山と溪を旅して

丹沢の溪でヤマメと遊び、風と戯れて心を解き放つ。林間の溪で料理を造り、お酒に酔いしれてまったり眠る。それが至福の時間。

八つの天狗岳

2016-10-09 17:59:57 | 山歩き.散歩
『高崎さんって、今日から常念やるんですよねえ? いま中房温泉まで車が入れませんよ』
木曜日の午前0時すぎ、出発の準備をしているところに双六小屋で知り合った川崎のNさんから電話が入った。
『えぇ-っ、嘘でしょ?』
ブログで僕が燕(つばくろ)から常念山脈を縦走することを知っていて知らせてくれたらしい。
『表銀座をやるつもりで来たんですけど台風で倒れた木が道を塞いで通行止めなんですよ!』
『これから僕はヒエ平に向かって一の沢を登りますけど高崎さんはどうします?』
『だったら今日は中止して寝ますわ、増水しているだろうから一の沢は気を付けてね!』
こうして今年の台風の数々は、僕が大切に温めていた計画のことごとくを破壊して通り過ぎて行く。

翌く金曜日、計画を変更して八つの天狗に登って懐かしい根石岳山荘に泊まろうと桜平に向かった。
平日だというのに駐車場からあふれた車が15台ほど路駐していた。

感じのいい渓を眺めながら急坂の林道を30分ほどで夏沢鉱泉
そこからオ-レン小屋までは八つらしい苔むしたシラビソの道を登って行く。





学生時代、美濃戸から入って赤岳、横岳、硫黄岳、天狗岳を縦走し、みどり池を経て稲子湯に下りた。
岩峰と苔むしたシラビソの森、そして清々しい渓の流れは北アルプスにはない魅力を秘めているというのに
あれから64歳になる今までに八つと触れ合ったのはほんの数えるほどしかないことに今更ながら思いを致す。





オ-レン小屋から夏沢峠へ、ヒュッテ夏沢で朝飯代わりにパンをかじってから箕冠山(みかぶりやま)へ向かう。







箕冠山を過ぎると、これから向かう根石岳と東天狗の稜線が手に取るように展望できる。
ここから根石山荘に下り、根石岳を登って大きく下り、東天狗に登り返す、すでに頂上には何人もの登山者が立っている。





根石岳への途中でいま来た道を振り返ると稜線上に今日お世話になる根石山荘が、左奥には横岳とガスに霞む円錐形の赤岳が見える。





根石岳の頂上から西天狗、雲海に浮かぶのは北アルプスであろうか?





根石岳から下る道で恐竜の背を彷彿とさせる東天狗の稜線を望む。





この角度から望む東天狗と西天狗の双耳峰が一番カッコイイと思う、さあこれから東天狗のピ-クを踏みに行こう!





東天狗の稜線からいま来た道を振り返る。
右手前が根石岳、その奥が硫黄岳の爆裂火口、その右が横岳、更に右奥半分見えるのが赤岳。





爆裂火口のアップ!





さあこれから恐竜の背のピ-クへと岩稜を詰めよう、左肩に激痛が走り、腕に力が入らなくて怖いけれど頑張れ!





いったん下って最後の岩稜を登り返すと東天狗のピ-クだ!





東天狗のピ-ク2640mあまりか?
ピ-クに立つとすべての雑念が消えてスカッとする、やっぱり山は快晴に限るなあ!
雲海に浮かぶ山々が南アルプスだろうが中央アルプスだろうがそんなことはどうでもいいこと
ただただ四周に広がるの大展望を眺めているだけでいい。











東天狗を下って根石山荘に向かおうとしていると70代と思しき老夫婦の会話が耳に入ってきた。
どうも明日は荒れるらしい、雪も降るらしい、根石山荘は諦めて下山しようかという話らしい。
常念の天候からして明日の悪天候は覚悟していたけれど、八つにも降雪があるなら僕も潔く里に下りてしまおうか?





根石山荘で風呂を浴びてからビ-ルという夢はついえたけれど、また来ればいいさ!





オ-レン小屋に下る途中で横岳に別れを告げる。
八つも捨てたものじゃないね、横岳も赤岳もまた登ろうかなと思わせてもらった。





オ-レン小屋から夏沢鉱泉に下る道には渓相のいい沢が沿う、岩魚がいるかとつい覗いてしまうけれど鉱泉が入っているからねえ、、、、





この冬はここに泊まって硫黄岳に登ろうかと、、、、





桜平から携帯でJ&Nさんに予約の電話を入れて宿が確保できた。





一日の汗を流して独り占めの湯舟に身を沈めると体中の筋肉が少しずつ弛緩してとろけてゆく。
午後4時半、ちょっと早いけれど生ビ-ル、おつまみはどれがと尋ねると
塩味も適度なイタリア産のプロシュ-トとミラノサラミを用意して下さいました。






2杯目のビ-ルが空くころ、リブロ-スのステ-キプレ-ト、ガ-リツクバタ-醤油のソ-スが美味しゅうございました。





寝室は2畳ほどの個室タイプ、プライバシ-が保たれたとても安らげるスペ-スで午後6時から翌朝7時まで熟睡でございました。





翌朝、なんと空には晴れ間が出ているではありませんか?
明日は荒れる、雪も降るかもっていう予報はいったいどうなったのでしょうか?

午前7時半、なんともやるせない気分で朝食を頂きます。
用意して頂いたのはパニ-ノとサラダとコ-ヒ-のセット、生ハムとチ-ズのパニ-ノが美味しゅうございました。
日ごろ粗雑な山飯川飯派の僕にはおしゃれ過ぎる気もするのですが、たまにはこんな感じもええものですよねえ。





さて、僕が好んで愛読しているのが穂高山荘と岳沢小屋のブログです。
穂高山荘のハチロウ氏の本格的な山屋さんらしい蘊蓄に富んだブログもさることながら
ハチプロダクションの映像の世界に浸ってしまうと抜け出せなくなってしまうのです。

岳沢小屋のブログに『降る降る詐欺』という話がありました。
降るぞ降るぞという天気予報を信じて山を断念すると結局は晴れて悔しい思いをする。

逆に僕は『照る照る詐欺』もあるぞと強く言いたい気分です。
とにかく今年のシ-ズンは降る降る詐欺と照る照る詐欺に引っかかって
持ち金の全部をふんだくられた気分になっているのは果たして僕だけなのでしょうか?

今年もあと3ヶ月、降る降る詐欺にめげずに山を楽しみたいものですね!
コメント (26)
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