ブログ 「ごまめの歯軋り」

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東日本大震災と医療問題:真夏を迎えて被災地の感染症対策は大丈夫か

2011年07月09日 | 時事問題
 医療に関する提言・レポートfrom MRIC by 医療ガバナンス学会(2011年7月8日)「被災地の感染症対策」 木村盛世より

 木村盛世氏は厚労省の「一匹狼」的存在で、この意見は厚労省を代表する意見でないだけに面白いのである。ただ目線がやはり官僚的で上からの総括的・展望的・「狼少年的」警告的見解を述べられている。大震災の現場からの経験ではない。なぜ現時点で感染症対策なのかといえば、ひとつは夏場における非衛生さであり、二つは平時でさえいい加減な我が国のワクチン政策が、この時点で子供へのワクチン接種を大きく妨げていることへの心配である。まず第1の衛生状況であるが、ノロウイルスなどの急性胃腸炎や、ツツガムシ病、日本脳炎などの「動物由来感染症」の流行の心配である。港の瓦礫の腐敗など衛生状況は極めてわるい。加えるにトイレなどの使用・管理が極めて劣悪である。地方自治体の縦割り行政の弊害でトイレ対策さえ厚労省・建設省・環境省の指示待ちで改善されていないという役所の非能率性である。第2のワクチンで防げる疾患VPDが流行しないか、特に児童対策について心配だ。日本はワクチン後進国で、必要なワクチン(B型肝炎ワクチン、肺炎、髄膜炎、結核など)を、任意接種に放置しいまだに導入していないだけでなく、危険なワクチン(経口ポリオ)がいまだに使用されているなど、平時でさせでたらめなワクチン行政を行なって反省がない。見かねた海外よりユニセフが日本で活動を開始した。戦後直後の感染症医療後進国並である。

読書ノート R.P.ファイマン著 「物理法則はいかにして発見されたか」 岩波現代文庫

2011年07月09日 | 書評
量子電磁力学の祖ファイマン教授の物理法則 第3回

 本書「物理法則はいかにして発見されたか」は大きくは二つの講演会からなる。ひとつは1964年コーネル大学のメッセンジャー講演会「物理法則の性質」、もうひとつは1965年ノーベル賞受賞講演会「量子電磁気学の発展」である。前者の講演会は7回にわけて話された内容で、分量からすると1回がノーベル賞受賞講演会分とほぼ同じであるため、本書をなべて8回分の内容として考える。本書の翻訳者江沢洋氏は学習院大学名誉教授で理論物理学者である。プロフィールを紹介する。1932年、東京に生まれる。1960年 東京大学大学院数物系研究科修了、東京大学理学部助手。1967年 学習院大学助教授、1970年 教授、2003年 名誉教授。専攻は理論物理、確率過程論。著書には 『だれが原子をみたか』(1976、岩波書店)、『波動力学形成史』(1982、みすず書房)、『現代物理学』(1996、朝倉書店)、『量子力学 1・2』(2002、裳華房)。理論物理学者の江沢氏が2001年の岩波現代文庫本のはしがきで書いている。「この本は確かに古い話に違いないが、事実の記録として長い命を持っている。なぜかというと量子電磁力学はある意味では未だファイマン路線の上にあり、基礎物理の全体に影響力を持っている。ファイマン教授の発想や研究法が専門外の人に魅力を持ち続けているに違いない。量子力学となると本当にこれを理解している人はいない。」 しかしながら理論物理学は高エネルギー分野ではクォークを基本粒子として大きな進展を示し、2008年度ノーベル物理学賞に南部洋一郎、小林誠、益川敏英氏が「CP対称性の破れの発見」で受賞した。
(つづく)

読書ノート 木簡学会編 「木簡から古代が見える」 岩波新書

2011年07月09日 | 書評
古代の荷札から見えてくる生活と歴史 第9回

2)「奈良の都を再現する」 都の木簡 (4)

 長屋王は天武天皇の孫で、父は高市皇子、母は天智天皇の娘である。高市皇子は大化の改新で大活躍したが、母の出自が低かったため長男でありながら皇太子にはなれなかったが、太政大臣として持統天皇の政治を補佐した。長屋王は676年生まれで草壁皇子と元明天皇の女吉備内親王を妻に迎え、藤原不比等の女も妻に1人にむかえ、皇族のなかでも最高の血統を誇る華麗な一族であった。長屋王木簡は史料が少ない時代に家政運営に関るものであり、上流貴族の暮らしを垣間見ることが出来る。長屋王家木簡から、「店物 飯九十九笥直九十九文 別笥一文」などの注目すべき木簡が出ている。別に酒の木簡もあり、長屋王家は市の店で飯と酒を売る店を経営していたようだ。また邸内から「御酒醸所」という施設を持っていたことが知られているので、これを商売にしていたのである。長屋王家木簡には邸内外への物品の支給の際に使用した木簡が多数存在する。これらは人名、部署名、役職名などの支給先、物品名、数量、授受月日、出納責任者名からなる書式を持っている。家政の部署には、家令所、政所、帳内所、主殿寮、大炊寮、工司、鋳物所、書法所、仏具所、薬師所、馬司、税所などがあり、役職名も多岐にわたった。木簡の例として「内親王御所米一升 受小長谷吉備 十月14日書吏」という書式である。長屋王家には御田・御薗という私有地からの貢物が納められていた。木簡の例として「片岡進上蓮葉四十枚 持者都夫良女 御薗作人功事急急受給 六月二日 真人」とある。功事とは給料のことで急いで支給してくれという意味である。長屋王邸内だけでなく、邸外にも司をおいて税関係を管理しているし、物品の公易関係も極めて多い。近畿地方のみならず中国九州北陸信州関東に及んでいる。直轄地との取引だけでなく地方豪族との付き合いも多かったようだ。
(つづく)

筑波子 月次絶句集 「七月苦熱」

2011年07月09日 | 漢詩・自由詩
七月江西畏日雲     七月江西 畏日の雲

隆隆湧上火龍文     隆隆と湧上る 火龍の文

朱明午下金将爍     朱明午下 金将に爍けんとし

街路炎天暑欲焚     街路炎天 暑は焚えんと欲す


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(韻:十二文 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 ボーン・ウイリアムズ 「交響曲第2番 ロンドン」ほか

2011年07月09日 | 音楽
①「交響曲 第2番 ロンドン」 ②「あがるひばり」
ヴァイオリン・バリー・グリフィス
アンドレ・プレヴィン指揮 ロイヤルフィルハーモニー・ロンドン
DDD 1987 TELARC

ボーン・ウイリアムズ(1872-1958)はイギリスの作曲家で、「グリーンスリーブス」など、映画音楽などの親しみやすいジャンルの音楽を作った。