ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 佐藤栄佐久著 「福島原発の真実」 平凡社新書

2011年10月11日 | 書評
福島原発事故は日本統治システムの腐敗構造を曝露 第16回

5)原発政策と「日本病」 (2)

 2005年6月、東京電力勝又社長、7月1日経産相中川昭一氏に福島県がまとめた調査結果報告書を手渡し善処を求めた。しかし福島県の安全確保の要望は何一つ入れられずに、2005年7月「原子力政策大綱」が発表され、10月11日原子力委員会で「原子力政策大綱」は了承された。六ヵ所村の再処理工場は操業延期を続け、福井県敦賀原発の高速増殖炉「もんじゅ」は1995年の事故以来止まったままである。誰一人プルサーマルで溜まったままのプルトニウムを消費できるとは思っていない。おそらく国際社会に対してのゼスチャー程度にしか考えていないというのが実態だろう。日本では使用済み核廃棄物の対策に答えられる具体案を持っている人はいない。責任者の顔が見えず(担当官僚でさえ3年限りで代わってゆく、いわんや大臣は1年以内で代わる)、誰も責任を取らない日本型社会は場当たりの政策のつなぎ合わせと、先輩の作った政策の見直しは許されない官僚制度の枠のなかで、破局に向かって一目散に全力疾走しているのである。日中太平洋戦争で敗戦に向かってひた走りした教訓を忘れたかのようである。ドイツと違って敗戦をしっかり反省しないだらしない国になった。2006年1月24日原子力委員会は、各電力会社のプルトニウム利用計画を承認した。入りと出をあわせただけのお粗末な計画書である。これは計画だけで実現しないことは書いた電力会社一番良く知っている。しかし2月7日佐賀県知事は玄海原発3号機でプルサーマル計画を容認した。3月31日青森県六ヵ所村の動燃再処理工場が計画から6年遅れ建設費2兆1900億円をかけて、使う充てもないのに見切り発車的に試運転を開始した。同年5月、原子力委員会の耐震指針検討分科会は25年ぶりに指針を見直し、改定指針案を取りまとめた。パブリックコメントにおいて、改定案に対する大幅修正を求める神戸大学名誉教授の地震学者石橋氏は抗議の辞任をした。2006年8月28日、何一つ修正案意見を取り入れず、原案通りに可決する委員会第48回分科会に対して石橋氏は「意見を寄せてくださった方々への背信行為である。私はこの分科会の正体、本性がよく分かった。そして原子力安全行政がいかなるものかも改めて分かった」という。石橋氏の辞任後2007年7月新潟県中越地震が柏崎原発を直撃し、7基の原発は自動停止し、1台から火災が発生し放射能漏れをが起きた。2008年12月中部電力浜岡原発1,2号機が耐震性不足で廃炉を検討していることが明らかになった。そして六ヵ所村の再処理工場もふたたび試運転を延期した。
(つづく)

読書ノート 吉田 武著 「私の速水御舟」 東海大学出版会 

2011年10月11日 | 書評
天才 速水御舟の秘密ー日本画とはなにか 第6回

Ⅱ、「京の舞妓」

 「炎舞」が美の極致だとすれば、「京の舞妓」は醜の極致であろう。日本画は醜を描いてはならないという決まりは無いが、この絵は再興美術院の長老大観を怒らせた。「院展除名」という言葉も出たという。舞妓の着ている群青の絞りの着物の細密描写の美しさ、畳の目一つ一つを描く執念、花瓶の磁器の透明感など脇役は文句なしの技を見せてはいるが、舞妓の首から上の醜悪さは化け物である。文明批評的に見れば、人間の醜悪さを曝露されて怒るほうも馬鹿だが、激怒を誘う描き方も大人気ない。こんな絵は売れるわけがない。話題をてらっただけの事だろうか。著者は「舞妓の影に隠れた真実を描くためには、周囲の細密描写が必要であったのかというもんだいに行き着く」と解析した。美と醜の対比をわざと露骨に描いた曝露趣味なのだろうか。むしろ舞妓の顔をもう少し美人にして頬に朱を入れて、「悲痛な美」、「哀愁の美」に持ってゆくことは容易だったのに。
(つづく)

文芸散歩  池田亀鑑校訂 「枕草子」 岩波文庫

2011年10月11日 | 書評
藤原道隆と中宮定子の全盛時代を回想する清少納言 第18回

[50] 「馬は・・・」 第1類
馬は斑点がある黒い馬、葦毛、薄紅梅の色で髪尾が白いの、黒い馬で4つ足だけが白いのが素敵だという。

[51] 「牛は・・・」 第1類
牛は額が小さく、腹の下、足、尾などが白いのがいい。

[52] 「猫は・・・」 第1類
上が黒くて、腹が白いのがいい。

[53] 「雑色・随身は・・・」 第1類
雑色・随身は痩せていて細い男がいい。若い男はそうあるべきだが、肥えた男は眠そうでよくない。

[54] 「小舎人童・・・」 第1類
小舎人童は小さくて髪が美しくてサラサラしているのがいい。声がきれいで緊張してものをいうのが魅力的である。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「十三夜月」

2011年10月11日 | 漢詩・自由詩
獨坐読書燈火親     獨坐し読書 燈火親しむ

蒼天露下月如輪     蒼天露下 月は輪の如し

蕎花欺雪十三夜     蕎花雪を欺く 十三夜

江渚銀台一曲新     江渚銀台 一曲新たなリ


●●●○○●◎
○○●●●○◎
○○○●●○●
○●○○●●◎
(韻:十一真 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)