軌道エレベーター派

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Fountain式(工法)とOrbital Shield (1)

2009-12-16 22:38:46 | 軌道エレベーター学会

Fountain式(工法)とOrbital Shield

(2009年12月13日軌道エレベーター派ワークショップ資料)



はじめに
 宇宙エレベーター協会(JSEA)で色々取り組んでいる傍ら、今年4月から、ここ「軌道エレベーター派」を立ち上げ、別個の活動を行っている。
 本稿では、JSEAとは異なる、軌道エレベーター派独自のモデルや、その建造方法を紹介する。
 JSEAは、B.C.エドワーズの構築したモデルをベースに、宇宙から吊り下げたケーブルを昇降する、いわゆる「クライマー」の研究に軸足を置いて活動しているが、このために「宇宙(軌道)エレベーター」といえば、ケーブルをクライマーが上り下りするモデルのことだというイメージが定着しつつある。
 さらに、軌道エレベーターの要は依然として素材であるにもかかわらず、クライマーを作ることが、すなわち軌道エレベーターを造ることであるかのような雰囲気になってしまった。
これは危険な錯覚である。JSEAは軌道エレベーターの認知拡大に多大な貢献をしたが、たったひとつのモデルを軌道エレベーターのイメージとして広めていることは、JSEAの罪でさえあると考えている。
 そこで本稿では、クライマーのいらない軌道エレベーターの構想と、その建造方法の一例を提示する。そうすることで、この分野には実に多様な発想があり、広がりを持つものであることを知っていただきたい。
 なお今回は、発表まで時間がなかったため、数値的検証はほとんど行っていない。ここでは基本的なモデルを紹介し、今後、これを専門的に追究していくという意味で、ロードマップの青写真の紹介として受け止めていただければ幸いである。
 軌道エレベーターの基本原理については、ご理解済みと思われるので省略する。

1. 一般的なモデルとブーツストラップ工法による建造方式
 対比のため、まずJSEAが研究・普及に取り組んでいるモデルを説明する。
 JSEAのモデルはB.C. エドワーズ氏の提示したモデルに基礎を置いており、建造方法は典型的なブーツストラップ式である。大まかな建造手順は次の通り。
(1) 本体ケーブルと作業用宇宙船、燃料を積んだペイロードをロケットで低軌道に打ち上げる。
(2) ペイロードの中身を低軌道上で組み立て、さらに 静止軌道上まで到達させる
(3) 静止軌道上からケーブルを地上に向かって繰り出しながらロケットは上昇を続け、ケーブルの先はやがて地上に到達。ロケットは末端でカウンター質量として固定する。これにより、作業用昇降機(エドワーズはクルーザーと呼んでいる)が昇降可能になる。
(4) 2本目、3本目のケーブルを次々と作業用クルーザーで敷設して補強していき、使用済みのクルーザーは末端で随時カウンター質量にする。
(5) 十分な強度になれば昇降機を付け運用開始

 軌道エレベーター特有の共通課題はあるが、このモデル自体に原理的矛盾はなく、総合的に検証を行った、極めて重要なモデルである。

 しかしながら、この方式には以下のような問題点も残されている
* 素材の損耗に伴うメンテナンスが困難で、運用開始時には最初に張ったケーブルの損耗が進んでいて、全体構造の疲労度に相当な偏りが生じている可能性がある
* コリオリや太陽の引力による摂動などの長期振動を解消できない。
* デブリや放射線、武力攻撃などからの防備が心配
* 軌道や高軌道にステーションを設けることが困難

 上記の問題は、1点目を除けばほとんどの軌道エレベーターのモデル共通の課題ではあり、このモデル特有の欠陥ではないが、いずれにしろ解決しなければならない。(2章に続く)

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