半透明記録

もやもや日記

『ケイン号の叛乱』

2015年04月30日 | 映像

1954年 アメリカ


監督:エドワード・ドミトリク
原作:ハーマン・ウォーク
出演:ハンフリー・ボガート/ホセ・フェラー/ヴァン・ジョンソン/フレッド・マクマレイ



《あらすじ》
新米士官キースが配属されたのは真珠湾で任務に就く掃海船《ケイン号》。キースにはこの船での日々が特に規律も重要な任務もなく泥のように過ぎていくように感じられ、だらしなくしか見えない艦長がなぜ船員達の信頼を得ているのかが分からない。しかししばらくするとその艦長が下船し、新しい艦長が着任した。次の艦長は非常に過酷な戦闘を経験した規律に厳しい人物であった。キースはいよいよ《ケイン号》も海軍の船らしくなるだろうと期待したのであったが…



なにげなく観始めたこの作品、驚くべき名作でした。昔の映画は凄いなあ。まさかあんな結末が用意されているとは想像もできませんでした。派手な演出も演技もなし(だが素晴らしい演出と演技)に、心をぐっと掴まれるような、なぜか涙さえ滲むようなお話でした。それにしてもなんとしっかりした筋書きなんだろう。びっくり仰天しました。やっぱ過去の名作を観るといいことあるなあ。


ネタバレを避けるために詳細は書きませんが、本作では特に「人はどうあるべきなのか?」ということを問われているようです。たとえば絶対に逆らえない権力者が自分の正義感や安全を脅かすような行動をし始めたとする。そんな時、果たして人はどうあるべき、どう行動すべきなのでしょう。ひとまず私が見終えて考えたことは、簡単に誰かを糾弾してはいけないということですね。どうしてそうなのか、なにがそうさせるのか、そこへ行き着くまでに自分にやるべきことは他になかったのか。それをじっくり考えることを放棄して簡単に誰かの責任にして終わらせてはいけないんだ。けれども、それが難しい。人間の弱さをどう理解するのか。人は自分では望まなくても弱さを露呈してしまい、その弱さのために誰かを危険な状況へと導くことがあるかもしれない。そういう時、人はどうあるべきなのか。生命がかかっているような局面で、人はどうあるべきなのか。私は、誰かに泥の様に汚くて辛い仕事を押し付けていることも知らずに高いところから見下ろしてはいないだろうか。あるいは、そのために弱くなってしまった誰かの弱さに正しく向き合い、それに寄り添うことができるのだろうか。


ハラハラするようなドラマの後で華やかな達成感が得られますが、その直後に苦い、とても苦い後味を味わわせられる作品です。これは良いものを観ました。それにしても新しい艦長が嫌な役なのに無駄にいい男だと思ったらハンフリー・ボガートでした。この人は『カサブランカ』では死ぬほどかっこ良かったな。どういう役をやらせてもインパクトがあるということでしょうか。ろくに配役もチェックせずに観ましたが、いつまでも忘れられないのはやっぱりあの艦長のどこか悲しげな眼差しです。悲しみに沈んだ男なんていないほうがよくて、みんな誰でも満たされてほしいけれども、哀愁を帯びた瞳を持つ男にこそどうしようもなく惹かれてしまう私でありました(どうでもいい情報)。







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