山と溪を旅して

丹沢の溪でヤマメと遊び、風と戯れて心を解き放つ。林間の溪で料理を造り、お酒に酔いしれてまったり眠る。それが至福の時間。

転落人生

2009-03-28 23:48:24 | 書籍
狂瀾怒濤の一週間であった。

1週間でいいからホ-ムレスをやってみたい
ひと月、深い雪に隔絶された山奥の洞窟で過ごしてみたい

仕事と時間に追いまくられているとき、ついついこんな妄想を抱いてしまう
弱気の虫が騒いで無意識のうちに現実逃避へと向っているからであろうか



新宿の地下通路に屯すホ-ムレスの人たちを初めて見たのは30年も前のことである

『ああはなりたくないよな』『あいつら怠け者なんだよ』
誰もが蔑んだ目で見て、そう口にしていた時、僕は少々違う感じで見ていた

ダンボ-ルの上に車座になって昼間から酒を酌み交わす光景に
『あんな生活もたまにはいいかな』、そう思ったものである

しかし、それはやはり目の回るような忙しさからの現実逃避の気持の表れであり
『たまには』という気持にこそ『ずっと』を強烈に否定する軽蔑が潜在していたのかも知れない



書店で目が釘付けになった
『今日ホ-ムレスになった』(増田明利著、彩図社刊)





ここに登場する15人はみな大卒の学歴を持ち、一流企業の管理職経験者が殆どである
現役時代はやはりホ-ムレスを見て『ああはなりたくない』と蔑んでいた人たちである

リストラで会社を追われ、これはと言う技術も能力もないために再就職もままならず
経済的に破綻を来して家も手放し家庭も崩壊し、そんなお決まりの転落人生に陥った人たちである

路上で横たわる姿を見られることも、ゴミ箱から残飯を漁ることも、不潔な身なりでいることも、
いつしかそれを恥ずかしいと感じなくなってしまうとこと。
この諦めはとても恐ろしいことである

この15人の人たちの転落人生物語を読んで感じたことは
いま仕事も家庭も人生も至って順調であるかに見える誰もがホ-ムレスになり得ると言うこと

40代中盤を過ぎて会社を追われ、誇れる技術を何も身につけていない人たちは
誰もがこの人たちのような悲惨な転落人生が待っていると言う現実を知っておくべきかも知れない



釣友に誘われて酒場の暖簾をくぐった
ちっちゃなテ-ブルが3つ、ほんの3坪ほどの隠れ家のような飲み屋であった
酒屋のご主人が営むこの店は各地の旨い酒が驚くほどに安い



笑顔の優しい親爺さんを慕って個性的を絵に描いたような常連客たちが屯す
釣友と釣りを語り、そしていつしか隣の客とも入り乱れて人生を語る




嬉しいことに馬刺しも味わえた
この穴蔵のような隠れ家は、僕の憧れていた洞窟を彷彿とさせる

深い雪に閉ざされた山奥の洞窟生活のためには
酒と食料と薪をたっぷり用意するのに大変な労苦を要する

この店なら気軽に快適で楽しい穴蔵暮らしができるではないか?
僕にとっては願ってもない穴蔵を教えてもらって嬉しくてたまらない心境である

この穴蔵生活にどっぷりと嵌ってしまいそうでちょっと怖いような気もするのだ(喜)
コメント (10)
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