3月に読んだ本

2014年3月の読書メーター
読んだ本の数:22冊
読んだページ数:8549ページ

スキタイの騎士スキタイの騎士の感想
素晴らしい読み応え。チェコにどぷり…と、心ゆくまで浸ってため息ばかり。偉大な帝国の光芒も、その先の小昏い憂愁も、誇らかに自国の歴史を語ることの尊さが胸をうつ。カール大帝に仕えたデンマーク王が、数奇な運命をたどる「オイール王の物語」に始まり、十字軍遠征、カレル四世とその妃、プラハの幻想と恋物語、ブルジョア革命…などなど。時代が下るように作品が並べられ、表題作に至ると、チェコの学者の姿に作者自身が重なる。ある作家について、彼女に恋をした青年の視点から綴った「見知らぬ者の日記」は、流れの中では少し異色で好きな話
読了日:3月31日 著者:フランティシェククプカ
冬物語―シェイクスピア全集〈18〉 (ちくま文庫)冬物語―シェイクスピア全集〈18〉 (ちくま文庫)の感想
『深読みシェイクスピア』を先に読んだので、こちらは少し間を開けて読んでみた。なるほどおおお…と凄く面白かった。
読了日:3月30日 著者:W.シェイクスピア
鏡の国のアリス鏡の国のアリスの感想
再読。
読了日:3月28日 著者:ヤン・シュヴァンクマイエル画,ルイス・キャロル著
御命授天纏佐左目谷行御命授天纏佐左目谷行の感想
んもう、手に取った瞬間から魅了されっぱなし…の素敵な本。隅々まで堪能した。大好きな表題作の語り手は、猫の御大尽夜見闇君の屋敷に食客として棲まう、“ぶらふら者”。さて、宿無しの憂き身を救われ安穏をぬくぬくのびのび楽しんでいたある日、彼はその恩人夜見闇君子から、あるお使いを承ることに。それは…と、摩訶不思議道中が始まるのであります(くくっ)。他2篇、「行方」(これは再読)と「かげろう草紙」も同様に、語り口の趣がとてもよかった。挿画も嬉しく眺めつつ。そして、カバーを外して広げて見たらこれまた楽しいこと楽しいこと
読了日:3月27日 著者:日和聡子,ヒグチユウコ
バナナ剥きには最適の日々 (ハヤカワ文庫JA)バナナ剥きには最適の日々 (ハヤカワ文庫JA)
読了日:3月26日 著者:円城塔
中井英夫全集〈4〉蒼白者の行進 (創元ライブラリ)中井英夫全集〈4〉蒼白者の行進 (創元ライブラリ)の感想
どれも面白く読んだ中、好きなのは表題作。
読了日:3月25日 著者:中井英夫
ファイナルガールファイナルガールの感想
楽しみにしていた短篇集。一つまた一つと大切に読んだ。平穏無事を装っていた現実の薄っぺらな皮が、不意にぺろりと剥げる瞬間。むき出しにされた不条理への絶望に、懐かしい既視感が胸に溢れた「プファイフェンベルガー」。とりわけ好きな「戦争」や表題作では、脆く頼りなく頽れていく…断絶された世界を突きつけられながら、それでも生き延びなければならない主人公達の姿に、熱い塊がこみ上げた。現実は物語ではない、物語のようにはいかない。だからプファイフェンベルガーの役どころやサイモンの方が、くっきりと確かな存在に見えてしまうのか
読了日:3月24日 著者:藤野可織
忘られぬ死 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)忘られぬ死 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
読了日:3月21日 著者:アガサ・クリスティー
TTT: トラのトリオのトラウマトロジー (セルバンテス賞コレクション)TTT: トラのトリオのトラウマトロジー (セルバンテス賞コレクション)の感想
素晴らしい読み応え。キューバ濃ゆい! 革命前の歓楽街へ捧げられたこの作品、当時の歌手や演奏者は出てくるわ、“キューバ語”の言葉遊びや語呂合わせは過剰だわで、圧倒され凄く楽しかった。言語実験はかなりの意訳とのこと、それがまた妙味。「新参者たち」の章は多声的に始まるが、次の章からカメラマンのコダック、エリボー、俳優アルセニオ、作家シルベストレ…といった面々が交互に語り手となる。そして忘れられない存在、ブストロフェドン! 軽妙な対話が続きつつも、どこか行き詰まり倦んだ雰囲気を感じさせる中、バッハ騒ぎは幕を閉じる
