鉄クズ屋のおやじさん

建築リフォーム業をしていると、現場から色々な廃材がでます。
鉄クズ類が出れば、Ｍ店に持っていって処分をします。ここにはよく働
くご主人がいて、敷地内には自分たち夫婦が住む家と、娘夫婦が住む家
を持っています。大きくて立派な家ですが、ご主人がよく働く証明みた
いなものなんですね。顔は真っ黒に日焼けして、メガネをかけています
がメガネの奥から、たまに眼光鋭い商売人の目を放つときがあります。
作業場では、スクラップ商品を電気ドリルで解体したり、鉄クズを区分
けしたりして、いつも汗まみれになりながら働いています。
私が鉄クズを持っていって、トラックから鉄クズを下ろしていると、
いつもにこやかな顔をして手伝ってくれます。特に重いものを下ろす時
は助かります。いつも簡単な会話を交わしますが、内容はだいたい決ま
っていて季節柄のこととか、商売情勢のことです。
「熱いねこんなに熱いと、ばててしまうね」、「商売儲からないね」
こんな感じですが、商売の話をするときはメガネの奥からキラリと眼光
が輝きます。昨日は久しぶりに、現場から出た鉄クズをＭ店に持ってい
きました。トラックから鉄クズを下ろしていると、娘婿さんが来て下ろ
すのを手伝ってくれました。
私「そういえば、おやじさんの顔を最近見ないね。元気にしてる」
娘婿「おやじは引退しました。もう８６才になるので世代交代です」
それを聞いて驚きました。どうみても６０才代に見え、歳より２０才は
若く見えます。考えてみればＭ店に来始めて２４年たちますが、そのこ
ろからまったく老けていないんですね。あのおやじさんが、もういない
のかと思うと、ふともっと話をしていればよかったなと思いました。

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