自分だけの終戦記念日からか、そこそこに戦勝品持参でアキラが戻る。
そのひとつ、王将の餃子を二人で頬張りながら日付が変わる。
久しぶりに二人で歴史ネタを披露しあった。
アキラは今読んでいる『竜馬が行く』の幕末であり、北方謙三シンパの俺は南北朝で勝負をする。
アキラは明日、日付では今日にでも旅立つ気配。
今週末の発表に合わせて「戻るべき場所」に戻るはず。
俺は朝から大阪入りだ。
義母の手術、明後日には義父の手術のヒリヒリする展開。
ここしばらく24号と165号を駆け抜ける日々が続くことになる。
とりあえずは明日の塾の担当者は娘のれい・・・しかし、朝起きることができるのかどうか。
俺の孫とも言える文人、そこそこ邪険にしたのにもかかわらずウチの塾を気に入ったよう。
明日も来るらしい。
やっかいな母親の遺伝子はしっかり受け継いでいるようだ。
塾の黒板を裏返しにして、現段階での英単語の合格状況を書いておいた。
亜里と真奈はほぼ終了。
いっぽうで悠佑と梨紗に動きはない。
東海大会出場で人生で最も熱い時間を焦がしている梨紗はともかく悠佑の足取りが遅い。
酎ハイで酔いがまわったアキラが一言、「悠佑君、無駄な動きが多すぎますからね」
何度も指摘してきた・・・自分自身のなかだけに通用している奇妙な時間枢軸、これがやっかいなのだ。
どうすればその時計、塾時間にシフトできる?
今日の午後からの段取り・・・三重県統一テストの過去問題。
手術は午後1時からだ。
夕刻には戻る予定。
ちなみに下の道を通って大阪まで100km未満でいける。
深夜なら2時間を悠々切るはずが、さすが真昼間の奈良、ひどい目に会っちまう。
恵比寿神社の標識を右折、すかさず建築中の高架下を西に進む。
桜井市役所を横目に抜け、ジグザグ状に大阪教育大学目指す・・・見果てぬ夢。
しかし渋滞の嵐で、手術の1時間前に到着のはずが手術開始にすら間に合わない状況。
結局、柏原から西名阪道に乗ることに。
アキラの親父のように、市場の仕事をこなしながら共に入院した自分の両親の間を駆け巡るのに比べれば俺の今日の一日、物見遊山でしかない。
俺は何をしに大阪くんだりまでやって来たんだろう・・・自責の念にかられながらエスティマの進路を東に取る。
帰途は最も速いルート。
近畿道から南阪奈を通り橿原へと抜ける。
大阪の雑踏から25分で畝傍山を眺めながら165号を走る。
中3の模試の成績の集計を年長さん達がやってくれている。
和気あいあい・・・俺がいないと中3の女子連中、楽しそう・・・ここでも自責の念。
中1の英語の授業、今夜も過去の入試問題から抜粋された基本例文を50題。
いつしか、want to V や something to eat、前置詞 for の三つの訳「~のために」「~の間」「~にとって」あたりが自然に口をついて出てくる。
テーマとしては、英文のなかにひらがながどう機能するか。
主語の「は」「が」、特に「が」がどのような状況で発生するか。
目的語では頻度順に「を」「に」「が」
形容詞句では「の」、副詞句では「で」「に」
そして日本語の助詞の働きを担当する前置詞の理解などだ。
とりあえずは夏のうちに300文、これで英文がスムーズに訳せるようになるはずだ。
中2で英語が苦手な悠人や結花あたりも参加すればいいのだが。