嶋津隆文オフィシャルブログ

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アンジェイ・ワイダ監督『カティンの森』に慄然

2011年06月08日 | Weblog

写真:ポーランド映画「カティンの森」(2007年)の一場面

初夏の日差しがまぶしい6月です。しかしここ数日、小さいながら不愉快なことが重なり、その気分直しにと昨日は終日部屋の閉じこもり、映画を見て過ごしました。「マザーウォーター」、「ゴールデン・ランバー」そして「カティンの森」の3本です。3本に脈絡などありません。

「マザーウォーター」は鴨川を舞台に静かに生きる人間たちを描いた癒しの映画。小林聡美、小泉今日子、もたいまさこといった面々が登場し、これがいい。セリフも少なく、淡々と描かれる日常がいつのまにか極めて非日常的な世界に化していることに気づかされます。

「ゴールデンスランバー」は仙台在住の作家井坂幸太郎が原作。首相暗殺の犯人に仕立て上げられた男(堺雅人)の逃走劇です。派手なアクションで十分楽しめるものの、肝心の権力犯罪の説明が極めて不足。従って映画の出来としては不満。井坂の前作「重力ピエロ」や「アヒルと鴨のコインロッカー」の方が確実に面白いというものです。

そして「カティンの森」。劇場で見損なっていただけに何としても見たかった作品です。ポーランドという国家を抹消するために、1万5千人におよぶ将校たちを一人ずつピストルで撃ち殺し、森に埋めたというソ連による1940年の惨殺を描いたものです。しかもその史実をナチスドイツの蛮行だと戦後も一貫して喧伝し続けた、もう一つのソ連の犯罪性が身も凍るような映像で描かれます。

現代日本の浅薄なヒューマニズムを嗤うかのようなアンジェイ・ワイダ監督の作品であり、人間と社会のもつ闇の深さを思い切り知らされ、慄然とするばかりでした。私の映画史の中で、もっともおぞましく、またもっとも衝撃を受けた苛烈な映画と言ってよいものです。

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