ケイト・モートン、『忘れられた花園』

 楽しみにしていた作品。『忘れられた花園』の感想を少しばかり。

 じわじわと胸に沁みてくる、素敵な読み応えだった。彼女たちがたどり着いた場所のことを、私もきっと忘れない。さらさらと流れる涙が頬を濡らすのが心地よくて、カタルシスの静かな波に身を浸しながら本を閉じたのだった。ほぅ……と。

 物語の始まりはロンドン。出航間際の船の甲板に並ぶ大樽の影に幼い少女が一人、隠れんぼをしているの…?と、とても印象的な場面なのだが、舞台はすぐにオーストラリアへと移る。オーストラリアとロンドン、そしてコーンウォールを舞台に、時代も異なる3人の女性たちの話が入れ違いに語られていくわけである。思いがけず聞かされた父親の告白から、自分が何者なのかわからなくなってしまう…という苦悩を抱え込んだネル、家族を失った心の傷から立ち直ることが出来ずにいるネルの孫のカサンドラ、そして祖母ネルが遺した一冊のお伽噺集の作家であるイライザ、この3人の物語が優しく響き合う。
 差し挟まれたイライザのお伽噺には独特な陰影があり、それもまた不思議な魅力になっていてひき込まれた。例えば「老婆の目玉」なんて、何ともそそられるタイトルではないか。妖精の絞首台にぶら下がる死者たちが出てくると言う「川の呪い」も、出来ることなら読んでみたかったなぁ…。

 一見ばらばらな物語たちがまるで互いを呼び合うようにだんだんと繋がり合っていく様が、とても素晴らしかった。過去があり今があってその先に未来があって、誰かが夢見ていた未来もいつかは過去になり、忘却の彼方へと押しやられるけれど…と、そんな当たり前な時間の連なりに、胸を揺さぶられた。そこに秘められた大切な思いがあり、希望があり愛があったからだ。
 誰かが憶えていようがいまいが、過去たちは今を支えている。そして遥かな未来へ向けて、聴こえない声を送ろうとしている。たとえその繋がりが目には見えなくても、心を込めた祈りや願いが本当に途絶えてしまう…などということは決してないのではないだろうか。…と、そう信じたくなる物語だった。
 彼女たちがたどり着いた場所のことを、私もきっと忘れない。こぼれ落ちる葉洩れ日に包まれて、妖精の女王然とした美しいイライザが林檎の木の下に座っている…そんな、いみじくも“世界中の虹が生まれる場所”と誰かが呼んだ、魔法の庭のことも。
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2月22日(火)のつぶやき

07:20 from web
おはようございます。こーしー3杯目なう。これで目が覚めるってわけでもないのにごきゅごきゅ。
08:35 from web
パンダを見て可愛いと思う感覚が自分にないことに気付いた。むしろ怖いって言うか、見れば見るほど変てこ過ぎるって言うか…。うぬーん。
09:17 from web (Re: @seicom
@seicom パンダ、神戸にもいたんですか?知らなかった…。うーん、本物は可愛いのですかねぇ…。少々疑いの眼ちろり(笑)。子供のうちはころっとしてて可愛いと思うけれど、日本に来る時にはもうでかいし。
09:21 from web
不細工かわいい? 怖かわいいとか…?
09:26 from web
ふてぶてし可愛い…(まだ言ってる)。
16:37 from web
おお、カタルシスに身をまかせ…(なんちゃって)。泣いちゃったけれどいい気持ち。ケイト・モートンの『忘れられた花園』、よかったよ~。
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