この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

『ハンナ』、何だかなぁって感じのヒットガール映画。

2011-09-04 22:09:22 | 新作映画
 シアーシャ・ローナン主演、ジョー・ライト監督、『ハンナ』、9/4、ソラリアシネマにて鑑賞。2011年27本目。


 『つぐない』のジョー・ライト監督ということで過度に期待しすぎてしまったのでしょうか、『ハンナ』、どうにもこうにも何だかなぁっていう感じのヒットガール(殺人少女)映画でした。
 はっきりいってシナリオがお粗末で、意味不明でしたね。

 ハンナは父親から暗殺のためのあらゆる手練手管を生まれたときから叩き込まれたスーパーエリートヒットガールという設定です。
 父親は彼女にCIAのエージェントであるマリッサという女性を殺せ、と命じます。
 マリッサと対面し、彼女を瞬殺するハンナ!!強い、強いよ、ハンナ!!
 なんだけど、マリッサはCIAが用意した偽物なんですよ。本物のマリッサはモニター越しにハンナをじっと観察してるんです。
 あのさ、、、マリッサを殺すためにひたすら父親はハンナに暗殺技術を教えてきたんだよね?
 で、何で肝心の標的の顔は教えておかなかったの??
 何でハンナは似ても似つかぬ偽物を殺しちゃうわけ???
 仮にマリッサの写真が手に入らなかったとしても他にいろいろ方法あるでしょ?似顔絵を描くとか何とか。
 もうハンナが偽物を殺した時点で何だかな~って思っちゃいました。

 何だかな~っていう展開はこの後も続いて、マリッサはCIAのエージェントではあるんですが、閑職に回されてるらしく、ハンナへの刺客を四人ぐらいしか用意できないんです。しかも一人は変態のオカマ。いや、別に変態のオカマでも腕が立つなら構わないんですけど、どーにも凄腕って感じじゃないんですよ。
 何だかな~って思いました。

 何だかな~はまだまだ続いて、終盤になるとハンナの出生の秘密が明かされます。
 彼女は何とDNA操作によって生み出されたスーパー兵士だったのです!!
 その秘密を聞いて自分は「はぁ?」とずっこけそうになりました。
 いやだって、彼女は確かに強いことは強いんだけど、その強さもせいぜい大の大人に対して引けを取らない、ぐらいなんですよ。
 そんなスーパー兵士だっていうなら、それこそ『スプリガン』の御神苗優ぐらいの戦闘力は期待したいじゃないですか。
 それがCIAのエージェントより若干強い、ぐらいじゃ、何だかな~と思わずにはいられません。

 しかし、一番の何だかな~は物語のクライマックスにやってきます。
 はっきりいってこの『ハンナ』は『ジェイソン・ボーン』シリーズに酷似しています。
 暗殺者として訓練された主人公がCIAを敵に回して戦うという基本ストーリーが、ですけどね。
 もちろん差異はいくつもあるのですが、その最大のものは、『ジェイソン・ボーン』シリーズでは殺人兵器として訓練を受けたボーンが最後には自らのアイデンティティーと人間性を取り戻すのに対し、『ハンナ』ではハンナは自らが殺人兵器であるという事実を受け入れちゃうんですよね。クライマックスにおいてそうとしか受け取れない行動を取るのです。
 ほんと何だかな~と思っちゃいましたよ。

 まぁ、これがシリーズ第一作だから、ハンナはああいう行動を取ったのかもしれませんが(シリーズ化されるかどうかは全く知りません)、二時間映画に付き合ってきて、ハンナは殺人兵器として生きていくことにしました、おしまい♪では、おぃおぃ、そりゃねーよ!と言いたくなります。
 美少女が暗殺者!!という基本設定は嫌いじゃないんですが、嫌いじゃないだけに期待しすぎて本作はガッカリしました。


 お気に入り度は★☆、お薦め度は★☆(★は五つで満点、☆は★の半分)です。
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『モールス』、美少女ヴァンパイア、中身は…?

