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医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

欧米人では悪玉コレステロールを70から62に下げても効果は同じ

2011年11月16日 | 循環器
学会で発表するために米国オーランドに来ています。今日は先ほど発表されたばかりのレイト・ブレイキング・クリニカル・トライアルの結果をお伝えします。

先日、製薬会社は悪玉コレステロールは下げれば下げるほどよいと言っているけれど、日本人では「悪玉コレステロールは80まで下げる必要はない」ことをお伝えしました。

今日発表された研究は欧米人で、リピトール80mg/日を使って、悪玉コレステロールを70.2まで下げた519人と、クレストール40mg/日を使って悪玉コレステロールを62.6まで下げた520人を2年間観察して、2年後の心臓の動脈の動脈硬化(プラーク)の量が投与前と比較してどれだけ減ったかを両群で比較したものです。

善玉コレステロールは、リピトール80mg/日群では48.6、クレストール40mg/日群では50.4でした。

結果は、両群で2年後の心臓の動脈の動脈硬化(プラーク)の量の減少量は同じでした。これらの研究を企画した製薬会社は、以前から、心臓の動脈の動脈硬化(プラーク)の量が減るほど心筋梗塞の発症率を減らすことができると主張していましたから、この研究の結果からは、欧米人では悪玉コレステロールを70.2からさらに62.6まで下げても、効果はないということです。

これは、欧米人の場合です。日本人では先日お伝えしたように、90を80に下げても効果は同じですから医療費を余分に費やして80まで下げる必要はありません。

今日発表された研究を企画した製薬会社はリピトール80mg/日よりもクレストール40mg/日で悪玉コレステロールをもっと下げれば効果があることを予想していたはずですが、それに反する結果がでたと言えます。

明日、アストロゼネカの株価は下がります。

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一次関数の関係があると限らない生命科学の2つのパラメーター

2011年10月08日 | 循環器
前回、強化治療で悪玉コレステロールを80mg/dlまで低下させても、効果は通常治療群と同じで、そこまでする必要はないという論文を紹介いたしました。

実は、この論文の共同著者は東京大学 山崎力医師で、悪玉コレステロールは低ければ低いほどよいと製薬会社の研究会で講演を繰り広げる一派の一人です。4年前の医者向けの教科書「循環器疾患、最新の治療」の中で、「2004年に発表された”Optimal LDL is 50 to 70 mg/dL”というタイトルの論文では、これまでのスタチンによる一次予防試験、二次予防試験の結果より、計算上、一次予防ではLDLコレステロール値を57 md/dLまで、二次予防では30 mg/dLまで下げることによって冠動脈疾患発症率が0%になることを示している。この論文では、狩猟民族(50~75 mg/dL)、健康な新生児(30~70 mg/dL)、ヒト以外の霊長類(40~80 mg/dL)のLDLコレステロールレベルはおおむね50~70 md/dLを保つとともに冠動脈硬化病変がないことが、この推定が正しいことの根拠のひとつであると主張している」と記載しています。

悪玉コレステロール30 mg/dL!バカなことを言ってはいけません。

しかし「この記載が間違っていても、それは論文の著者のせいで、私はそれを紹介しただけ」という書き方をしていますが、「コレステロールはどこまで下げるか」という章で記載しているのですから、彼がそれを支持しているということは彼自身認めなければなりません。

さて、前回ご紹介した論文で、この記載は間違いであることが明らかになりました。彼はこの研究で「悪玉コレステロールは低ければ低いほどよい」という結果が出ることを予測していたと思いますが、残念ながらそういう結果は出ませんでした。彼は考えを改めて、製薬会社の研究会での主張を変えなければいけません。

つまり、上の図のように、点線の直線で表されるのではなく、実線の関係であるということで、生命科学では2つのパラメーターは必ずしも一次関数の関係があると限らないということです。生命科学で2つのパラメーターが直線的に正比例すると仮定してしまうこと自体、馬鹿げたことなのです。

この事実は次回の記事の根拠としたいものです。次回をお楽しみに。

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悪玉コレステロールは80 mg/dlまで下げると危ない

2011年10月06日 | 循環器
製薬会社は悪玉コレステロール低下薬の販売を促進させようと、悪玉コレステロールは低ければ低いほど良いと宣伝し、それに乗っかって売名行為をする教授・医者が大勢いることを何度もお伝えしてきました。

皆さんの目にとまりやすいように「悪玉コレステロールは80 mg/dlまで下げると危ない」という題名にしましたが、先月論文で発表されたばかりの「悪玉コレステロールは80まで下げる必要はない」という結果をご紹介します。

すでに心臓の血管に病気がある患者の場合です。(二次予防といいます)

Intensively lowering both low-density lipoprotein cholesterol and blood pressure does not reduce cardiovascular risk in Japanese coronary artery disease patients
Circ J 2011;75:2062.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★☆☆)
↓原文はこちらです
http://www.jstage.jst.go.jp/article/circj/75/9/2062/_pdf

心臓の血管に動脈硬化疾患のある高血圧症と高悪玉コレステロール血症の患者約500人が、血圧140/90以下かつ悪玉コレステロール100mg/dl以下をめざす通常治療群と、血圧120/80以下かつ悪玉コレステロール80mg/dl以下をめざす強化治療群にランダムに分けられ、平均3.2年間、狭心症や心筋梗塞の発症が調査されました。

血圧は通常治療群で126/70 mmHg、強化治療群で121/68 mmHg、悪玉コレステロールは通常治療群で92 mg/dl、強化治療群で80mg/dlでした。

平均3.2年間調査した結果は上の図にあるように、強化治療群(赤実線)が通常治療群(青点線)に比較して狭心症や心筋梗塞の発症が1.5倍増える傾向がありました。統計学的には両群の発症は同じと判定されました。

要するに強化治療で悪玉コレステロールを80mg/dlまで低下させても、効果は通常治療で90mg/dlまで下げた群と同じで、80mg/dlまで下げる必要はないという結果でした。


以前、ゼチーアの有用性について間違った解釈についていろいろお伝えしましたが、そもそもゼチーアが有用というデータはないのに、ゼチーアでも悪玉コレステロールを80mg/dl以下に低下させても、費用だけかかるだけで、まったく効果がないということです。
http://blog.goo.ne.jp/secondopinion/m/201105

↓以前、こういうこともお伝えしてきました
まだ心臓の血管に病気がない方(一次予防といいます)はLDLコレステロール値は160mg/dlでも大丈夫

製薬会社の主催の講演会で、悪玉コレステロール低下薬の販売を促進させようとする製薬会社の都合のよいことばかりを言って売名行為をする教授・医者は厳しく弾劾されなければなりません。

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心筋梗塞後につまったままの血管に発症2日以降にステント治療しても予後は改善しない

2011年10月04日 | 循環器
Impact of National Clinical Guideline Recommendations for Revascularization of Persistently Occluded Infarct-Related Arteries on Clinical Practice in the United States
Arch Intern Med. 2011 Jul 11. [Epub ahead of print]
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

2006年に、心筋梗塞後につまったままの血管に発症2日以降にステント治療しても患者の予後は改善しないという研究結果が出ましたが、その結果に基づいて米国心臓病学会と米国心臓協会は、「心筋梗塞後につまったままの血管に発症2日以降にステント治療することは推奨しない」と治療ガイドラインを改訂しました。

今年7月に発表された今回の論文は、そのガイドラインが発表される前と後で、そのような治療が減ったか調査したものです。

896施設の2万8,780人のデータが調査されました。年齢、性別、加入保険の件数などで補正した結果、ガイドライン改訂前後で、心筋梗塞後につまったままの血管に対する治療は減っていませんでした。

この論文の著者は、「心筋梗塞後24時間以降につまったままの血管に対するステント治療について、その試行を支持するエビデンスに乏しく、新ガイドラインでも施行しないように推奨しているにもかかわらず、施行され続けている。これは、多くの患者に対して有用性の低い高額な治療が施行されていう可能性があること、またガイドライン作成のための調査に費やした膨大な時間と労力が実際の医療に貢献していないことを意味している」と述べています。

まったくその通りです。

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ステント医の次の言い訳

2011年10月01日 | 循環器
心臓の血管が狭くなった状態を治療するのにバイパス手術とカテーテル治療がありますが、カテーテル治療には次の3つの段階がありました。

第1時代、先端に風船がついたカテーテルを使用して狭いところを広げる風船治療(1980年代)
第2時代 、ステントという金属を狭いところで広げて留置しておくステント治療(1990年代)
第3時代 、再び狭くならないようにする薬剤を塗ったステントを留置する薬剤溶出性ステント治療(2000年代~)

(1)の時代には、心臓の血管3本ともに狭窄がある場合、風船治療とバイパス手術のどちらが患者の予後が良いかということに関して風船治療はバイパス治療ほど成績が良くありませんでした。しかし、そのような研究の結果が出る頃には時代は(2)に突入しており、風船治療をしている医者たちは「今やステント治療の時代なのだから、現状ではバイパス手術に負けているかどうか分からない」と主張し、相変わらずステント治療を続けていました。その後、やはりステント治療はバイパス治療ほど成績は良くないことが研究結果から分かりました。しかし、そのような研究の結果が出る頃には時代は(3)に突入しており、この時もステント治療している医者たちは「今や薬剤溶出性ステント治療の時代なのだから、現状ではバイパス手術に負けているかどうか分からない」と主張し、相変わらず薬剤溶出性ステント治療を続けていました。

さて、先日の学会でステント医が言っていた次の言い訳です。

冠動脈主幹部に対するステント治療の限界に根拠を与えているSYNTAX試験の問題点について、「薬剤溶出性ステントの種類が限られており、ステントのデザインや薬剤の進歩が取り入れられていない点のほか、病変背景のみで層別化している点、血管内超音波の併用がない点、抗血小板薬を含めた綿密な内服加療といった点である。」と・・

私のブログを長くご覧いただいている皆さんにとっては、このようなコメントがいかにバカらしいかお分かりになると思います。

心臓バイパス手術 vs ステント治療 CREDO-Kyoto


今度の言い訳はステントのデザインですか??以前に行っていた治療が間違っていたことに未だに気がつかないのですか??ステント医さん達??
これから、貴方たちを中国の王報道官と呼ばさせていただきます。

「人を殺してはいけないというのは、あなたが殺されないためにある」ということを、もう少し認識すべきである

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心臓バイパス手術 vs ステント治療 CREDO-Kyoto

