12月に読んだ本

12月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:3489ページ

▼読んだ本
雪〔新訳版〕 (上) (ハヤカワepi文庫)雪〔新訳版〕 (上) (ハヤカワepi文庫)
読了日:12月29日 著者:オルハン パムク
大奥 (第1巻) (JETS COMICS (4301))大奥 (第1巻) (JETS COMICS (4301))
読了日:12月29日 著者:よしなが ふみ
ドン・リゴベルトの手帖 (中公文庫)ドン・リゴベルトの手帖 (中公文庫)
ふふふ、こちらも素晴らしく面白かった。幻想も官能も更に磨きがかかっており、えも言われぬ酩酊感を堪能した。エロスと想像の翼の閃き! とりわけこちらでは、ドン・リゴベルトの活躍(?)が愛おしい。類まれな偏愛症といい、儀式と空想の世界といい、ルクレシアを恋う狂おしさといい。フォンチートのエゴン・シーレへの傾倒ぶりと、画家の人となりや絵画をめぐる考証にも引き込まれた。そして麗しのルクレシアは、艶やかな七変化。既にあることが起きてしまった後の話でありながら、最後の最後まで息を吐かせない展開なのには、ほとほと舌を巻く
読了日:12月26日 著者:マリオ・バルガス=リョサ
夜な夜な天使は舞い降りる (はじめて出逢う世界のおはなし チェコ編)夜な夜な天使は舞い降りる (はじめて出逢う世界のおはなし チェコ編)
チェコに惹かれて手にとった。プラハのとあるバロック様式の教会にて、夜な夜な集まっては、ミサ用ワインの在庫を失敬する守護天使たち。彼らのお喋りの内容は、各々が見守る人々のこと…という設定は微笑ましいものの、いささかの物足りなさは否めなかった。ちょっと重たい本の後だったので、それはよかったかも知れない。目に見えない天使と、守られているあるじとの不思議な結び付き。そんな中で好きだったのは、「あるじを裏切った天使」「シャム双生児の物語」「幸運の子ども」「天使の味」。訳者あとがきを読み、他の作品を読んでみたくなった
読了日:12月23日 著者:パヴェル ブリッチ
終わりの感覚 (新潮クレスト・ブックス)終わりの感覚 (新潮クレスト・ブックス)
とても素晴らしかった。記憶と時間とは、どうにもならないことにおいて最たるもの。記憶を歪めるのは果たして罪なのか、本当のことを知らぬままにしておくことは…?と、途中でしばし立ち尽くす。そして、命ある限りは何処までもつきまとう痛みについて、その痛みと供に歩み続けるしかない人生について、静かに思いをめぐらせた。長い物語ではないが、無音の場所に身を沈めていくような読み応えがある。最後の最後に明るみにされた真相の重みに対峙し、あらためてタイトルの意味を考えていると、遣る瀬無い悲哀が胸に迫る。でも、読んでよかった…
読了日:12月21日 著者:ジュリアン バーンズ
十蘭ビブリオマーヌ (河出文庫)十蘭ビブリオマーヌ (河出文庫)
満喫した。とりわけ好きだったのは、「レカミエー夫人」と「妖婦アリス芸談」、歴史ものでは「凋落の皇女の覚書」。「あめりか物語」は、苦い読後感が疼く。からりとして粋な話、それでいてふるっている話の方が、どちらかと言えば私は印象に残り易いようだ。
読了日:12月21日 著者:久生 十蘭
ピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズピース・オブ・ケーキとトゥワイス・トールド・テールズ
久方ぶりの金井さん。素晴らしかった。過ぎし日々の記憶が寄り集まり、褪色して久しいモザイク模様を成す。次々に差し出される断片を、上手く継ぎ合わせるのは容易ではないが、敢えてそれを読む楽しさが全篇に行き渡っていた。思いがけない繋がりを見せては押し広げられていく、独特な語り。何処へ流れ着くとも知れず運ばれていく感覚が、忘れがたい。始めに魅了されたのは、子どもの頃の語り手の目に映る、母親や伯母と供に過ごす洋裁室の様子だった。“共布のクルミボタン”に“ピンタック”、“ギャザーとドレープ”、“ミモザ柄のローン”…。
読了日:12月19日 著者:金井 美恵子
失われた時を求めて(2)――スワン家のほうへII (岩波文庫)失われた時を求めて(2)――スワン家のほうへII (岩波文庫)
「スワンの恋」と「土地の名―名」の巻。昔これで挫折したのもむべなるかな…という内容で、今読めば凄く面白かった。容姿も性格も全く好みではない相手なのに、ずぶずぶと深入りしてしまう恋のからくり。己に都合よく作り上げた虚像しか見ようせず、まるで人が変わったように何処までも入れ込んでいくスワンの恋。多かれ少なかれ誰もがそうなるかも知れないけれど、ここまで誇張されていると、相当に天の邪鬼な恋物語だな…と思ったり。で、そこが面白い。主人公とスワンの類似点も、これからますます見えてくるのね(溜息)。
読了日:12月12日 著者:プルースト
フングス・マギクス―精選きのこ文学渉猟フングス・マギクス―精選きのこ文学渉猟
すこぶる面白かった。茸尽くしで大満足だ。そも“きのこ文学”とは何ぞ…というとば口から、森の奥深く踏み入るが如くに、茸という視点から文学を見つめ直す驚きのエッセイである。まず、文学者にインスピレーションを与える要素として、茸の中間性、魔術性、遇有性、多様性が挙げられ、各々の観点に沿って古今東西の文学が取り上げられる。『不思議の国のアリス』、イテリメン族の神話、『田紳有楽』…。あっ!と思わず声を上げたのは、ソローキンの『ロマン』。印象的だった場面に触れているので、言われてみれば…と、がくがく頷きまくったことよ
読了日:12月07日 著者:飯沢 耕太郎
世界が終わるわけではなく (海外文学セレクション)世界が終わるわけではなく (海外文学セレクション)
シュールでキュートで面白楽しかった! 思いがけない繋がりで、ゆるゆる結び合わされた12篇。散りばめられた神話のイメージが、世界を包み込む。曙の女神、月の女神、銀のサンダル…。まず1話目で、きゅっと掴まれた。蜂蜜売り場やラウンジでの、その変具合が妙に心惹く女友達の会話。とめどない2人の妄想と、大変なことになっていく町の状況とが、明後日の方を向いたまま進んでいくのが、堪らない読み心地だった。他、とりわけ好きなのは「テロメア」「予期せぬ旅」「猫の愛人」「時空の亀裂」「プレジャーランド」。締めくくりの余韻も大好き
読了日:12月06日 著者:ケイト・アトキンソン
ボウエン幻想短篇集ボウエン幻想短篇集
とても素晴らしかった。読むのに随分と時間がかかったが、何故かと問うまでもない。文章の一つ一つ、そこに置かれた言葉の一つ一つが、まるで硬水のように重たい喉越しだ。弾かれた水玉が、ゆっくりと黒い沁みになるように、描かれたイメージを心に浸透させるのに時間のかかる、そんな文章ばかりが待ち受けている。始めは読み辛く感じたけれど、讃嘆の思いに変わった。とりわけ好きだったのは、ある出来事をきっかけに夢遊病に悩まされていた新妻の話「林檎の木」と、15歳の少女が分水嶺のような夏の一日を過ごす「闇の中の一日」。きつい美しさ。
読了日:12月04日 著者:エリザベス・ボウエン
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