ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

医療問題 アメリカのホスピタリスト制度とは?

2010年08月01日 | 時事問題
医療に関する提言・レポートfrom KUROFUNet(2010年5月1日)「ホスピタリストの誕生ー彼らは急性期病院の救世主になれるか」 永松聡一郎 ミネソタ大学病院呼吸器内科フェロー  より


 「ホスピタリスト」とは何か、日本では見慣れない職業ではなく、あまりに当たり前でそう呼ばないだけのことだ。「病院勤務医」と言えば当らずと言えど遠からず。米国でなぜわざわざ「ホスピタリスト」が注目されるのか、それは病院医のあり方が違うからだ。1990年代より門番というべき「プライマリーケア医」(日本でかかり付け医という)が開業医と紹介した入院患者を病院で治療医として治療するというシステムである。病院の一部は貸しベット業みたいなものである。患者には病院と医師の両方から請求書が来るのだ。ところが米国特有の保険制度も絡んで、包括払い方式で入院期間が制約され開業医は患者の入院では儲からなくなった。プライマリーケア開業医としては、病院へ訪問治療に出かける面倒さより、開業医として儲ける方が有利と認識された。病院での治療の質の向上にインセンティヴが働かないということもあって、次第に病院の専門医に任せるようになった。この病院で治療に当たる医師を「ホスピタリスト」という。1990年代は「プライマリーケア医」は、外来と入院患者(自分の紹介で契約病院に送り込んだ患者)の診療の2足のわらじを履いていたのだが、2000年代よりレジデンス研修医を卒業したら暫くは病院にいて「ホスピタリスト」として入院患者の診療に従事し、それから時をみて外来診療に専従する新しいキャリアパスが生まれた。


読書ノート 真藤宗幸著 「司法官僚ー裁判所の権力者たち」 岩波新書

2010年08月01日 | 書評
最高裁判所事務総局の司法官僚 第8回

3)司法官僚の支配の実態(1)

 キャリアーパスはどこの組織にでもある事だし、民間会社においても社長への道は一番功績の大きい部門が長く続いていれば自ずと定まってくる。景気変動で社内力学が変動した時にキャリアパスが揺らぐ。そんなことはある特殊な組織の密室での決め事であり、我々の生活には何の関係もないことであるが、こと裁判所となると税金で仕事を行う国権の最高機関のひとつでもあるので、無関心でいてはいけない。この司法官僚という超エリート集団が国民の目から隔離されたところで権力を自己増殖することが一番危険である。それがどのような弊害を生むのか、司法改革の弊害になってはいないかを検証しよう。裁判所が訴訟を受けて始まるという意味で受動的であるから、司法官僚機構の及ぶ範囲も基本的には裁判所内部の事に過ぎない。つまり司法官僚機構は働きかけの対象としているのは、憲法上つよく「自立」を保障された高度の専門職である職業裁判官である。最高裁判所事務局には下級審の判決について指揮できる権限はない。しかし憲法上、最高裁を除く下級裁判所の裁判官は最高裁が指名する名簿にもとづいて内閣が任命するのであるから、最高裁は人事異動案を作成し、人事を総括している。国会の裁判官訴追委員会の送った青法協メンバーリストに従って、1971年最高裁は宮本氏の判事任用を拒否した。この例はいわば「赤狩り」に手を貸した最高裁判所の任用拒否はこれ1件しかない。判事補から判事へのスクリーニングは法曹の質を高めると期待されていたのだが、判事補から弁護士に転身する人はいても、その逆はなかった。職業裁判官の供給源は自ずと判事補しかいないことになった。
(続く)

読書ノート 宮本太郎著 「生活保障ー排除しない社会へ」 岩波新書

2010年08月01日 | 書評
雇用と結び付ける「生活保障」政策 第15回 最終回

5)排除しない社会のかたち (4)

 2009年度の日本の祖税負担率は23%で、スウェーデンの49%、イギリスの38%、アメリカの26%にも及ばない。これには日本では行政不信による「税は取られるもの」という意識が根強く、税は「ステーキホルダー」(いつか自分にも廻ってくる講の掛け金)という観点が皆無であったからだ。「貧困はなぜ生じるのか」というアンケートで、欧州では「社会的不公正」から生じるという回答が60%程度であるが、日本や韓国・アメリカでは「怠惰のせい」だと回答する人が上回っている。新自由主義の考えにすっかり染まっているようだ。今の日本では公務員、正規社員、福祉制度がエスケープゴート視され、全員が低いレベルで平等という「引き下げ民主主義」(足の引っ張り合い)で満足するのは間違っている。著者は着実な改革とは、日本の歴史と現状から出発するもので、すべからく漸進的なものであるという。欧州では「福祉から就労へ」という流れで進んできたが、日本では「福祉よりも雇用が一番」で進んできた。雇用が守られている間は日本的労働市場も世界に冠たるものであったが、その前提が崩れつつある今、進むべき道はさてスウェーデン型生活保障で行くべきなのであろうか。


月次自作漢詩 「喜 雨」

2010年08月01日 | 漢詩・自由詩
黒風一陣颯然催     黒風一陣 颯然と催し

遠近填填響迅雷     遠近填填と 迅雷響く

猛雨躍珠駆暑去     猛雨珠を躍らせ 暑を駆って去り
   
生生爽気遂涼来     生生たる爽気 涼を遂って来る

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(韻:十灰 七言絶句平起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 ブルックナー 「交響曲第9番 ニ短調」

2010年08月01日 | 音楽
ブルックナー 「交響曲第9番 ニ短調」
クリストフ・ドホナーニ指揮 クリーブランド管弦楽団
DDD 1988 LONDON

未完の交響曲で第3楽章で終っている。1893年から初めて1896年の死まで作曲していたという。ブルックナー的開始(原始的霧)で始まり、ホルンで動機が始まる。クリストフ・ドホナーニはハンガリー人でベルリン生まれ、祖父が有名な作曲家エルンスト・ドホナーニであった。父と叔父は反ナチ活動で死刑にされた。クリーブランド管弦楽団をヨーロッパ風の音に変えた。