2011年09月01日 | 循環器
学会で発表するためにパリに来ています。上の図は今回の学会で発表された結果です。

赤線はバイパス手術、青線は薬剤溶出性ステント治療です。図は重症度を評価するSYNTAXスコアーが33以上という重症の場合の3年間の死亡、心筋梗塞、脳梗塞の発症率を表しています。薬剤溶出性ステント治療の方が死亡、心筋梗塞、脳梗塞が多いです。


心臓の血管が狭くなった状態を治療するのにバイパス手術とカテーテル治療がありますが、カテーテル治療には次の3つの段階がありました。

第1時代、先端に風船がついたカテーテルを使用して狭いところを広げる風船治療(1980年代)
第2時代 、ステントという金属を狭いところで広げて留置しておくステント治療(1990年代)
第3時代 、再び狭くならないようにする薬剤を塗ったステントを留置する薬剤溶出性ステント治療(2000年代~)

1の時代には、心臓の血管3本ともに狭窄がある場合、風船治療とバイパス手術のどちらが患者の予後が良いかということに関して風船治療はバイパス治療ほど成績が良くありませんでした。しかし、そのような研究の結果が出る頃には時代は2に突入しており、風船治療をしている医者たちは「今やステント治療の時代なのだから、現状ではバイパス手術に負けているかどうか分からない」と主張し、相変わらずステント治療を続けていました。その後、やはりステント治療はバイパス治療ほど成績は良くないことが研究結果から分かりました。しかし、そのような研究の結果が出る頃には時代は3に突入しており、この時もステント治療している医者たちは「今や薬剤溶出性ステント治療の時代なのだから、現状ではバイパス手術に負けているかどうか分からない」と主張し、相変わらず薬剤溶出性ステント治療を続けていました。

さて、今回の学会では日本において薬剤溶出性ステント治療とバイパス手術のどちらが患者の予後が良いかという、これまで繰り広げられていた論争に終止符を打つ画期的な結果が発表されました。

心臓の血管3本ともに狭窄がある2812人を調査しSYNTAXスコアーという重症度を評価するスコアーを用いて患者を分けた場合、SYNTAXスコアーが33未満という軽症~中等度の場合は、バイパス手術と薬剤溶出性ステント治療の成果は同じでしたが、33以上という重症の患者の場合は、明らかにバイパス手術の方が成果があったという結果です。

これまで同様の研究は欧米で行われて、2009年9月にNew England Journal of Medicineで公表されていました。結果は総合してみると,主要心脳血管イベントの発生はバイパス手術群のほうが有意に良好で、この傾向は病変が複雑になるほど強く、複雑病変ではバイパス手術が適しているという結果でした。

しかし、ステント治療している日本の医者たちは、「日本の医者は欧米の医者よりも手先が器用で、ステント治療が上手だから、この結果は日本には当てはまらない」と主張を続けていました。

今回の学会での発表はその主張を覆すものでした。

ここで、ある例えを紹介させてください。
8月15日 中国は「わが国の高速鉄道には知的財産権を主張できる技術は存在しない」と認めましたが、あの中国鉄道事故を時系列でまとめてみました。

6月30日 北京と上海を結ぶ路線が開通。これに先立ち、川崎重工の技術をベースに鉄道開発を手掛けた現地企業「中国南車」は、米国をはじめ世界各国で新車両を「中国の独自開発」と特許を出願した。

7月7日 鉄道省報道官の王勇平氏がすべて「独自の技術」だと明言。日本の将来の高速鉄道建設計画に向けて「日本に技術を提供したい」とまで言い放った。

7月15日 王報道官は、故障の多い中国高速鉄道に批判が高まっていることに対して、「日本の新幹線だって頻繁に故障する」として、延伸開業した日本の東北新幹線が初日から故障し、1カ月後にもシステム故障などで大きな遅延が発生したことを例示。「中国人は問題を自己解決できる。他人は自身のことをしっかりやってから物を言っていただきたい」と断じた。

7月23日 高速鉄道事故発生

8月15日 人民日報は、中国で可能なのは塗装や座席の取り換えぐらいで、特許出願どころか外国製の安全制御システムの操作すらできない実態を明らかにし、「わが国の高速鉄道には知的財産権を主張できる技術は存在しない」と認めた。

ここで、注目すべきは、中国はやっとウソを認めた(評価できる)ということより、①7月7日の王報道官の発言は全くのウソであった、②7月7日以外の過去の発言も信用できない、③今後も王報道官の発言は信用できないということではないでしょうか。

さて、バイパス手術とステント治療の話に戻ります。当時、「今や薬剤溶出性ステント治療の時代なのだから、バイパス手術に負けているかどうか分からない」と主張し間違った治療を続けていた医者たちの罪は計り知れないということです。

こういう研究結果はあくまでも平均の話である、個々の患者をみた場合、SYNTAXスコアーが33以上の重症の場合でも、ステント治療が勝ることはあると主張する医者もいるでしょう。しかし、ステント治療が勝る患者とそうでない患者をどういうふうに区別するのでしょうか。医者の主観ですか?この研究では、そういう患者の層別化をSYNTAXスコアーという形で行っているのです。それに、心不全の予後の改善にβブロッカーなどを処方し、ワーファリンよりも数パーセント出血性合併症が少ないからプラザキサを処方しているのは、平均から分かった医学研究に従っているわけです。そういうのは研究の結果に従って、バイパス手術とステント治療の研究の時は、平均の結果であり個々のケースで異なると主張するのはダブルスタンダードです。

