ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 郭 四志著 「中国のエネルギー事情」 岩波新書

2012年02月16日 | 書評
13億の人口と世界一のエネルギー消費国が地球を食い尽くすまで 第5回

2) 石油・天然ガス 石油メジャーと海外資源開発 (2)

 石油確保策のひとつとして、海外開発・権益確保といった海外資源確保の方向で、中国は豊富な外貨準備高(2兆4000億ドル)を利用して活発に海外投資に努めてきた。2010年の買収額は431億ドルとなり、2009年の輸入石油1億8000万トンのうち権益石油は6000億トンとなった。3大メジャーの開発案件は30カ国、178件となった。2008年の世界経済危機による原油先物価格の低下のなかで、中国石油メジャーは世界中の権益を買い集めた。中国の石油三社は海外での探鉱開発や権益買収を通じて上流資産を強化拡大することが海外戦略の中心である。欧米の石油メジャーの隙間をぬって、リスクの高い地域の権益を集めている。米国石油会社ユノカルの買収失敗を経験として、政府が前面に出る事を控え、関係諸国との理解を得て、外国企業と強調して買収を進める方針に転換した。中国は伝統的にアジア・アフリカ・中東・南米の新興国と友好関係にあったので、中国政府首脳が外交的に訪問し援助や借款、融資と絡み合わせて買収の商談を進めた。3大石油会社の幹部は政府要人と人脈が深いので、石油戦略に政府首脳を動かすことが容易である。海外権益の買収問題の課題は、日欧米との競争に勝つために投資コストが高いこと、②プロジェクトの成功は保証されたものではない。リスクも高い、③投資先の政情不安、治安、④現地独裁政権を援助しているとの欧米の批判への対応、⑤3大メジャー会社の株主には外国資本が多くなってきたので、中国の資源確保戦略の担い手以外の株主対応という問題がある。
(つづく)

読書ノート 柄谷行人著 「世界共和国へ」 岩波新書

2012年02月16日 | 書評
資本・国民・国家を超えて、カントの永遠平和の実現は可能か 第8回

序(8)

 資本主義の20世紀は帝国主義が顕著になる。レーニンなど社会主義者は帝国主義は「資本主義の最高段階」とよび、産業資本に替わって金融資本が支配を確立した段階と捉える。グローバル資本が世界を支配しても国家はなくなっていない。どうしてかというと国家の自律性を見逃しているからだ。国家と資本が結合したのは、絶対主義国家(主権国家)においてであり、帝国主義はそこに始まっている。主権国家は膨張して他の主権国家を侵すことが宿命であり、多民族統治の原理(オスマントルコのような統治して侵さず)が働かない。ハンナ・アーレンは国民国家の延長としての帝国主義は、古代の世界帝国(中国・ローマ・マホメットイスラム帝国など)にような法による統治形態をもたず、国民国家は絶対主義国家の時代から、国民の均質性と住民の同意を厳しく求めるものであるという。アメリカの「人権」という干渉(非寛容性)は国民国家の典型である。古代世界帝国は税さえ納めれば国家・民族の慣習には無関心であった。またアーレンは「国民国家は征服者として現れれば必ず被征服者の民族意識と自治を目覚めさせる」という帝国主義のジレンマを指摘している。イギリスなどの帝国主義がオスマントルコ帝国を解体し、アラブ民族を「解放」したと称したが、それが今日の中東の民族国家分裂とイスラエル問題を引き起こした。アラビアのローレンスが中東問題の元凶である。ナポレンオンは欧州に「フランス革命」を輸出したが、それがプロシアの興隆をもたらしたのである。こうして帝国主義は世界各地に国民国家を作り出した。
(つづく)

文芸散歩 蜂屋邦夫訳注 「老 子」 岩波文庫

2012年02月16日 | 書評
中国戦国時代の「無為自然」を説く思想書  第11回

第16章 「致虚極 守静篤 万物竝作 吾以観復・・・」
心を空虚にし静かな気持ちを持って眺めると、万物が道に復帰する様が見られる。万物が活動させている根元の道に帰ることを「命」、命に帰ることを「恒常なあり方」といい、恒常なあり方を知る事を「明知」という。恒常なあり方を知れば一切を包容し、公平となる。君主が明知であれば天と道に一体化できて永遠である。

第17章 「太上下知有之 其次親而誉之 其次畏之・・・」
最高の支配者は人民をして其の存在を知るのみである。誉められたり畏れられたり馬鹿にされる支配者は下の支配者である。支配者に誠実さがなければ人民は信用しない。(権力は空虚であれ 批判の対象となるな)(君主論)

第18章 「大道廃 有仁義 知恵出 有大偽・・・」
道が廃れて仁義が説かれ、知恵が働いて虚偽が生まれた。家族が不和になって孝行が説かれ、国家が乱れて忠臣が現れた。(逆理)
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「春 望」

2012年02月16日 | 漢詩・自由詩
孤月皚皚生夜寒     孤月皚皚 夜寒を生じ

回首多恨入脾肝     首を回ば多恨 脾肝に入る

雁書不到人何遠     雁書到らず 人何ぞ遠き
 
非適春望冬又残     春望適ず 冬又残す


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(韻:十四寒 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)