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軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

月面の縦孔利用により、被爆が月表面の10%以下に

2020-10-03 11:42:23 | ニュース
 宇宙研究航空開発機構(JAXA)は1日、月面の縦孔地形を放射線の遮断に利用した場合、被曝線量を月表面の10%以下に低減できることが、シミュレーションにより判明したと発表した。

 この縦穴は月探査衛星「かぐや」が月表面西側の「マリウス丘」付近に発見したもの。JAXAと量子科学技術研究開発機構、早稲田大学のグループは、同じく月周回衛星のルナ・リコナイサンス・オービターで観測したデータに基づき、月表面と縦孔内部で、月面に降り注ぐ放射線量の比較をシミュレーションで実施。

 

 この結果、月表面の被曝量が年間約420ミリシーベルト(mSv)であるのに対し、縦孔内では19~24mSvになることがわかった。
 放射線を扱う仕事の被曝量の基準値は5年間で100mSv以下とされており、JAXAなどは「地上における職業被曝以下の環境が得られる可能性が高く、有人探査や月滞在に向けて安全な防護空間を確保できることを示した」と話している。(軌道エレベーター派 2020/10/3)

(以下は軌道エレベーター派の雑記です)
 この縦孔については、過去に当サイトで扱っておりルナ・リコナイサンス・オービターにも触れたことがあるので、けっこう関心を持っていました。

 SF作品でも、月面の居住空間というのは地下に建設されたり、「宇宙兄弟」でモジュールにレゴリス(月面の砂)をかけて覆ったりしていますから、この有用性の一つの証明になりえますね。
 またレゴリスなど月面の表面物質には、核融合の燃料になりうるヘリウム3が大量に吸収されており、軌道エレベーターの開発の動機にもなりうるという見方も少なくありません。

 何か天体や現象を新発見したとかいう話ではないので、一見地味なニュースに思えるかも知れませんが、宇宙開発を展望する上で貴重なニュースではないかと思います。
 月は地球外探査の重要拠点です。間もなく火星が最接近しますが、将来は火星探査のための足がかりにする構想もありますので、こうした研究をどんどん進めてほしいものです。

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JAXAとトヨタが、与圧式の有人月面探査車を共同研究へ

2019-07-27 09:26:50 | ニュース
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)とトヨタ自動車は、月面での使用を想定した「有人与圧ローバ」の共同研究を行うための共同研究協定を締結した。

 月面探査や月資源の利用可能性の調査などを目的に、車内が与圧された状態で仕様できる密閉型月面探査車を共同で研究。2021年度までに、技術要素の洗いだしから車体の試作、試作車を用いた実験や評価行うとしている。
 今年はアポロ11号の月面着陸から50年にあたり、米国の「アルテミス計画」や「月ゲートウェイ計画」などで月面回帰が叫ばれる中、国際協力による月探査に寄与して、日本の存在感を示す狙いもあるとみられる。(軌道エレベーター派 2019/7/27)


(ここからは軌道エレベーター派の雑記です)
プレゼントご応募受付中。相変わらず少ないのでぜひどうぞ (´Д`)
 さて、有人の月面探査車の開発を自動車メーカーと共同で行うというものですが、個人的に注目したいのは「与圧」という点です。
 アポロ計画でも有人の月面走行車「ルナビークル」が使われましたが、これは宇宙服を着て乗るオープンカーでした。今回発表されたのは、内部に空気がある、いわば車輪が付いた宇宙船のようなものですね。

 現在の船外活動(EVA)用宇宙服というのは、着用して外に出るまでに何時間もかかる、ということを以前の記事で書きました。現在使われている宇宙服は、内部気圧が0.3~0.4気圧程度しかないので、宇宙飛行士は何時間もかけて低い気圧に体を慣らしてからでなければ、宇宙服を着てEVAなんてできないのです。
 映画やアニメで描かれているような、あっという間に宇宙服着て真空の宇宙空間に出るなんて真似は、現代の宇宙服ではできません。未来のお話ならともかく、現代の宇宙活動を描いた作品で、あっという間に宇宙服を着てEVAやる描写があるとしたら、それ嘘だから。

 ですので、宇宙服の改良も待たれますが、EVAは作業の大半を車載のマニュピレータや遠隔操作のロボットに任せた方が現実的でしょう。そこで、月面のような接地して移動できる場所であれば、今回のニュースのような与圧式の乗り物が重要な役割を果たすと思われます。

