佐藤亜紀さん、『ミノタウロス』

 『ミノタウロス』、佐藤亜紀を読みました。

 “人間を人間の格好のままにさせておくものが何か、ぼくは時々考えることがあった。”
 “それをひとつずつ剥ぎ取られ、最後のひとつを自分で引き剥がした後も、ぼくは人間のふりをして立っていた。” 269頁

 いっきに読みました。
 第一次世界大戦から内戦時の、ロシア・ウクライナが物語の舞台となっています。内戦に侵された大地、無法地帯と化した町や村々を駆け抜けていくミノタウロスの子ら。感傷を撥ねつける強靭な文体が描き出すのは、命を投げ出したごろつきどもの賭場であり、倫理が全く無力化された弱肉強食のケダモノたちの荒野である…。
 心ゆくまで圧倒されました。これほどまでにきつい小説には、なかなか出会えません。
 (2007.5.16)

コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
私も一気読みしました (ぷりぷりざえもん)
2007-05-17 17:51:39
確かに痛みを伴う小説でしたね。
正直言って、私にとっては辛い作品でした。

確かに素晴らしいんだけれど、人には安易に勧められない。

申し遅れました。佐藤亜紀ファンサイト管理人のぷりぷりざえもんです。

よろしかったらサイトの方からrinakko_mayさんのこの書評にリンクさせていただきたいんですが、よろしいでしょうか?
 
 
 
Unknown (show)
2007-05-21 00:57:41
うむむ、これは惹かれますねえ。読んでみたい。
 
 
 
>ぷりぷりざえもんさん (りなっこ)
2007-05-21 18:46:42
初めまして。 リンクの件、お任せします。

>人には安易に勧められない

確かにそうですね。 私はついつい勧めたくなりますけれども。
ファンサイトがあったのですね。 時々覗かせていただきます。

 
 
 
>showさん (りなっこ)
2007-05-21 18:48:44
短い作品なので、サクッと読めますよ。 でも、内容が全然サクサクじゃないところがミソです。
縁がありましたら、是非。
 
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