写真:「足利学校の正門」
東京の周辺にあり乍らなかなか訪問する機会がなく、一度は行ってみたいと思っていた足利学校に足を伸ばしました。その日曜は春の日差しが暖かく、ゆったりと歴史に触れられた一日でした。
足利市は「東の小京都」といわれ、落ち着いた面影をもつ地です。足利学校は鎌倉初期の創設で、日本最古の総合大学といわれます。フランシスコ・ザビエルは「日本国中、最も大にして最も有名な坂東の大学」と記しており、江戸初期には学生数が3000人にも上ったようです。今日の東大のような存在でしょうか。
ヨーロッパ最古の大学といわれるイタリア・ボローニア大学の創設が、たしか12世紀後半といいますから、足利学校はちょうどこのボローニア大学とほぼ前後して設けられたということになります。わが国の知的欲求の高さが自ずと知れるというものです。
そんなことを思い浮かべながら快く帰宅した深夜、町田市長選の結果が判明しました。友人の石坂丈一さんの再選が決まり、おもわずヤッタと声を挙げたものでした。自公の推薦を受け、苦戦が予想されていたにもかかわらず、民主推薦の候補に圧勝でした。長崎知事選も同様でした。
春の夜は良いことがあるものです。
民主の敗北は、直接的には「政治とカネ」といわれます。しかし私には、政権をとって有頂天になっている未熟な傲慢さが、こういう結果を招いているのではないかと思えてなりません。財源無視のマニュフェスト遊びとか、自治体の苦悩を逆なでする基地選びとか、権力を持っていることの無自覚さといった、その底の浅さに多くの人が気づき始めたということです。
こう考えると、足利学校の落ち着いた風景や、友人の市長選勝利を味わった喜びもつかの間のことで、新政権の見え透いた取り繕いの姿が、ひどく苦々しく感ぜられ始めたというものです。
春の夜は、いつまでも良い気分を味わわせてはくれないようです。