2011-09-03 23:01:56 | 新作映画
 マット・リーヴス監督、クロエ・グレース・モレッツ主演、『モールス』、8/14、天神東宝にて鑑賞。2011年26本目。


 自分は映画に関してはオリジナル尊重主義です。
 昨今のハリウッドにおけるリメイク依存には感心しません。
 リメイクが許される場合もあるとは思ってます。
 条件を上げると、
1.オリジナルの根幹をなすアイディアは素晴らしいが、全体的な出来は残念なものである。
2.オリジナルが製作された年代が古く、今では多くの人がその存在を知らない。

 2.の条件に当てはまる近作は、洋画では『トゥルー・グリット』、邦画では『十三人の刺客』などがあります。
 『トゥルー・グリット』のオリジナルは1969年、『十三人の刺客』の方は1963年ですから、これらの作品をリメイクするのは誰に気兼ねをすることでもないでしょう。

 一方1.の条件に当てはまる作品はそれほど多くありません。
 なぜなら、そもそも不出来な作品をリメイクしようとは誰も思わないからです。
 強いて言えば、『ザメッティ』がそうかな(といってもリメイクの方は未見)。
 あれを見てもなぜリメイク作品を作ろうという気になったのかはわからなかったですね。

 さて、マット・リーヴス監督『モールス』ですが、この作品は2008年のスウェーデン映画である『ぼくのエリ 200歳の少女』のリメイクです。
 単独で観れば決して出来は悪くないし、リメイクとしてそれなりに工夫の跡も窺えるけれど、でもやっぱりリメイクする意義は見いだせなかったかなぁ。
 誰かに、『モールス』を劇場で観る価値はあるか?と聞かれたら、いや、『ぼくのエリ』をDVDで見ればいいんじゃないの?って答えるでしょうね。

 で、改めて『モールス』を観て思ったのは、これは(オリジナルであれ、リメイクであれ)ひどい話だなぁということです。
 主人公のオーウェンは隣室から中年男性の怒鳴り声を耳にし、翌日、アビーに父親から虐待されていないか?と尋ねます。このとき彼女はそんなことはされていないと答えます。
 しかし真相は、吸血鬼のアビーが渇きに耐えきらず、従者である男性に当たり散らしていただけなのです。
 つまりアビーは、見かけは美少女であり、その気になれば幼気な女の子のふりをすることも出来るけれど、中身は立派なオッサンだってことです。
 この『モールス』は(そしてオリジナルの『ぼくのエリ』も)オッサンであるアビーが新たな従者を見つけるために、初心な少年を誑し込んだお話である、と見ることが出来ます。
 ひどい、、、お話ですよね。

 そしてもう一つ、ヴァンパイアものとして見た場合、非常に詰めが甘い。
 アビーがオーウェンの住む町に引っ越して、三週間かそこらで四人の人間が無残な最期を遂げています。
 これは、吸血鬼であるアビーの食糧となるために殺されたのですが、三週間で四人では、あまりに人死にが多すぎます。
 これではとてもヴァンパイアが人間社会に溶け込んで生きていけるとは思えません。
 そこらへんは原作の小説では上手く処理しているのかもしれませんが、映画では、無理があるなと思いました。

 結局のところ、この作品に限らず、ヴァンパイアものというのは、細かな設定を気にせず、耽美な世界観と雰囲気だけを楽しむものなのかもしれませんね。


 お気に入り度は★★☆、お薦め度は★☆(★は五つで満点、☆は★の半分)です。
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心に棚を作れ!!

2011-09-02 23:11:14 | 日常
 心に棚を作れ!!

 というのは『炎の転校生』(島本和彦作)に出てくる伊吹三郎の名言ですが(例えば普段、空き缶をポイ捨てしてる男が、目の前で空き缶をポイ捨てしてる奴を見つけたら、そいつの頭を後ろからどついて、、、訂正、そいつのことを注意してもいいということ)、自分はときどき衝動的に棚を作りたくなるのです。

 で、作りました、棚。


   


 自分の部屋の入口のところに作ったのですが、これが思っていたよりも大変でした。
 棚を作ろうと思った壁と壁との間が、おおよそ百八十センチだったんで、ホームセンターに棚板を見に行ったら、ちょうど百八十センチの化粧板がありました。
 これぞ天の配剤!!と喜び勇んで家に買って帰って、はめ込もうとしたら、わずかに三ミリぐらい化粧板が大きくてはまりませんでした。
 壁と壁との間をメジャーで測ったんですが、ぴったりとは測れてなかったんですね。
 この三ミリを削るのが難儀で…。
 でも苦労した甲斐があって、満足できる棚が出来ました。

