山と溪を旅して

丹沢の溪でヤマメと遊び、風と戯れて心を解き放つ。林間の溪で料理を造り、お酒に酔いしれてまったり眠る。それが至福の時間。

瑞籬(みずがき)の森に憩う

2010-05-05 22:44:21 | フライフィッシング
笹子の長いトンネルを抜けると圧倒的な威容を誇る南アルプスの連峰が真正面から迫る。

ほどなく南アルプスは南へと流れ、北からは雪を頂いた八ヶ岳の峰々が現れる。
この双璧のど真ん中を貫くように早朝の風を切って疾走する快感に酔いしれる。

途切れがちになるTOKYO FMからFM FUJIに切り替えるのも決まってこのあたりからである。
若き日、幾度となく縦走しピ-クを踏んだというのにあの山々への憧れは今もなお色褪せることがない。 


 





『車がイカレちゃってさあ、動きがとれないんだ。頼むからどっか連れてってくれない?』
幼なじみのOちゃんから泣きそうな声で電話が入った、GWの日々をじっとしていられるような男ではない。

『忙しくてムリさあ!』
一蹴しようと思ったが僕にもフィ-ルドに出なければならない事情があった。

熊さんも誘って瑞籬の森に天泊することにした。
夏ならばミズナラやダケカンバの葉が茂って清々しい幕営地になるのだけれど
この季節の森はまだ春が浅く下草も樹々の葉も眠りの中に閉じこもっているようである。







溪のそばの落ち葉の上に幕営して焚木を集める。
深い森に腰を据え、焚火を囲み酒を酌み交わして友と語らい、そして眠る。
これがなければ生きる意味がないし、多分僕は生きては行けないだろうと思う。

熊さんは持ってきた斧で短い切り株を夜通し使える薪に仕立て上げた。
子供の頃はこうして薪を作っては小遣い稼ぎをしたものである。


 




釣りに出かける前に早めの昼食を取った。
ミ-トソ-スの大盛パスタと冷えたビ-ル、熊さんが作るものはどれもみな旨い。


              



少し気だるい気分なのだが食糧の調達に出かけよう。
Oちゃんが逆立ちした御神木に神妙に祈りを捧げる姿が妙に笑えた。
そんなことをしたって岩魚が釣れるわけでもなかろうものを、、、、。

とは思いながら僕もつられて掌を合わせてしまった、ドアホっ!


               




ここに来る前に覗いたみずがき公園は車とテントで満杯状態になっていた。
フィッシングプレッシャ-も相当なものだろうと小さな枝沢に入ることにした。

日も高く昇っているというのに入溪点に先行者の足跡はない。
7月初旬の陽気でも水温は7度、この雪代を克服するのはかなり手強い。

『Oちゃん、釣らないと晩飯のネタはなしだぜ』、『わかった、まかせろ』
気持とは裏腹に上がる岩魚の殆どは5寸にも満たないリリ-スサイズばかり。

この褐色の世界も6月になれば野草や山菜の緑で溢れ、樹々には葉が茂って緑一色に染まる。
四季の移ろいに目を見張り感動できるのも山に身を置いているからこそのことかも知れない。








僕が着ているのは『Fox fire』のトランスウェット
実は今回このウェアのモニタ-になっているのでフィ-ルドで着用してレポ-トを出す必要があると言うわけです。
寒暖に応じてア-ムカバ-を付ければ長袖になり、汗をかいてもべたつかず、気化熱を調整して急激な体温低下を防ぐという優れもの。

この他にスコ-ロン素材のシャツを昨年9月から使っているのですが、これがまた防虫効果抜群の優れもの。
是非みなさんも使ってみてくださいね、って僕は決してフォックスファイヤ-の営業マンではございません。

ちなみにここで釣れた岩魚はヤマトでした。


 





Oちゃんと二人でツ抜けはしたもののキ-プサイズは2尾、今回は一晩かけて焼きがらしに致しましょう。
そうそう、テンカラが初日の熊さんは当然○ボということで目出度い初体験となりました、パチパチパチ!


さあビ-ルだ、ワインだ、焼酎だあ!
今回は熊さん自作のカマドが大活躍してくれました。 


 
 


5時から始めた宴会は10時過ぎまで続きましてね。
旨いものを喰らう幸せ、これに優るものはありませんね。

金沢八景で熊さんが採ってきたアサリ100個あまり
これを焼くと20秒でパカッと殻が開き次から次へと口に放り込んで焼酎をグビッ。
いやあ自然の塩味が絶品でございました。

もちろんレア-のステ-キも焼いては喰らい焼いては喰らいで血糖値は上がりっぱなし。
興が乗ってついつい昔身につけた艶話などをしてしまったようで、、、、。



 

                




爽やかな目覚めです。
高原の朝はこうでなくっちゃいけません。
お酒と酒肴の味は覚えているのに語り合ったことは全て記憶がとんでいる、いやあ爽やかさわやか。


                 



爽やかな朝なのにテン場には死体が一体ころがっております。
気持わり~い、頭いて~えと喚きながらテントから這い出た熊さんが突然倒れて動かなくなりました。

釣り師と言うヤツは薄情なものでございます。
Oちゃんは何食わぬ顔で朝飯喰ってます。
僕は良いネタができたと喜んでカメラを向けてます。

今日から君も晴れてベトナム人民であるぞ。
そなたに放置民(ホ-チミン)の名誉市民の称号を授けて進ぜよう!


 
 


どうですこの飴色の焼きがらし、フランスパンに合うのです。
朝飯はこの岩魚とフランスパンとレギュラ-コ-ヒ-、ついでにラ-メンも食べて。

さあ、ロッドを携えて沢伝いにシドケ畑に突入です。






しか~し!
民宿『五郎舎』の親爺さんの言うとおりでありました。
山の春は里よりちょうど1ヶ月遅れて来るから山菜も5月中旬から。

シドケもタラの芽もあと10日ほど待ちましょうかね。
シドケはですねえ、独特の苦みが絶品の山菜で東京のお店では昨年5本で600円の高値が付いていたのです。
ということはここの畑だけで50万円?100万円?な~んて下世話な妄想はしてはいけません。

あくまでも食べる分だけを山から頂く、この謙虚な気持ちが大切なんですね。
ひそやかに咲くニリンソウが可憐です。







人は変わっていくものなのですね。
かつてはピ-クハントしなければ充たされなかった僕も今ではノンピ-ク登山がおもしろい。

山を徘徊し、溪で岩魚と戯れ、森の中に眠る。
気力と体力が落ちてきた今これが一番性に合っているような気がします。
こうして何時までも探索と徘徊を続けて行けたらどんなに幸せでしょうか。






森に抱かれて過ごした二日間は憩いの時でもありました。


さあ、里に下りるための心の切り替え、やはりビ-ルとお蕎麦ですな。






皆さんもさぞ良い休日を過ごされたことでしょうね!




コメント (22)
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