「じいちゃん」

２鞍の騎乗が終了して、すだちが馬場から帰ってきた。
そして馬装をはずし体をお湯で洗う時がやってきた。お湯を体
にかけながら素手で丁寧に洗ってやる。その後、体についた水
を水切り金具で飛ばすが、この時丁寧にする必要がある。
・
背中、お腹周り、そして胸にさしかかると、すだちは後ろ足で
蹴るまねを始めたのだ。やさしくしないと蹴るよという威嚇で
、前回私を蹴ったことを決して忘れてはいなかったのだ。
何に対しても無関心なすだちなのに、精一杯の自己表現を私に
見せてくれたのでちょっとうれしくなった。
・
すだちを馬房に戻すと、馬場の近くでインストラクターの子Ｓ

ちゃんと、会員のＹちゃんの小学生の女子２人が遊んでいた。
Ｙちゃんは、昼から乗馬をするためにやってきたらしい。
レッスン中のインストラクターに聞いてみた。
・
「Ｙちゃんは、弁当を持ってきたんですか」
「いいや、うどんどんべいよ」
「それだけで大丈夫じゃろうか。でも常日頃いいものを食って
いるから栄養失調にはならんよね」。「どうかね」。
・
最終の会員さんの乗馬を見学した後、家に帰ることにした。
「Ｙちゃん、おっちゃんは帰るよ」
「じいちゃんは、帰るらしいよ」
「じいちゃんじゃない、おっちゃんじゃろ」とインストラク
ターに言おうと思ったが、歳を考えればしかたがないか。
「Ｓちゃん、Ｙちゃん、じいちゃんは帰るよ～！」。






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