4月15日

 毬矢まりえ/森山恵『レディ・ムラサキのティーパーティ らせん訳「源氏物語」』を読んだ。
 
 とても素晴らしかった。 まず、〈らせん訳〉とは何ぞや…。それは、A・ウェイリーが成した『源氏物語』の英語版から日本語に訳す〈戻し訳〉が、多層的時間空間を巻き込んでらせん状になる(直線的な翻訳ではない)ことから名づけられた。
 例えば、光源氏の“光”がシャイニングという単語に置き換わったとき、光源氏のこの世を越えた神々しさが、いつか月に帰るかぐや姫と同様なものとして伝わってくる(だから彼の色好みはゼウスのそれに近い、とか)。
 源氏物語の重層性(和歌の本歌取りや歴史書への言及など)に共鳴させるように、A・ウェイリー版ではシェイクスピア詩の引用や聖書的語彙が使われている、という話。
 全12章のうちの2章が末摘花(サフラン姫)に割かれているのにも感嘆したし、内容も頗る興味深かった(末摘花はミス・ハヴィシャムで、眠りの森の美女で…)。
 他にもプルースト『失われた時を求めて』との時空を超えた響き合い…などなど。著者姉妹の話に胸を打たれ、面白くてわくわくする一冊だった。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )