相澤三郎中佐
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相澤中佐の片影
(三 ) 中佐最近の書信
十一月一日 ( 道子殿宛 )
道子や大變元氣になつたそーだが、かぜをひかないよーにしなさい。
正彦は大變よくお母さんの云ふことを聞くそーだねー。
踏切の百姓やさんに毎日ただいまをするそーだが、大層よいことだ。
いつまでもやりなさい。
靜子はのどが惡いから學校から歸つたら何時でも塩水でうがいなさい。
又宣子はお母さんを助けてやつて下さい。
ねーやは姿勢をよくしなさい。
胸は必ずなほる。
此の歌は去る十七日の述懐でした。
さらでだに立ち去りがたき神の國
雲の上石の上なる駒草を想ふ
皆しつかり元氣を出してよいことをしようと心がけて行くやうになさい。
尊い人になりなさい。
尊い人とは偉い人と云ふのではありません。
正しい人、尊い人になる様になさい。
私は大層元氣ですから御安心下さい。
さよーなら。
父より
道子殿
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