 「宇宙兄弟」で、せっせとEVAして月面望遠鏡を設置などしていますが、あのような作業を、こうしたローバーでやれば効率的かもしれません。作業場所付近まで行き、人間は車内にいたまま、有線の遠隔操作ロボットのような機器で作業をすれば、減圧のために時間をかける必要ななくなるというわけです。
 宇宙服の開発の方向性は、極論すれば宇宙服がいらない、EVAはやらずに済む、という方向へ進むべきであろうと考えます。その方が安全だし。

 今月でアポロ11号の月面着陸から50年。月面回帰が叫ばれる中、再び有人月面探査をやって、本気で月面探査や開発を進めていくなら、こうした機器が欠かせないでしょう。今後の進展に注目したいところです。

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アルツターノフ氏死去 静止軌道エレベーターの始祖

2019-02-10 12:44:05 | ニュース
 静止軌道エレベーター構想を確立した人物として知られるロシアの工学者ユーリ・N・アルツターノフ氏が、今年1月1日に死去した。享年89歳。

 アルツターノフ氏は旧ソ連時代、現在の軌道エレベーターの基礎理論となる、静止軌道に質量中心を置く軌道エレベーターを発案。1960年に『電車で宇宙へ』と題し、7月31日付『コムソモルスカヤ・プラウダ』に発表した(書題の邦訳は『SFマガジン』1961年2月号に基づく)。

 同じくロシアの学者で、ロケット工学の父とも呼ばれるコンスタンティン・E・ツィオルコフスキー氏(1857~1935)は、軌道エレベーターの原初的アイデアを打ち出したが、この時は地上から建ててゆくモデルを想定していたとされる。
 これに対しアルツターノフ氏は、静止軌道から吊り下げた構造のモデルを発案し、位置エネルギーを利用した電力の回収や月面上の軌道エレベーターなどのアイデアなど、軌道エレベーターの利用可能性の多様さを示す基本的アイデアも盛り込み、軌道エレベーターの標準モデルを確立した。
 以来、軌道エレベーターに関する学術論文や、SF作品で描かれるモデルは、大多数がこの基本構想に基づいている。世界初の軌道エレベーター専門書でもある『軌道エレベーター -宇宙へ架ける橋-』にも次のように記されている。

 「これこそ、軌道エレベーターの原理上の必要条件を正確に示し、
 かつその利点のすべてを正確に指摘した、史上初の構想であった」
(早川書房版より)

 アルツターノフ氏は、ツィオルコフスキー氏と並び、いわば「軌道エレベーター学」の父とも呼べる。当サイトでは、プラウダに記事が発表された毎年7月31日を「軌道エレベーターの日」と定めている。(軌道エレベーター派 2019/2/10)

(以下は軌道エレベーター派の雑記です)
 アルツターノフ氏がお亡くなりになりました。軌道エレベーター史をひもとく時、欠かせない最重要人物と言ってよく、当サイトでは「軌道エレベーターの殿堂」の人物の1人として紹介もしております。
 
 ソ連崩壊など西側諸国とは比べ物にならないほどの激動の歴史を経験した方でもあります。冷戦時代のソ連といえば、ルイセンコ(科学的根拠のない植物学を唱え、これに基づく農業政策により多くの餓死者を出す原因をつくった農学者)に代表されるような似非科学が権力と結びついて人々を弾圧し、自由に学問を追求することも難しい社会体制だったようです。そんな時代を生き抜き、静止軌道エレベーターという、かくも壮大で美しいアイデアを打ち出したことに、深く敬服するばかりです。
 心よりご冥福をお祈りします。

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アニメ『君の名は。』の糸守町、小惑星の名に。

2018-11-11 16:08:09 | ニュース
 アニメ映画『君の名は。』(2016年)に登場する架空の町「糸守町」が、小惑星の正式名称 "Itomori"(113405) として命名された。
 
 小惑星 Itomori は、火星と木星の間の軌道を周回する小惑星の一つで、公転周期4.1年、直径約4km。離心率は0.141、軌道傾斜角は10.7°
 発見者は米Goodricke-Pigott天文台のRoy A. Tucker氏で、2002年に発見し、"2002SS"の仮符号が与えられていた。氏はこれまでにも『君の名は。』の新海誠監督の名前を小惑星に付けたことで知られている。