患者の強い希望や脳梗塞リスクの高い場合などは別として、SYNTAXスコアーが33以上の重症の患者に、これ以上薬剤溶出性ステント治療を続けるとすれば正当な理由が必要です。

それに、患者の強い希望とか言っても、ステント医自身も心の中では「説明のしかた次第」だと思っているはずです。

「説明のしかた次第」・・・・こんなのは医者の間では常識。だからこそ医者は良心を見失ってはいけないのです。

以前、ステント治療をしている医者が「ステント治療はバイパス手術を駆逐する」(駆逐:不適当と思われるものを追い払うこと)という講演をして、心臓血管外科の先生方から失笑をかっていましたが、こういうステント医たちは猛省しなければなりません。

そしてそういうステント医たちが集う学会の信頼性も失墜します。

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血液凝固阻止剤「プラザキサ」で76人に重い出血、5人死亡

2011年08月13日 | 循環器
以前、プラザキサの有用性についてお伝えしました

厚生労働省は8月12日、血栓をできにくくする血液凝固阻止剤「プラザキサカプセル」を服用した70代以上の患者5人が、消化管出血など因果関係の否定できない重い出血性の副作用で死亡したと発表した。今年3月に販売され、推定で約6万4千人が使っている。

厚労省は、製造販売業者の「日本ベーリンガーインゲルハイム」(東京)に対し、投与に当たって腎機能検査を行うよう使用上の注意の改訂や、医療機関などへの速やかな情報提供を指示した。服用中の患者には、鼻血や歯茎、皮下の出血、血尿、血便などに注意し、出血があったらただちに医師に連絡するよう求めている。

厚労省によると、死亡したのは男女5人で、70代が1人、80歳以上が4人。4人は消化管出血があり、もう1人は多数の皮下出血がみられた。ほかに76例の重い出血の報告があった。
(産経新聞より引用)

これに対して発売元ベーリンガーインゲルハイムは以下のような声明を出しました。

(1) 投与中は出血や貧血等の徴候を十分に観察してください
患者の状態(腎機能、高齢者、消化管出血の既往等)による出血の危険性を考慮し、本剤の投与の適否を慎重に判断してください。本剤による出血リスクを正確に評価できる指標は確立されておらず、本剤の抗凝固作用を中和する薬剤はないため、本剤投与中は、血液凝固に関する検査値のみならず、出血や貧血等の徴候を十分に観察し、これらの徴候が認められた場合には、直ちに適切な処置を行ってください。特に「慎重投与」の項に掲げられた患者には注意してください。

(2) 患者には、出血があった場合は直ちに医師に連絡するよう指導してください
患者には出血しやすくなることを説明し、鼻出血、歯肉出血、皮下出血、血尿、血便等の異常な出血が認められた場合には、直ちに医師に連絡するよう指導してください。

(3) 必ず腎機能を確認してください
本剤を投与する前に、必ず腎機能を確認してください。また、本剤投与中は適宜、腎機能検査を行い、腎機能の悪化が認められた場合には、投与の中止や減量を考慮してください。

これではプラザキサの「ワーファリンでは必要だった血液検査によるモニターが不要」という利点がなくなり、ただの高価な薬ということになってしまいませんか?なんだかお粗末な話です。

それと、血液さらさら度をモニターできるワーファリンが捨てがたいのでは?

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プラザキサの有用性とワーファリンによる骨折のリスク

2011年06月16日 | 循環器
以前、心房細動に対する血液さらさら療法薬 プラザキサの薬価が決まれば再考したいと書きました。薬価が決まりましたので考察したいと思います。

これまで、血液さらさら療法に使用されているワーファリンは効果の強さを定期的に血液検査で測定する必要があり、その結果によって内服量を調節しないといけないというように煩雑でした。

ちなみに、プラザキサには薬効を確認する血液検査の項目はありません。出血している場合はAPTTがめやすになる可能性があるそうです。

プラザキサでは血液検査の必要がなくなったのですが、通常は1錠(75mg)を朝2錠、夕2錠内服することになります。75mg錠が132円ですので、1日528円と計算できます。1か月で15,840円で3割負担の場合だと自己負担額は1か月4,752円です

ワーファリンは使用量によって異なりますが、1mgで約10円ですので、1日薬価は10~50円、自己負担額(3割)は1か月90~450円です。これに血液検査代が若干かかります。

ワーファリンはビタミンKの作用を阻害することによって効果があるのですが、ビタミンKは骨の形成に重要な役割を持っており、ワーファリンを内服しているとビタミンKの効果が減弱するので、理論上、骨形成が抑えられ骨密度が減り骨折が増えると考えられています。

研究の代表的なものは
Risk of Osteoporotic Fracture in Elderly Patients Taking Warfarin
Results From the National Registry of Atrial Fibrillation 2
Arch Intern Med. 2006;166:241.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

68歳以上の心房細動で入院した7,587名が退院後、ワーファリンを使用しない群1,905名と使用する群4,652名に分けられ、骨粗鬆症性が原因と思われる骨折の発症が500日間調査されました(平均年齢79歳)。上の図が示すように、男性で骨粗鬆症性が原因と思われる骨折は500日間でワーファリン内服群が約5%、非内服群が3%で有意に多いが(1.63倍)、女性では差がありませんでした(1.05倍)。


女性だけでの研究の代表的なものは
Warfarin use and risk for osteoporosis in elderly women.
Arch Intern Med. 1998;128:829.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

65歳以上の女性でワーファリンを内服している149名と内服していない6,052名が、骨粗鬆症性が原因と思われる骨折の発症が3.5年間調査され、年齢、体重、女性ホルモン量で補正されました。結果は骨密度も骨折の割合も両群で差が認められませんでした。


それと、忘れてならないのは、
Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation
N Engl J Med 2009;361:1139.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
で報告されたように
2年半で0.54%の心筋梗塞の発症がプラザキサの内服で0.74%に上昇したことです。

以上より、68歳以上の男性では、500日の骨折のリスクを5%から3%に低下させ、血液検査の必要性を無くするのに、自己負担額が1か月約4,300円増え、心筋梗塞の発症が0.54%から0.74%に増えてもよいと考える患者には、プラザキサは有用と思われます。

年金生活の方には、1か月4,300円増というのはかなりきついので、いくらベーリンガーインゲルハイム社からうまいこと宣伝されたとしても、医者が勝手にワーファリンをプラザキサに変えてはいけません。

もちろん、自己負担額1か月4,300円増えてもいいから、血液検査を無くしたいとか、納豆などを食べたいという患者にも有用です。

プラザキサは早く効き目がでますが、逆に飲み忘れた場合に早く効き目がなくなります。あと、吸湿性が高いのでシートから出して一包化できないです。

費用の問題を患者に説明しないで、医者が勝手にワーファリンをプラザキサに変えてしまうのは「薬の押し売り」になります。


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大震災で発症する「たこつぼ心筋症」

2011年04月18日 | 循環器
                  Circ J 2006;70:947.より引用

震災に被災し避難生活が始まると、トイレに困るため水分摂取をひかえ同じ姿勢で長時間すごすため、股関節あたりの大静脈に大きな血栓ができ、それが肺に流れて肺梗塞を起こし致命的になることは「エコノミー症候群」として知られています。

さて、セカンドオピニオンとしましては、「エコノミークラス症候群」と同様に震災で気をつけないといけない「たこつぼ心筋症」をお伝えしたいと思います。

「たこつぼ心筋症」は発症すると心臓の壁の動きが極端に悪くなり、心不全を起こして適切な治療を施さないと死に至る場合もあります。それまで全く元気だった人でも発症する可能性があるため注意が必要です。といっても注意していれば発症を防げるということもありません。

発症すると、心臓の壁の根本は動くのですが、その先がほとんど動かなくなり(上図)心臓の形がタコ漁で使用する壺のようになるので、このように名付けられました。
日本人が世界に先駆けて発見した病態です。

はっきりとした原因は分っていませんが、強烈な精神的・肉体的ショックにより、カテコラミンというホルモンの一種が過剰に分泌されるために起こると考えられています。

「たこつぼ心筋症」に関する重要な論文の1つに

Increased incidence of transient left ventricular apical ballooning (so-called 'Takotsubo' cardiomyopathy) after the mid-Niigata Prefecture earthquake.
Circ J 2006;70:947.

(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★☆☆☆☆)
があります。

これは2003年の新潟県中越地震の際に発症した「たこつぼ心筋症」16人(男性1名、女性15名)について調査したものです。それまでは、新潟中部の3つの基幹病院全体で2か月に1人の発症率だったのが、地震によって24倍に増えました。

もう一つの重要な論文は先月発表されたばかりのものです。「たこつぼ心筋症」は日本人が発見したのですが、日本は全国的に症例を集めて詳細を統計学的に検討するということが苦手な国でありまして、アメリカが先に解析してしまったという論文です。日本では新しいことを発表するとすぐに批判にさらされて、各施設が分裂してしまうからです。アメリカではタコ漁でこういう壺を使わないようですので、直訳すると「心尖部拡張症候群」と名付けています。有名なメイヨークリニックが解析したので、予後のリスクに関して「メイヨークリニック・リスク・スコアー」と勝手に名前をつけています。逆に、日本人がこういうふうに勝手に名前をつけても、アメリカは滅多に認めてくれません。悲しい権力の差です。(実力の差ではないです)

Acute heart failure in apical ballooning syndrome (TakoTsubo/Stress cardiomyopathy)
J Am Coll Cardiol 2011;57:1400.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★☆☆)

2002年から2008年の間に発症した「たこつぼ心筋症」118人に関して、その後心不全を発症して悪化する因子に関して調査されました。118人のうち45%が心不全を発症しました。

多変量解析という手法で解析した結果、
(1) 精神的ショックよりも肉体的ショックが原因であること、
(2) 年齢が高いこと、
(3) 入院時のトロポニンTという心臓の筋肉から漏れ出してくる物質の値が高いこと、
(4) 入院時の心臓の動きが悪いこと

の4つが発症後の予後を悪化させる因子でした。

震災に限らず、強烈な精神的・肉体的ショックを受けたあとで、息苦しさが続くようならこの疾患も念頭に入れる必要があります。

私が先日経験した患者さんは42歳女性で、足の骨肉腫が見つかり、短期間に「告知」→「大腿部で下肢を切断」に至った方が「たこつぼ心筋症」を発症しました。強烈な精神的・肉体的ショックにさらされたと推測できます。一般的にこの疾患は男性より女性に多いです。