読了日:3月20日 著者:ギジェルモ・カブレラ・インファンテ
動く指 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)動く指 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
読了日:3月17日 著者:アガサ・クリスティー
リテラリーゴシック・イン・ジャパン: 文学的ゴシック作品選 (ちくま文庫)リテラリーゴシック・イン・ジャパン: 文学的ゴシック作品選 (ちくま文庫)の感想
少しずつねぶねぶと読んでいた。大変に満足だ。こんなアンソロジーならばいくらでも読み続けたい…などと思いつつ、また自分自身の渉猟へと戻るのが楽しみになる。Ⅰ 黎明~Ⅳ 幻想文学の領土から の流れでは既読の作品がやや多めで、このような括りでの再読に興趣がわくというもの。Ⅴ 文学的ゴシックの現在 へ移ると、未読だった作家の作品が幾つか取り上げられているので、こちらもよい機会になった。初読でとても好きだったのが、竹内健の「紫色の丘」。本は入手困難なのね。くう。
読了日:3月16日 著者:
オーブリー・ビアズリーオーブリー・ビアズリーの感想
観応えも読み応えも素晴らしい。あまりにも短い天才の生涯を、作品とともにたどる画集。作品数も壮観である。一つ一つ眺めては解説に眼を通し、それらの美しさや淫らさが如何に突き抜けたものであるかを知らされ、あらためて感嘆した。まず作品を堪能したのは言うまでもないが、ビアズリーの経歴に始まり、その時代背景や評価のされ方…などなどを読むのも凄く面白かった。後の芸術家たちに多大な影響を及ぼしたことも(恐るべきカリスマの遺産)。いたずらの天才ぶりを発揮した反撃の戯画をまとめた頁では、思わずにやり(ワイルドの弛んだ涙袋…)
読了日:3月15日 著者:
ゴーレム (白水Uブックス 190)ゴーレム (白水Uブックス 190)の感想
小昏いプラハのユダヤ人街、甦るゴーレム伝説…とな。そうきたらもう好きに決まってる!と、のめりこみめりこみ頁を繰る繰る。記憶を失くした語り手が、悪夢めき謎めく迷路みたような話の渦の核心へ、ふらふらと引き寄せられ巻き込まれる展開から目が離せなかった。呪詛にまみれた老人の復讐計画、攻防する学生の暗闘、殺人事件、ヘルマフロディートの幻影、タロックの指し示す“吊るされた男”、奇跡を語る美少女、三角関係…。ずぶずぶ浸かり堪能するばかりだったことよ。先に「西の窓の天使」を読んだ所為か、神秘思想に触れる辺りも興味深かった
読了日:3月14日 著者:グスタフマイリンク
書物愛 [海外篇] (創元ライブラリ)書物愛 [海外篇] (創元ライブラリ)の感想
やはり…期待した通りというか、それ以上にか。書痴にしても愛書家にしても、国内篇とは深度の桁が違う。流石だ。例えば「愛書狂」の主人公、ほとんど文盲に近い古本屋のおやじが、書物のことだけで頭をいっぱいにし、書物のみを愛し、ずぶずぶと己の蔵書に溺れている姿の、異様なことと言ったらもう…(ぞわっ)。“本を読みたい”と、“書を蒐集したい”、“何が何でも所有して愛でたい”…はまた別の話なわけで、なかなかに難儀なことよ。「書痴メンデル」が、思いの外に切ない話で味わい深かった。後、「シジスモンの遺産」が嗤って大好き。ふ…
読了日:3月13日 著者:
最後の恋人 (残雪コレクション)最後の恋人 (残雪コレクション)の感想
素晴らしい読み応え。残雪を読むのは2冊目。これはまた、何たる気迫に満ちた小説か。差し出された世界の眺めといい、どこへ連れて行かれるのか全く予想のつかない展開といい、比類ない特異さにただもう圧倒された。何だろう…この、既視感のなさ。散りばめられた符牒に気を取られ、足元がふわりと覚束なくなりつつ…頁は繰る。読み進まずにはいられなかった。勝手に回る万華鏡を覗いているような按配でもあったけれど、この印象は読み返すことでどんどん変わっていくはず。もっと見えてくるものがあって…。「『最後の恋人』について」の内容も凄い
