2月に読んだ本

2013年2月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:4770ページ

孤児の物語 I (夜の庭園にて) (海外文学セレクション)孤児の物語 I (夜の庭園にて) (海外文学セレクション)感想
素晴らしい読み応え。途方もない世界を駆けめぐり、時には悪夢めく異様な眺めに目を疑った…ので、大好きだ。次から次へと語り手を変え、奥の奥の方へ、めくるめく新たな驚異に捕り込まれる心地。耽溺した。後書きにもあるが、創世神話から始まり各々のモチーフに至るまで、既視感のないことが、魅力でもあり凄まじいところでもある。突然始まるグロテスクな展開。何故そんな発想が…と唖然としつつ、魅入られた。“王子なんてものをあてにするんじゃない”と、魔女は言い放つ。女童から老婆、聖女に女海賊に女予言者…と、女たちが力強いのも印象的
読了日:2月27日 著者:キャサリン・M・ヴァレンテ
世界幻想文学大全3 幻想小説神髄 (ちくま文庫)世界幻想文学大全3 幻想小説神髄 (ちくま文庫)感想
再読も込みで、こちらも大満足。好きな作品ばかりだけれど、とりわけ読めて嬉しかったのは「黄金宝壺」や「ヴェラ」「バブルクンドの崩壊」。
読了日:2月24日 著者:
ペルシアの四つの物語ペルシアの四つの物語感想
ペルシア文学の雰囲気を、少しずつ摘まんで味わう感じ。『七王妃物語』はもっと読みたいなぁ。『王書』の続きも気になる。あと、ペルシア・ミニアチュアを楽しめるのがよかった。
読了日:2月22日 著者:
とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢 ---ジョイス・キャロル・オーツ傑作選とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢 ---ジョイス・キャロル・オーツ傑作選感想
後戻り出来ない場所に居竦まり、刺し止められる読み心地は格別だった。七つの悪夢に描き出された、激しい憎悪と狂気の渦。そしてそれらに覆い尽くされた何か…について考えだすと、底知れぬ闇を覗くよう。とりわけ中篇の表題作では、彼女にとって何故彼女でなければならなかったのか…という疑問の周囲をぐるぐるしていると、ドツボに嵌る。本当はジュードは、マリッサになりたかったのかも知れない(あの子の髪!)。絶望の淵で、己は真っ黒に染まりながら。「タマゴテングタケ」では、思わずポーを引っ張りだした。他、滅法面白かったのが「頭の穴
読了日:2月20日 著者:ジョイス・キャロル・オーツ
V.〈下〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)V.〈下〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)感想
いやはや面白かった! そこそこ構えてはいたものの、よもやここまで詰め込み過多とは思うめえ…。と言いつつ、わくわくとそれを楽しめてしまう。重みと軽みの双方を味わえる作風と言い、錯綜し合う線を繋いで見えてくる模様のスケールと言い、ただもう圧倒された。二つの大戦を跨ぐ歴史のうねりの中、“ただ居合わせているV.”の造形はとても興味深い(命なき物体を取り込むオブセッションに、ぞくり)。マルタという場の力にも惹きつけられた。プロフェイン側の物語の空騒ぎ。とりわけ忘れがたいのは、「モンダウゲンの物語」や恋するV.の章。
読了日:2月18日 著者:トマス ピンチョン
V.〈上〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)V.〈上〉 (Thomas Pynchon Complete Collection)
読了日:2月14日 著者:トマス ピンチョン
澁澤龍彦訳 幻想怪奇短篇集 (河出文庫)澁澤龍彦訳 幻想怪奇短篇集 (河出文庫)感想
兎に角、訳が素晴らしいので、それだけでもう満悦…となってしまう一冊だった。とりわけお気に入りは、「ギスモンド城の幽霊」と「緑色の怪物」。再読のアンリ・トロワイヤの作品は、どれも滑稽味の塩梅が絶妙でとても面白かった。
読了日:2月12日 著者:
水の音楽―オンディーヌとメリザンド水の音楽―オンディーヌとメリザンド感想
主題が好みのど真ん中…という感じで、興味深い内容がみっちりな一冊。この本を読む時ばかりはいそいそと音楽をかけ、心ゆくまで堪能した。創作された水の精の、キリスト教化されていく流れ(目的としての永遠の魂)。水の精の誘惑の方法について、その比較から、宿命の女をめぐる考察へ。宿命の女が水の精である場合のねじれ現象には、思わず唸った。そして、メリザンドの正体を追ってたどり着いた答えに、ただただ溜め息がこぼれる(真に恐ろしいのは…)。ショパンの『バラード』やラファエロ前派、『さかしま』『未来のイヴ』の件もあって大満足
読了日:2月12日 著者:青柳 いづみこ
青い花 (レーモン・クノー・コレクション)青い花 (レーモン・クノー・コレクション)感想
苦手かも知れない…と遠巻きにしていた作家だけれど、これは面白楽しかったよう。
読了日:2月8日 著者:レーモン クノー
失われた時を求めて(3)――花咲く乙女たちのかげにI (岩波文庫)失われた時を求めて(3)――花咲く乙女たちのかげにI (岩波文庫)感想
空想に過ぎないと信じつつ憧れ、願い続けたことも、一たび叶ってしまえばその場所を夢みていた頃の気持ちには決して戻れない…。とか、真実ではあるものの水をさすような思惟が差し挟まれると、むう…と唸ってしばし立ち尽くす。恋愛の心理一つとっても微に入り細を穿つと言うか、そこまで書きますか…と思う箇所がこれでもかとあり、そこが妙味だった。それにしても、“私”の目に映るスワン夫人の美しいことと言ったら…。衣装の描写も悉く素晴らしく、幾度となく溜め息がこぼれた。スワン夫人の外出着を選ばせてもらう件は、先行きが見えるよう…
読了日:2月7日 著者:プルースト
対訳 ペレアスとメリザンド (岩波文庫)対訳 ペレアスとメリザンド (岩波文庫)
読了日:2月5日 著者:M.メーテルランク
昔には帰れない (ハヤカワ文庫SF)昔には帰れない (ハヤカワ文庫SF)感想
ふふふ、面白楽しかった! いささか捻りが効き過ぎ…と思いつつ、それがまた堪らない読み心地。とりわけ好きだったのは、表題作と、「廃品置き場の裏面史」、「行間からはみだすものを読め」、「1873年のテレビドラマ」。どちらかと言えば第二部が好みだったけれど、第一部の小品の天邪鬼な着地はどれも凄く憎かった。
読了日:2月4日 著者:R.A. ラファティ
黒い美術館―マンディアルグ短編集 (白水Uブックス)黒い美術館―マンディアルグ短編集 (白水Uブックス)感想
とても好きだったのは、「仔羊の血」。両親も含めて誰ひとり愛したことがない、14歳のマルスリーヌの物語である。彼女にとって唯一の例外が飼っている大きな兎で、肌と毛皮が触れ合う感覚を楽しむ遊びが日課だったが…。思いもよらない展開が待ち受けていて総毛立った。背徳に慄きつつも、野蛮な残酷美を賞する甘やかな後ろめたさ。稚い少女の流す血と性の匂いと、死を待たされる獣たちの麝香のような匂いに、噎せ返りそうになった。マルスリーヌの逆襲に目を瞠る。
読了日:2月1日 著者:アンドレ・ピエール・ド マンディアルグ

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