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心房細動に対する新しい抗凝固療法 プラザキサ

2011年03月01日 | 循環器
もうすぐ、直接トロンビン阻害という新規作用を持つ抗凝固薬プラザキサ(一般名:ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩、日本ベーリンガーインゲルハイム)が発売されます。

以前、70歳以上の心房細動の方ではワーファリンという血液をさらさらにする薬剤を内服していないと脳梗塞の発症率は4.8%/年、ワーファリンを内服すると0.9%/年に改善されるということをお伝えしましたが、ワーファリンを内服するには効果の強さを定期的に血液検査で測定する必要があり、その結果によって内服量を変えないというように煩雑でした。

プラザキサにはそのような血液検査が必要なくなり、使用しやすくなりました。

心房細動では心房が収縮せずブルブルと微細にふるえた状態ですので、心房の内側に血液の固まりが出来やすくなり、それが脳に流れていくと脳梗塞になります。従って、血液を固まりにくくする必要があります。

プラザキサの有効性をワーファリンと比較した研究があります。
Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation
N Engl J Med 2009;361:1139.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

心房細動の患者18,113人(平均年齢71歳)が、プラザキサ110mg1日2回内服群(低容量群)と、プラザキサ150mg1日2回内服群(通常用量群)と、ワーファリン内服群に分けられ、その後30か月の脳梗塞と全身性塞栓症の発症率と副作用が調査されました。

この研究に参加した患者の、脳梗塞のなりやすさを示す指数CHADS2スコアーの平均は2.1でした。

1年間に換算した発症率は(*印は差があったところです)
110mg群 150mg群 ワーファリン群の順です。
1.53%  1.11%* 1.69% 脳梗塞と全身性塞栓症
2.71%* 3.11%  3.36% 出血性疾患
0.12%* 0.10%* 0.38% 脳出血
0.72%* 0.74%* 0.53% 心筋梗塞
2.2%*  2.1%* 0.6%  消化不良、下痢、嘔気などの消化器症状
15%*  16%*  10%  内服の継続不可能

以前の研究ではワーファリン内服での脳梗塞の発症率は1年で0.9%、この研究では1.69%ですから、今回の調査に参加した患者の脳梗塞のなりやすさは以前の研究より高い集団ということです。

まとめますと、
本来の目的である脳梗塞と全身性塞栓症を減らすことに関しては110mg群でワーファリンと同等、150mg群でワーファリンより優れていました。

目的と反対の作用として考えられる出血の程度は110mg群でワーファリンより少なくなり、150mg群でワーファリンと同等でした。

目的と反対の作用として考えられる脳出血の程度は110mg群、150mg群でワーファリンより優れていました。

その反面、110mg群、150mg群でワーファリンより心筋梗塞が多くなりました。また、110mg群、150mg群で消化不良、下痢、嘔気などの消化器症状が多くなり、そのためと思われる内服の継続不可能が増えました。
(製薬会社からはこの薬の良い面しか知らされないと思われますので、強調しました)

プラザキサの半減期は12-17時間で1日2回服用が必要ですが、内視鏡検査前の休薬期間も短くて済みます。また、2時間で最高血中濃度に達するので、再開後も抗凝固効果が速やかに得られるという利点があると思われます。

その反面、抗不整脈剤のワソラン、アミオダロン、キニジンの血液濃度を上昇させるため併用には注意が必要です。

あと、問題は薬価です。まだ公表されていませんが、1日600円ぐらいです。ワーファリンは1mg1錠で10円、1日3錠内服する場合で30円ですから、約20倍ぐらいだと思われます。3割負担の人でなんと月5,400円です。決定したら考察したいと思います。

従って、現状での私の意見として、高血圧や糖尿病などの動脈硬化危険因子がなくワーファリンの内服量の調節がほとんど必要ない安定した患者からの変更はそれほど利点がないですが、調節の不安定の患者にはワーファリンからの変更が有用と考えられます。

ただ、この研究はたった30か月の観察期間なので、長期的な有効性と安全性についてはもう少し待つ必要があります。


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心房細動ガイドライン

2010年12月01日 | 循環器
上海から無事に帰ってきました


心房細動では脳梗塞の発症率が上昇するため、ワーファリンを内服する必要があります。今年8月に開かれた欧州心臓病学会で、どういう条件でワーファリンの内服が必要であるかのガイドラインが発表されました。

従来のCHADS2スコアでは、2スコア以上でワーファリンの内服が推奨されていましたが、0または1スコアの場合は議論の余地があり限界がありました。そこで、さらにきめ細かいリスク評価をできるようにリスク指標を手直ししたのが新しいCHA2DS2-VAScスコアです。

CHA2DS2-VAScスコアでは「血管疾患がある」「65歳~74歳」「女性」を1スコアの項目とし、さらに「75歳以上」のリスクを2スコアに引き上げました。

上の表1はそのリスク評価表です。スコア2以上でワーファリンの内服が必要になります。

表2はワーファリンの内服によって逆に出血のリスクが増えるかどうかの評価表です。スコアが3以上の場合は出血のハイリスクとなり、ワーファリンの量に厳重な調整が必要になります。

