機先を制する

軽速歩に巻き乗りをくわえて、いよいよ駈歩になった。
「駈歩～」と声を掛け、足扶助をおこなうがいつものように簡
単には駈歩にならない。ムチを正手に持ち替えると、駈歩の準
備をする。馬の目は両サイドについていて、後にいる私のちょ
っとした動きでもキャッチすることができる。
・
もう一度「駈歩～」と声を掛けると、渋々駈歩をおこなった。
最初はゆっくりとしたスピードだが「まっ、仕方がないか」と
リリーのペースにあわせる。だが徐々に私のペースに持ってい
き、次「駈歩～」と声を掛けるときは容赦しない。
・
騎乗が終わり、汗びっしょりになった体に水をかけてやると気
持ちよさそうな顔になる。ぬれた体を拭いてやり、一通りのメ
ンテナンスを終わり馬房に帰るときがきた。来るときはいい子
だったが帰るときはどうなるだろうか。
・
リリーが馬場の外を通る時、牝馬そらが馬場の中の近くを歩い
ていた。更に両馬が近くになると、リリーは興奮していつもの
リリーに戻り鼻を「ブル、ブル」と鳴らした。しかし、私は今
日の日の為に新たな秘策を準備していた。
・
「ブル、ブル」と鼻を鳴らした後、そらに向かっていくがその
直前にリードロープを下に叩いた。すると、機先を制せられた
リリーは向かうことができない。さらに鼻を鳴らしたので再び
リードロープを叩くと身動きが取れない。これを繰り返すこと
で、リリーを制することができた。だがこのまま、黙っておと
なしくなるリリーではないのでその時は又考えよう。






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