 さて、棚に何を載せるかを考えよーっと♪(順番逆だろ…)
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お見舞い。

2011-09-01 22:17:53 | ショートショート
 九月になりましたが、まだまだ暑い日が続きますね!
 もうこれ以上暑いのは勘弁!!と仰るあなたに、少しだけ涼しくなれるショートショートを贈ります。
 タイトルはそのものズバリ『お見舞い』です。
 では白文字を反転させてお読みください。

ps.怖いのが苦手という方は読まないでください。トラウマになるまで怖いということはないと思うけど。マリーコさん、りぼんさんは読んじゃダメです。逆にEさんや小夏さんには読んでほしいなぁ、、、って特定の名前を出すのもなんですが。笑。



『お見舞い』

 ずいぶんと久しぶりに彼が病室にやってきてくれた。
「顔色、だいぶ良くなったみたいだ」
 本当に久しぶりだというのに、悪びれる様子も特になく、彼はいつもの人なつっこい笑みを私に向けた。
 ああ、ダメだ、私ったら、次に彼がやってきたら、言いたいことがたくさんあったっていうのに、シナリオだっていくつも頭の中で作っていたっていうのに、この笑顔のせいで何も言えなくなってしまう。
「この頃、学校が忙しくってさ、悪いとは思ってんだ、もっと頻繁に来なけりゃいけないって。ほら、サッカーの方も、ようやくレギュラーになれたばかりだろ、だからつい…」
 彼ってば、私のことなど構わずに自分の近況ばかりを一方的に話す。それも毎度のことだけど、正直言うと少しは私の話も聞いて欲しい。
 私がいつもこの病室に一人ぼっちでどれくらい心細いか、彼は想像もつかないに違いない。
 でも、いいんだ。私はただ彼の話を、そして彼の声を聞いているだけで、それだけで何だかほわっとさ、幸せな気分になれるんだから。
「…あの時の教授の間抜けな顔、君にも見せたかったなあ、最高に傑作だったんだぜ…」
 彼は話上手だ。私なんかが、話の腰を折ってしまうのが勿体なく思えるくらいに。
「ああ、ゴメン。また俺が一方的に話しちゃって。退屈、だった?」
 そんなことないよ、そう言おうとしたけれど、私は結局何も言えずに、黙って下を向いたままだった。
 不意に彼が手を伸ばしてきて、私の髪に、入院生活が長引いてぱさぱさになってしまった私の髪に、そっと触れた。
「君のこと、忘れる日なんてないから。気がつくと、いつも君のことばかり考えてる」
 そのまま彼は私の頬をやさしく撫でた。私は彼の手がとても好きだった。私と違って彼の手はとても暖かい。
「あ、もうこんな時間だ、やばい、バイトに遅れる!」
 そう言って彼は勢いよく立ち上がった。私は内心の失望を表に出すまいと努める。
 病室のドアのところで、彼が振り返って不器用にウインクしてみせた。
「また、来るから」
 ウインクを返そうとしたのだけれど、今の私にはなぜか以前のようには上手くそれが出来ない。
 バタン、と彼は乱暴にドアを閉めたが、立て付けが悪いせいか、ドアは完全には閉まり切らなかった。
 ギギィーという気味の悪い音を立てて、半開きの状態になった。
 彼が帰ってしまったばかりの、この瞬間が嫌いだった。もう来てくれないんじゃないかと思うと、気が狂いそうになる。
 この病室に連れてこられたときは、私は家に帰りたくて帰りたくて仕方なかった。だが今となってはそれももうどうでもいいことだった。彼が時々こうしてやってきてくれるだけで、私にはそれだけで十分満足だった。
 そう、それだけで…。
 突然、ドアの隙間から、ひゅうと風が吹きこんで私の体を強く揺らした。
 からからと、何かが乾いた音を立てた。
 私は、医者もいない、看護婦もいない、この朽ち果てた廃病院の、奥まった病室のベッドの上で、彼がお見舞いに来てくれるのを待ち続けている。
 ずっと、ずっと。


                             end
コメント (8)
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