 糸守町は、映画のヒロイン三葉が住む、「岐阜県飛騨Z郡」所在するという設定の自治体。過去の天体衝突によるクレーターが浸食されてできた湖を抱える。国際天文学連合(IAU)の小惑星センターが発行した回報にはItomoriについて「アニメ映画『君の名は。』に登場する、日本の架空の町で、彗星の破片の衝突により破壊される」と解説されている。
 Tucker氏はTwitterで "I am pleased to announce that asteroid 2002 SS24 has been numbered and named (113405) Itomori."と述べている。
(軌道エレベーター派 2018/11/11)

(ここからは軌道エレベーター派の駄文です)
 このTuckerさん、天文学者であり小惑星ハンターでもあるらしいですが、日本文化が好きなのか、"Makotoshinkai"(新海誠)とか "Kinokonasu"(奈須きのこ)とか付けてるとのことです。

 小惑星、彗星などの小規模天体は、発見者に命名権が与えられますが、その前に、発見してから少なくとも4回の衝を経た観測を継続的に行って軌道確定を行わなくてはならず、根気のいる作業のようです。『君の名は。』については当サイトで色々ツッコませていただきましたが、そうやって苦労して権利を得た小惑星の名前の由来を『君の名は。』にしちゃうんですから、よっぽどファンなんでしょうね。

 自分が名づけられるとしたら、やっぱり "Orbitalelevatorfan"とか "Kidouelevatorha"とかでしょうか。



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2018宇科連速報

2018-10-26 14:01:59 | ニュース

 24~26日、福岡県久留米市で「第62回宇宙科学技術連合講演会」が開かれた。
 今年の軌道エレベーター関連では、26日に「宇宙エレベーター研究開発最前線」というセッション名で、カーボンナノチューブの真空暴露実験や、超小型衛星による軌道上でのテザー展開実験に取り組んだ、静岡大などによるSTARS-Cの結果報告など11講義が行われた。
 社会科学的な観点からは、軌道エレベーターとロケットの棲み分けの考察もあり、ロケットで済む部分も少なくないとして、「宇宙エレベーターを造る価値は本当にあるのか?」という問いかけも。
 ピラーのヤング率に関する講演では、太陽などの熱の影響を考慮した研究結果を発表。地球の自転軸の傾きや対黄道面軌道傾斜角まで考慮し、熱で伸びたことによりピラーがその分コリオリ運動を行い、少なからず軌道エレベーターの振る舞いに影響を与えるという見方が披露された。

 ただし全体としては、軌道エレベーター専門の分野以外のセッションに含まれたものも含め、1日かけて計19講義が行われた昨年の宇科連に比較すると、今回は午後のみでコマ数としては半減。内容も昨年の経過報告的なものも多く、この分野の研究の広がりが頭打ちとなった様相も見せた。関係者は徳島県で開かれる来年の宇科連へ向け、講義の充実を目指している。(軌道エレベーター派 2018/10/27)

(ここからは軌道エレベーター派の雑記です)
 浮世絵ネタを書くつもりでしたが、バタバタとこの日を迎えてしまったので、今年の宇科連を取り上げようと思います。
 初めて久留米市に行ってまいりました。学問というのはどの分野でもそうですが、学会での発表は(1)前回発表テーマの経過報告 (2)新しい話題だが、それゆえに掘り下げはこれから──という感じで二極化する傾向があります。

 宇科連では、軌道エレベーターに関してもこうなってきた感があり、これはこの分野が一つの学問として確立したことでもあるので喜ばしい一方、ある程度研究者の顔ぶれも定着して頭打ちなった一面もあります。
  ですが軌道エレベーターは、科学・技術だけでなく社会科学の幅広い分野を扱いうる、まだまだ伸び白がある分野のはずなので、新規のエントリーが増えることが望まれますね。
 なお軌道エレベーター関連以外では、ひたすら自分の興味で聴講するのですが、米国の宇宙政策やプラネタリーディフェンスなどが面白かったです。

 ちなみに宇科連の後は博多に移動し、昨夜はもつ鍋と明太子を食べました。(゚Д゚)ウマー

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