行政書士の写真屋さん

この光景を見て、職員さんの態度、言葉一つの間違いがあれば、おばあ
さんはそこをついてきて、大変な事態に持っていく行政恐喝のプロなの
かもしれません。このおばあさんは、今までにどれだけの人を悩み苦
しめてきたのかと思うと憂鬱になりました。
そうこうしていると、ブッチャーかあさんの住民基本台帳カードの話が
つき、あとはカードに張り付ける写真を持ってくれば終了の運びになり
ました。近くの写真屋を教えてもらい、いったん市役所を出ました。
写真屋さんはどこかなと探していると、２０ｍ先の小さな交差点近くで
一人の中年の男がゴルフクラブでスイングの練習をしていました。私達
が写真屋を探している姿を見て、すうっーといなくなりました。
「あっ、あった」と指さす先には、交差点に小さな行政書士の事務所が
あり、見落としてしまいそうな小さな証明写真の看板がありました。
事務所の戸をガラガラと開けましたが誰もいなません。「こんにちわ
ー」と言うと、奥から「いらっしゃいませー」と出てきた男は、先ほど
ゴルフスイングをしていた男でした。事務所とは隣り合わせの自宅に、
すうっーと消えて、私達が来るのを待っていました。長いこと商売をし
ていると、私達の様子を見ただけで、瞬時に写真を取りに来たお客さん
だなとキャッチすることができるようですね。小さな古ぼけた事務所の
片隅に、白い紙を張った壁がありそこに一脚の椅子がありました。でも
写真機だけは、なぜだか最新式のものでした。ゴルフの練習からある時
は行政書士に、ある時は写真屋さんに、この変わり身の早さに大不況を
乗り切っていくヒントが隠されているのかもしれません。

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