ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 日野行介著 「福島原発事故 被災者支援政策の欺瞞」(岩波新書2014年)

2016年01月01日 | 書評
政府・官僚によって奪骨された被災者生活支援法と被災者支援政策のありかたを問う 第3回

1) 子ども・被災者生活支援法(その2)

支援法はそもそも残留組や帰還組は所属市町村や県が面倒を見るのは当然として、孤立無援の他府県への自主避難者の生活支援を目的とすることは明白であった。2012年12月自公連立政権が誕生し安倍第2次内閣が成立した。この政権交代がどう影響したのか支援法について方針が出ないまま2013年を迎えた。2013年3月7日原子力災害対策本部の会議で根本匠復興相が「支援法の線量基準を検討する方針」を示した。それには原子力規制委員会が科学的・技術的に協力するようにお願いしたのである。指名を受けたを受けた田中俊一規制委員長は受諾した。突如として微妙な線量基準値問題に規制庁が関与してきた。そして3月15日には「原子力災害による被災者支援施策パッケージ」を記者会見で発表した。100近い施策が列記されていたが、これが基本方針とどう関係するのか言及はなかった。しかもその施策は各省庁がすでに実施済みのものがほとんどを占めていた。自主避難者をすべて福島県へ戻したうえでの支援策であった。頭の規制委員会の放射線審議会が2012年12月から全員が任期が切れたまま空席状態となっていた。これも放射線審議会委員を任命して放射線審議会が任に当たるのかも不明であった。2013年6月23日田村市で除染についての住民説明会があった。田村氏は避難区域解除のトップバッターと見込まれていたが、秀田環境省参事官は「無尽蔵に予算があるわけでないので除染はとても納得できまるでやりきれない。希望者には線量計で一人ひとり判断してほしい」という驚くべき内容が含まれていた。朝日新聞は6月29日の記事で「政府、被ばく量の自己管理を提案」と、暗に政府は除染と危険線量管理を放棄する姿勢だという。線量基準には、復興庁、内閣府支援チーム(経産省出向者)、環境省、規制委員会の4つの省庁が絡んでいる。原発事故から2年経って政府は避難指示の解除や避難者の帰還促進の方向で動き始めたようである。しかし復興庁は線量基準については規制委員会で専門的技術的検討をお願いしたいとボールを投げ、規制委員会は低線量の線量基準は科学的には決められないと渋っている。とはいえ線量基準値問題の検討期限は1年である。2013年4月関係省庁の線量基準を決める会議が水面下でスタートしたらしい。顔ぶれは復興庁、内閣府被災者性生活支援チーム、原子力規制委員会、環境省である。線量基準を考えるにあたって、山下長崎大学医学部教授の100ミリシーベルトは除外して、次の3つの基準が存在する。一つは避難基準の年間20ミリシーベルト、環境省が除染目安の5ミリシーベルト(これは放射線従事者の職業被ばく許容量でもある)、最後に一般人の被ばく許容量の1ミリシーベルトである。ということで支援策検討は2013年7月21日の参議院選挙の後に先送りされた。

(つづく)