↓心房細動全般に関しては、日本循環器学会からガイドラインが発表されています。
心房細動治療(薬物)ガイドライン

【補足】12月2日
以前の研究によると、70歳以上の心房細動の方ではワーファリンを内服していないと脳梗塞の発症率は4.8%/年(リスクの重積によってはそれ以上ということ)、ワーファリンを内服すると0.9%/年に改善されるのですが、CHA2DS2-VAScスコアでスコア0やスコア1の人は脳梗塞の発症率は低いのでワーファリンの内服は必要ないということです。CHA2DS2-VAScスコアでスコア2以上であればワーファリンの内服は必要です。

ただし、表2のスコアが高い人はさらさら度を注意深く血液検査でモニターして管理する必要があるということです(表2でINR不安定というのはさらさら度が不安定ということです)。


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心房細動を防いでも死亡、心不全、脳梗塞、出血の頻度は改善しない

2010年11月28日 | 循環器
政治的に微妙な時期ですが、学会で講演するために上海に来ています。交差点に信号があるのに皆がそれを守らないため、警官が交通整理をしているという、まぬけな国です。やはり誰もルールを守りません。こういう写真を撮っていると、いちゃもんを付けられてフジタの社員のように拘束されないか心配です。そして、帰りの飛行機に北朝鮮のミサイルが当たらないよう祈るばかりです。


以前、70歳以上の心房細動の方ではワーファリンという血液をさらさらにする薬剤を内服していないと脳梗塞の発症率は4.8%/年、ワーファリンを内服すると0.9%/年に改善されるということをお伝えしました。


今回はセカンドオピニオンのリクエストがありましたので、心房細動を防ぐことに意義があるのか、またその方法は?という日本人を対象とした研究です。

Optimal treatment strategy for patients with paroxysmal atrial fibrillation: J-RHYTHM Study.
Circ J. 2009;73:242
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★☆☆)

一時的な心房細動の兆候がある方で、抗不整脈剤でなんとしても慢性心房細動に移行するのを防ぐ治療を受けた419人と、そういう予防はしないで慢性心房細動のままワーファリンを適切に内服する治療を受けた404人について、死亡・心不全・脳梗塞・出血・精神的苦痛・動悸などの肉体的苦痛の発症率につき1,200日間観察され比較されました。

結果は、両群で死亡・心不全・脳梗塞・出血の発症率には差は認められませんでしたが、精神的苦痛・動悸などの肉体的苦痛の発症率は慢性心房細動の群で多くなりました。

ところでこの研究では、なんとしても慢性心房細動に移行するのを防ぐ抗不整脈剤に関して不整脈の専門家がそれぞれの裁量で選択してよいことになっていました。不整脈の専門家がどんな薬剤を選択したかというと、

サンリズム 32.5%
シベノール 20.7%
プロノン 11.7%
リスモダン 8.8%
タンボコール 8.1%
ピメノール 1.0%
ベプリコール 6.7%
アンカロン 0.5%

です。アスペノンは心機能が軽度低下している場合に使われることもあるようですが、多くの専門家が選択しているのは、サンリズム、シベノールのようです。

また、抗不整脈剤はどれが一番効果的かという目安はあまりなく、ある人には効かなかった薬剤が別の人には凄く効くということがありますので、いろいろと試して効果のある薬剤を探す(トライ アンド エラー)ということが行われます。

心房細動は日中活動中に多く発症する交感神経緊張型と、夜間安静時に多く発症する迷走神経緊張型に分けることもできます。交感神経緊張型にはβブロッカーやプロノン、迷走神経緊張型にはシベノールやリスモダンが比較的効果があります。


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バイオフィックス事件

2010年08月07日 | 循環器
以前、ゼチーアが動脈硬化の進行に対して(もちろん動脈硬化性の疾患による死亡や発症に対しても)有用性が認められなかった研究についてお伝えしました。この研究の経緯をもう少し詳しくお伝えしたいと思います。

その前に、バイオフィックス事件のことを知っておく必要があります。バイオフィックスという薬は簡単にいうと血液をさらさらにする薬で、胃潰瘍などの副作用がないため心筋梗塞や脳梗塞などの疾患に有用性が高いと期待されていました。メルクという製薬会社が欧米で販売していました。しかし実際に販売されると、バイオフィックスの内服で死亡率が4倍になってしまいました。

ここでの問題は、死亡率が4倍になったことやその危険性が発売後に判明したことではなく、メルクはそのような危険性をある臨床研究の結果から知っていたにもかかわらず隠蔽していたことと、隠蔽は意図的に行われており、その事実が発覚したのはメルク社の不注意からにすぎなかった、つまり不注意さえなければこの事実は永久に隠蔽され続けたということです。

2004年9月にメルクはバイオフィックスの発売を中止しましたが、危険性が社内で明るみになってすでに3年経過していました。バイオフィックスの被害者は15~20万人と公表されました。

さて、ゼチーアはこのメルク社とシェリング・プラウ社が販売しています。以前お伝えした研究の期間は2年間で、2006年4月には終了して結果の報告は2006年9月の予定でした。ところが2007年12月になってもなんの報告もなく、アメリカの議員たちはメルク社とシェリング・プラウ社になにか困った事態が発生しているのではないかと疑い始めました。

この時、製薬会社の善意を信じて何100万人もの人々が、動脈と心臓を守ってくれることを期待してゼチーアを内服していたのです。アメリカの連邦行政機関はゼチーアの販売を許可したのは、唯一、その悪玉コレステロール低下作用だけを根拠とするものでした。発症や死亡に対する効果はこの時まだ証明されていませんでした。

