプスのヤマトイワナの谿を日帰りで詰める強行軍になる。
今日はその足慣らしの積もりでもあるのだ。

入溪してしばらくは美しい溪畔林の中に清冽な流れが続く。



落ち込みの巻き返しから岩魚が姿を現わした。
岩魚の溪に棲む岩魚は、流れに磨かれ底石に同化して、岩魚本来の美しく精悍な面構えになるのだ。



素晴らしい流れを快適に釣り上がり、前方の石に飛び移ろうとしたその瞬間。
左ふくらはぎが『プチッ』と音を立てた。2~3歩進んで突然激しい痛みに襲われて立ちすくんだ。



左足に体重を乗せると激痛が走って動けない。肉離れである。
岩に座り込み、あまりの痛さにたまらずスパッツを外したが軽快する筈もない。

どうしようか?
先ずは冷静に考えよう。
ザックに1本だけ入れていたビ-ルを飲み、タバコをくゆらせた。

今日は月曜日、平日に人が入ることは期待できない。
今日に限ってツェルトもシュラフカバ-も携行していない。
予備の食糧も調理用具も持ち合わせていない、ないない尽くしである。



だとしたら自力で下山するしかないのだ。
ロッドをたたんでザックにセットし、山刀で木枝の杖を2本作って溪を下った。
激痛の走る足は、爪先立ちにして体重をかけないようにすれば少しは痛みが和らいだ。
こんな時、テ-ピングの知識があれば役に立つのかも知れない。

顔をゆがめながら、歯を食いしばりながら溪を下った。
落差のきつい上流域であったなら多分身動きできなかったはずである。



最後の林道歩きは3時間を要した。
この3時間の辛かったこと、車が見えた時には安堵感と疲労感でその場にへたり込んでしまった。

単独行の溪は様々な危険を孕んでいる。
熊との遭遇、鉄砲水、落石、転倒、転落、そして肉離れという伏兵も、、、、、、。

それでも単独行をやめられないのは何故なのだろうか?

山深い谿にひとり、五感が研ぎ澄まされていくことへの陶酔。
遭遇する危機を自分だけの知恵と技量で乗り越えていくことへの挑戦。

しばらくは溪に立つことは叶わないが、あの山の奥の溪には必ずもう一度挑戦したい。
そして、しばらく逢っていないヤマトイワナの谿にも、立ちたいと思うのだ。

コメント (16)
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