ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

読書ノート 佐藤栄佐久著 「福島原発の真実」 平凡社新書

2011年10月09日 | 書評
福島原発事故は日本統治システムの腐敗構造を曝露 第14回

4)検査記録改竄の「内部告発」 (3)

 9月26日の定例県議会冒頭で佐藤知事は「プルサーマル計画については前提となる条件が消滅しており、白紙撤回されたものと認識している」と述べた。県議会も「国と東電の責任の明確化と再発防止策を求める決議」を採択した。佐藤知事は10月7日に東京へ行き、原子力委員会の藤家委員長と会談し、結局どうあれ国策は遂行するという繰り返しの返答しかえられなかった。その足で経産省へ行き平沼大臣、細田科学技術相、松浦原子力安全委員長と会談した。保安院は電力会社に検査記録の総点検を指示した。他の原発でもトラブル隠しが発覚した。なかでも福島第1原発1号機の点検記録改竄は悪質だとして、2003年10月25日東電に対して1号機の1年間営業運転停止を命令した。2003年4月東電の定期点検のため原発17基すべての運転が停止した。東電の原発の出力は1730万8000Kwで、発電電力量では東電の約4割にあたる。(原発の稼働率は日本が世界最高だという割には、通常の稼働率は63%程度だ) 真夏の需要期を控え平沼経産相は「首都圏大停電」に言及した。これは2011年大震災による原発運転停止の影響による夏の30%節電運動に似ている。結局国は首都圏しか考えていないのである。大新聞は「大停電」の恐怖をあおり、原発再開を求めた。日本経済新聞は6月5日の社説で「首都圏の大停電を回避できるかどうかは,福島県佐藤栄佐久知事の動きいかんだ」と個人攻撃にでてきた。又資源エネルギー庁は「アメ」を用意してきた。プルサーマルMOX燃料には3倍の交付金を出すというものだ。まさに官僚による「アメとムチ」攻撃である。「週刊東洋経済」は7月12日に「佐藤知事は首都圏大停電を楯にとって、国のエネルギー政策の中核に注文を突きつけている」と書いた。佐藤知事によると前半はデマだが、後半は正しい評価だという。佐藤知事の願いは福島県民の命をまもるため、「事故情報を含む透明性の確保」と「安全に直結する原子力政策に対するつ法の権限確保」の2点である。7月10日東電の勝又社長に面会し、再発防止の決意を了とする」と返答し、第1原発6号機も運転再開を認めた。10月7日に「エネルギー基本計画」が閣議決定された。「原子力を基幹電源と位置づける」、「プルサーマルを中軸とする」と明記し、電力自由化を排除した。経産省内で原発派が自由化派を打ち破ったのである。
(つづく)

読書ノート 吉田 武著 「私の速水御舟」 東海大学出版会 

2011年10月09日 | 書評
天才 速水御舟の秘密ー日本画とはなにか 第4回

1)速水御舟の作品 (1)

 本書は速水御舟の作品として、著者の好みにしたがって9点の作品を取り上げている。そして本書の口絵として、図版を冒頭に9枚掲載している。著者の観賞を一つ一つ追跡してもさしたる成果は無いので、私は自分のセンスで2点、美の極致「炎舞」と醜の極致「京の舞妓」を取り上げたい。なんかこの2点が速水御舟の本質ではないかと思う。あとの作品は悪いが並である。私はむしろ果実の絵、なかでも「白磁の皿に柘榴」などに細密描写の極致が描かれているように感じる。
① 「蓬莱図」 明治42年 絹本彩色(101cm×41cm) 水墨風
② 「暮雪」 大正2年 絹本彩色 軸装(51cm×41cm) 朦朧体
③ 「洛北修学院村」 大正7年 絹本彩色 額装(131cm×97cm) モノクローム群青の世界 
④ 「京の舞妓」  大正9年 絹本彩色 軸装(152cm×102cm) 細密描写 群青の絞り 醜悪
⑤ 「廣庭立夏」 大正11年 絹本彩色 軸装(97cm×147cm) 朦朧体
⑥ 「炎舞」 大正14年 絹本彩色 額装(120cm×54cm) シュールリアリズム 幻想美の境地 モノクローム朱の世界
⑦ 「翠苔緑芝」 昭和3年 紙本金地彩色 四曲一双屏風  各(172cm×362cm) 琳派風
⑧ 「名樹散椿」 昭和4年 紙本金地彩色 2曲一双屏風 各(167cm×170cm)  琳派風
⑨ 「盆梅図」(未完) 昭和10年 絹本彩色 (65cm×101cm)
(つづく)


文芸散歩  池田亀鑑校訂 「枕草子」 岩波文庫

2011年10月09日 | 書評
藤原道隆と中宮定子の全盛時代を回想する清少納言 第16回

42] 「あてなるもの・・・」 第1類
優雅なるものとして、雁の卵、カキ氷にシロップを入れて金属のカップに入れたもの、水晶の数珠、藤の花、梅に雪が降りかかる、かわいらしい稚児がイチゴなどを食べる。

[43] 「虫は・・・」 第1類
すずむし、ひぐらし、松虫、きりぎりす、はたおり、蛍、蓑虫は鬼が生んだものというが秋になってチチとなくというがおかしい(蓑虫は冬眠のため)、ぬかずき虫、蠅はうとましい、夏虫は火の上を飛び回る、蟻は醜いが水の上を歩き回るというがあめんぼうと間違っているのか。

[44] 「七月ばかりに・・・」 第3類
7月に台風が吹いて雨風がうるさいが、涼しくなって一枚綿絹を羽織っって昼寝をするのが気持ちいい。

[45] 「にげなきもの・・・」 第1類
にあわないものとして、下衆の家に雪が降ったり次が差し込んだりするのは似合わない。貴族の家にこそ似つかわしいと言いたいようだ。年取った女が妊娠している。年取った女が若い男と出来ていることさせ見苦しいのに、男が別の女の元に行ったと嫉妬して様子。老人の野ぼけ顔、歯の抜けた女が梅を食って酸っぱがる。靭負の佐の夜這姿、狩衣姿、殿上人のお椀は見苦しい。清小納言が嫌うものはすこし変わっている。これは趣味に属することで何をかいわんや。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「紫峯西村」

2011年10月09日 | 漢詩・自由詩
秋霖細細隔雲泥     秋霖細細 雲泥を隔ち
 
黛色昏煙路欲迷     黛色昏煙 路迷んと欲す

橘柚緑黄疎雨外     橘柚緑黄に 疎雨の外
 
江村熟柿紫峯西     江村熟柿 紫峯の西


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(韻:八斉 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)