空洞化するアメリカ民主主義の転倒状況 第2回
「権威主義や形式主義とは無縁の自由な精神に導かれたアメリカを敬愛してやまない」という著者は本書で着目したのが、苦悩するアメリカ社会の「逆説」である。逆説とは想いとは裏腹な関係にある現実の事であり、明確に意識すればダブルスタンダードのことであり、目的と手段がいつの間にか転倒していることである。そして本書の下敷きになっている本がある。それは古典的名著といわれるフランス19世紀前半の政治哲学者アレクシス・ド・トクヴィルの「アメリカのデモクラシー」である。トクヴィルはアメリカ人の重大な特徴は、欠点を自ら矯正する能力を持っていることだと述べる一方、トクヴィルは社会的紐帯や共同体の分断を懸念し、「多数派の専制」を予感している。そういう意味で本書はトクヴィルの「アメリカのデモクラシー」の21世紀版かもしれないし、本書のいたるところでトクヴィルの主張が引用されている。なおトクヴィルの民主主義への懸念については富永茂樹著 「トクヴィルー現代へのまなざし」(岩波新書)に詳しい。
本書は最初2008年のオバマ大統領の理念から始まる。2008年の大統領選の経過とオバマの演説の意義そして半年間の大統領施策の評価については砂田一郎著 「オバマは何を変えるか」(岩波新書)に詳しい。本書はオバマの具体的政策よりは、オバマの理念・理想を問題としている。そこでオバマが何をなしたかではなく、オバマ大統領が登場してきたことの意義をアメリカの民主主義の流れの中で議論することであろう。オバマはアメリカに「不同意」が存在する事を認識し(不同意への同意)、ひとつのアメリカへ向けた決意を語った。オバマは、現代アメリカを蝕み続けた「分断の政治」を超克し、理念の共和国というアメリカの理想と伝統を志向するものであり、これまで多くの大統領が言って来た「アメリカの原点」への回帰である。2008年11月4日、大統領選に勝利してオバマは早速共和党への気配りを見せた。「共和党とは、自助自立に個人の自由、そして国の統一という価値観を掲げた政党です」と国民の和合を訴えた。
(つづく)
「権威主義や形式主義とは無縁の自由な精神に導かれたアメリカを敬愛してやまない」という著者は本書で着目したのが、苦悩するアメリカ社会の「逆説」である。逆説とは想いとは裏腹な関係にある現実の事であり、明確に意識すればダブルスタンダードのことであり、目的と手段がいつの間にか転倒していることである。そして本書の下敷きになっている本がある。それは古典的名著といわれるフランス19世紀前半の政治哲学者アレクシス・ド・トクヴィルの「アメリカのデモクラシー」である。トクヴィルはアメリカ人の重大な特徴は、欠点を自ら矯正する能力を持っていることだと述べる一方、トクヴィルは社会的紐帯や共同体の分断を懸念し、「多数派の専制」を予感している。そういう意味で本書はトクヴィルの「アメリカのデモクラシー」の21世紀版かもしれないし、本書のいたるところでトクヴィルの主張が引用されている。なおトクヴィルの民主主義への懸念については富永茂樹著 「トクヴィルー現代へのまなざし」(岩波新書)に詳しい。
本書は最初2008年のオバマ大統領の理念から始まる。2008年の大統領選の経過とオバマの演説の意義そして半年間の大統領施策の評価については砂田一郎著 「オバマは何を変えるか」(岩波新書)に詳しい。本書はオバマの具体的政策よりは、オバマの理念・理想を問題としている。そこでオバマが何をなしたかではなく、オバマ大統領が登場してきたことの意義をアメリカの民主主義の流れの中で議論することであろう。オバマはアメリカに「不同意」が存在する事を認識し(不同意への同意)、ひとつのアメリカへ向けた決意を語った。オバマは、現代アメリカを蝕み続けた「分断の政治」を超克し、理念の共和国というアメリカの理想と伝統を志向するものであり、これまで多くの大統領が言って来た「アメリカの原点」への回帰である。2008年11月4日、大統領選に勝利してオバマは早速共和党への気配りを見せた。「共和党とは、自助自立に個人の自由、そして国の統一という価値観を掲げた政党です」と国民の和合を訴えた。
(つづく)