イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

よいしょ よいしょ

2008-08-30 00:20:25 | CM

極楽加藤…と呼ぶのがそろそろ似合わなくなってきた“狂犬”“若頭”加藤浩次さん、“ウコンの力”CMずいぶん長くなりましたね。

もう78年前になるのか、商品名知ったときにはユースケサンタマリアさんがやっていたと思いますが、その後V6年長組になったり、一時は木の実ナナさんに黒谷友香さん、あと山川豊さんだっけ?演歌の人。NHKかどこかの廊下で行き会った順番に声かけて起用したとしか思えない顔ぶれもありました。いま考えれば、おっさんおばさんお肌の曲がり角と、健康食品コンシャスな層をうまいことカバーした絶妙のキャスティングでした。

最近よくオンエア見かける加藤さんのヴァージョン、ホームで終電目の前に酔い潰れちゃった先輩社員を加藤さんが「マツモトさん!!」っつって揺り起こすのがおもしろいですね。どうしても事務所の先輩の、高額納税者常連のアノ人を思い出しますもんね。CMの中の役者さんは坊主頭でも、ポール・スミスのスーツでもない普通の小メタボなおっちゃんですけど。

しかしね、高齢家族に随伴して昼間のTV見てると、この、健康食品業界のCMってのはえらいことになってますな。出稿量的にも、風圧的にもね。黙ってっと何飲まされるか、食わされるかわかったもんじゃないですよ。ローヤルゼリーに豆鼓(とうち?)エキス、黒酢ににんにく卵黄、ブルーベリーにグルコサミンになんたら青汁。

王侯貴族でも大富豪でもない、普通の人の、日常の食卓にも世界各地の食材があふれ、飽食の時代と言われて久しい日本ですが、ここへ来て未体験ゾーンに突入したような気がします。“狂食”“惑食”の時代とでも言うのでしょうか、輸入農産物の残留農薬や表示偽装などの問題も含めて、「何を食べたらカラダにいいのか、安全なのか誰もわからない」ため模索しまくり、それに付けこんで煽りまくりなのが現状のような気がします。

CMとして、もう行くところまで行っちゃってるなあと思うのは“皇潤(こうじゅん)”でしょうね。84歳で棒高跳びやってるとか、91歳で山岳スキーとか「撮影中に死んだらどうするんだ」と心配になるようなシロウトさんを次から次出してきたかと思うと、八千草薫さんや三國連太郎さんと“Around 80(エイティ)”の大物俳優さんがカメラ目線で「こうじゅん。」…ちょっと、昨年のひと頃平日昼によく流れていた宗教系啓発団体のCMを思い出す“ソフト洗脳”を隠さない空気感です。

慢性の膝関節炎でこの商品を通算5万円相当分購入して飲んだという高齢家族の高齢お友達の話。整形外科の先生に「ヒアルロン酸をいくらクチから飲んだって、膝になんか行きませんよ」「そんなに(CMで言うほど)効くなら、病院でウチら医者が出します」と一笑に付されたそうです。わはは。おっしゃる通り。

その高齢お友達はその病院の、他科の医師からダイエットを推奨され、1年間で8キロダウンに成功したらそれだけで膝痛は嘘のように軽快したとのこと。加齢してからの膝の痛み、軋み、水が溜まるたぐいの症状は、あらかた“体重オーバー”が主因、と指摘されたとも。

しかし、だからこそ出来合いの何かを買って“クチから飲むだけ”“ガマン、辛抱無し”のイージーさには、5万円投じても(その時点では)惜しくない洗脳的な魔力があるんですな。

再放送の『その灯は消さない』は第40話。

堀口家長女律子(吉野真弓さん)と川合(大橋吾郎さん)の結婚前提松本行き問題が一服するかしないかの間に、藤夫(柴俊夫さん)がひとときの現実逃避を求めた役員秘書・桂子(麻生真宮子さん)は事後ゆっくりと粘着ダーク化し、健一くん(芦田昌太郎さん)が一度だけデートした風俗嬢・晴美(有沢妃呂子さん)からは気を持たせる電話がかかってきて、その晴美には塀の中から出所間際の男(=“エイジ”)がいて、その件で客の貸金業者から取り立てを食っており、一方伊東で智子の長兄夫婦と同居の実母は嫁との折り合い悪く認知症がすすみ突然の家出上京…と、12話の間にこれだけの人物の抱える物語をよくぞ手広くカバーしていると思う。

「あの人物のアノ事情、放置だけどどうなったっけ?」となる“お客さん伏線”がなく、漏れなくなんらかの拡大延長が見られるのです。

舞台背景も堀口家の居間・律子と健一の各個室・藤夫智子夫妻の寝室のほか、藤夫が室長をつとめる建設会社、桂子が陣取るその専務室、OL律子の職場イワタ電機販売課、川合の生活感薄いマンション、川合が寄稿し編集長田中(まだ小メタボな斉藤暁さん)が目をかけてくれてる“週刊トップ”編集部、その応接室、川合の行きつけで律ちゃんも常連になった寡黙なマスター日野(不破万作さん)のバー、智子の大学時代からの親友弘美(山村美智子さん)のジュエリーショップ、藤夫御用達の座敷つき小料理店、智子の伊東の実家、松本のお祖母ちゃんが仕切る造り酒屋高瀬家…とセット数も豊富、街頭ロケもかなり頻繁。

これに比べると現行本放送中の『白と黒』を筆頭に、最近の同枠昼ドラはずいぶん舞台が狭く少なく、屋外ロケ回数も僅かで、“行きつけの店”も1軒限定なら、1話の中でカバーし、消化し、前に進めるサブストーリーの本数もえらく細ったなと思います。ひと組のカップル、ひと組の三角関係にスポットを当てると、ほかの脇キャラは何も物語を背負わず展開する機会も持たず、主役たちに茶々を入れるだけの単なる“置き道具”化。ここらにバブル崩壊後の“失われた10年”が表れているということでしょうか。

『その灯~』の本放送は96年1月期。ロケ費、セット製作費など物的な面より、やはりソフト面の貧困化を感じてしまいます。過去の恋を封印してきた人妻の物語、実家親の介護問題に悩む主婦の物語、よき夫・父たらんとする会社人間の物語、女に目覚めた娘の物語、エロス覚醒を持て余す受験生男子の物語、平和で真っ当な家庭人ワールドに背を向けて都会を漂泊するお水、カタカナ職業男女の物語…複数の価値観と世界観を描き分けつつ最終的に統合するドラマ作りの技法が、わずか10年少々でこれほど衰退してしまうとは。

コメント
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