メディアやアメリカ食品医薬品局は「この研究でゼチーアの有効性は認められずなんとか隠蔽しようとしているのではないか」と疑い始めました。かつてのバイオフィックス事件を思い出したのです。

2007年12月、アメリカの下院議会委員会は、この研究結果にメルク社とシェリング・プラウ社が不利になる事態があったのではないかと疑い、結果の公示を求めましたが、両社は「技術的な問題のため研究はまだ終了していない。従って結果を得られる段階に至っていない」と主張しました。しかし、下院議会委員会はいかなる妥協にも応じず、結果発表の最終期限を2007年12月25日としました。提出されなければ強制的に研究に関する文書を調べるような事態になると通告しました。

不思議なことに両社はあれほど最終結果に至っていないと言っていたのに、2008年1月14日プレスリリースという形で結果を公表しました。つまり、結果はすでに得られていたのです。

結果は以前お伝えした通りです。


メルク社の共同研究者であるデューク大学のカリフ教授は間接的に「悪玉コレステロール値を下げるのだから動脈硬化に対する効果はなくても構わない」という馬鹿げたコメントを出しました。それらに対して一般メディアの評論家たちはメルク社のシェリング・プラウ社の虚偽や不誠実を非難しました。


以上の経過から考えられる問題点です。

(1) 臨床的有用性がまだ証明されていないのに悪玉コレステロールを下げたというだけでなぜゼチーアは販売が承認されたのか?
(2) ゼチーアがスタチンに加えて悪玉コレステロールを20%も低下させたが、その臨床的有用性が示されなかったのに、「悪玉コレステロールは低ければ低い方がいい」と主張している医者たちは、なぜその考え方を再検討しようとしないのか?


アメリカ食品医薬品局も同様の見解を変えていません


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アーチスト(心不全・高血圧症治療薬)は2.5mgでも10mgでも効果は同じ

2009年11月18日 | 循環器
米国心臓病学会は3日目を迎えました。

かなり以前に、ベータブロッカーと呼ばれる心不全・高血圧症治療薬が死亡率を減少させることをお伝えしました。
↓参考になさって下さい。
ベータブロッカーの内服は虚血性心不全の予後を改善する

米国心臓病学会議のブレイキング・ニュース、その2をお伝えします。

アーチストと呼ばれる薬剤は心不全に有効なのですが、どれくらいの量が日本人に適度なのかが、これまでわかっていませんでした。むしろ10mgぐらいまでは、できるだけ多い方がいいという意見もありました。

この研究では、心臓の機能が正常の半分以下に低下した日本人を、アーチストを1日2.5mg内服してもらう群と、5mg内服してもらう群、10mg内服してもらう群に分け、その後1年間の心不全の改善度が調査されました。

その結果、どの群でも心不全の改善度は同じでした。つまり、アーチストを心不全の治療に用いるなら1日に10mg内服しなくても2.5mgでいいということです。しかし、2.5mgの群では、5mgの群や10mgの群に比較して、心不全の改善度は同じですが、動悸などの訴えが多かったので、症状がある患者には5mgがちょうどいいのかもしれません。

アーチストを発売している製薬会社の人たちはがっかりしたことでしょう。
ちなみに、アーチストの1.25mgは1錠19円、2.5mgは32円、10mgは82円です。この薬価と比べると、昨日お伝えしたゼチーアがいかに高価かがおわかりになると思います。



さて、もうそろそろ帰り支度をしなければいけません。日本での仕事が溜まっていて、4日目は出席せずに帰国します。今は午前0時、明日は4時起きです。

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悪玉コレステロール低下剤ゼチーアは効果なし

2009年11月17日 | 循環器
以前、大きな学会にはブレイキング・ニュースというセッションがあって、重要な研究結果が世界初で発信されることをお伝えしました。


今日は、そのブレイキング・ニュースで、以前お伝えしたゼチーアを、スタチンという悪玉コレステロール低下剤に加えることで効果があるかという研究結果が発表されました。

対象は208人で、スタチンにゼチーアを加える群と、ナイアシンという善玉コレステロールを上げる薬剤を加える群に分けられました。

結果は今日付け(アメリカ時間)のNew England journal of Medicineに発表されていますが、心筋梗塞などの発症率と関係がある頸動脈の厚みの変化からみて、ゼチーアは全く効果がありませんでした。

↓詳しくはこちらを
http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMoa0907569?resourcetype=HWCIT

ゼチーアの会社から利益供与がある教授は、「頸動脈の厚みが改善しなかったぐらいで、臨床的効果がないといえるのか」と、これまで多くの研究で頸動脈の厚みは心筋梗塞などの発症率と関係があると明らかになっていることを無視して、コメントをしていました。こういう教授は、頸動脈の厚みに効果があった場合には、ゼチーアは臨床的に効果があるとコメントしたはずです。全くアホなコメントです。こんなコメントをされて、発表者のTaylor医師はムッとしていました。

発表後、2,000人ぐらいの聴衆の3分の1ぐらいの人が一斉に立ち上がり、会場を後にしました。この発表を目当てに聞いている人たちと株屋さんの人たちです。ゼチーアを販売しているバイエルとシェリング・プラウの株は売りです。

明日のニューヨーク相場では、これらの株は下がります。

ゼチーアは1粒240円のラムネです

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