読了日:3月11日 著者:残雪
愛国殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)愛国殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
読了日:3月10日 著者:アガサ・クリスティー
書物愛 [日本篇] (創元ライブラリ)書物愛 [日本篇] (創元ライブラリ)の感想
もう、表題からして憎い。憎いよ。表紙のオブジェも美しくて、くうう…。そも題材が題材であるからして、派手やかな話なんぞは期待していなかったが、まさにいぶし銀の味わいのじんわりくる短篇が揃っていた。筋金入りの本好きだとか、書に憑かれた人々のディープな話ばかりなのかと思いきや、そうでもなく、目先を変えてきてるのかな…という印象の作品もある。本をめぐりつつも、趣向の偏っていないところがよかった。好みで言えば、「楽しい厄日」が一等お気に入り。こういうもんやりした話は堪らないなぁ…と。野呂邦暢「本盗人」は再読。
読了日:3月7日 著者:
歌手たちはどこから (1979年) (ラテンアメリカ文学叢書〈10〉)歌手たちはどこから (1979年) (ラテンアメリカ文学叢書〈10〉)の感想
キューバ濃ゆい! なるほど実験的、なるほど祝祭…などと唸りつつ、読み進んでいったら凄く面白かった。行き過ぎた感じの賑々しさ。言葉もイメージもめくるめきまくって、幾らなんでも自由奔放過ぎる。虚も実も綯い交ぜみたいな話で筋を追い難かったけれど、翻弄されてご満悦なのだから世話がない。役柄も姿もどんどん変えていく二人のコーラスガール、〈蓮の花〉を恋う将軍、政治家モルタル、高級娼婦で一日だけ詩人ドローレス…といった人物たちが入り乱れる先に、キューバ文化とキリスト教の関わりの歴史までもが、メタファーたんもりで描かれる
読了日:3月6日 著者:S.サルドゥイ
ヴァーミリオン・サンズ (ハヤカワ文庫SF)ヴァーミリオン・サンズ (ハヤカワ文庫SF)の感想
好きなのよね、このシリーズ。てなわけで、やっと纏めて読めた。くうう、やっぱりいい…。例えば今回初めて読んだ「風にさよならをいおう」は、極端に感じやすい(!)活性織物によるドレスやらスーツ、ガウン…たちが狂乱に追い込まれて末枯れてしまう辺りの描写が、すこぶる面白くて印象深かった作品。そこからの話の内容もよかった。既読作の再読も楽しめたし、久しぶしのバラードを隅々まで堪能した。満足。
読了日:3月5日 著者:J.G.バラード
胸の火は消えず (創元推理文庫)胸の火は消えず (創元推理文庫)の感想
沁みる、沁み入る怪奇譚の11篇で、どの話もとても好きだ。女性ならではの鋭い眼差しに透徹し、怖くて皮肉で容赦のない展開が続く。丹念な心理描写に説得力があり、突きつけられるように切なくなってしまう話が多い。そんなところもひっくるめ、“死”のこちら側と向こう側とを如何に描いているか…という点に感嘆した。幽霊たちは優しい。心残りと哀しみを抱えて、ただ淋しいばかり。なのに、彼らを目にした(或いは気配を感じた)生者達は、どうしても恐れ慄いてしまう。まるで死者たちの姿に、己の内の闇を投影させずにはいられないかの如く…。
読了日:3月3日 著者:メイ・シンクレア
千一夜物語〈3〉 (ちくま文庫)千一夜物語〈3〉 (ちくま文庫)
読了日:3月2日 著者:
ドン・カズムッホ (光文社古典新訳文庫)ドン・カズムッホ (光文社古典新訳文庫)の感想
美しく成長した幼馴染との恋を守り、人生の絶頂へと上り詰める道のりも、その先の顛末も、ベント(ベンチーニョ。甘やかされた坊や…)一人の視点のみで語られる。辛いし、痛いし。
読了日:3月1日 著者:マシャード・ジ・アシス

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