藤枝静男、『田紳有楽|空気袋』

 めっきり春めいてきました。家の中にいても気もそぞろ。本読みばかりにかまけていられず、むずむずします。
 そんな訳で、つかず離れずの距離感で読んでいたのがこちらの一冊。

 『田紳有楽|空気頭』、藤枝静男を読みました。
 

〔 私は池の底に住む一個の志野筒形グイ呑みである。 〕 15頁

 読んでみたいと思ったきっかけは、笙野頼子さんの著作です。 
 そうか、私小説なのか…という心構えで読み進んで割とすぐに、「何だか様子がおかしいぞ?」と思い始め、決定的におかしい一文にぶつかって一気にテンションが押し上げられました。おかしいよこれ!私小説じゃないよ!と、すっかり愉快な気分になりつつ、それにしてもこの話どこかで読んだような…と、しばし考えてみましたら、川上弘美さんのエッセイに出てくる話でした。

 主人億山に、修行して真物に生まれかわれと池に放されている、ことごとく偽物の焼き物たちが語りだす。グイ呑みはC子に恋をし、イカモノの丹波焼きは円盤となって空を……飛ぶ?焼き物たちの暗闘(かなぁ?)に、億山対焼き物の丁々発止(かなぁ?)な騙し合い。読んでいてくらくらしてくるけれど、凄く面白かったです。後半、ますますとんでもない話になっていくので、頑張ってついていきました。

 「空気頭」、こ、これも…。今度こそ普通の私小説かと思いきや、いつの間にやらどんどん話が逸れていき(そもそも主軸があったのかどうかもわからないが)、糞臭まみれの異様な話になっていってしまったので、非常に読みにくかったというか何と言うか…。びっくら、する内容でした。唐突に終わってしまうのも、何だか怖かったよぅ。

 明日は朝が早いので、簡単ですがこの辺で。

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