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半透明記録

もやもや日記

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『幸福な王子』

2004年12月30日 | 読書日記ー英米
ワイルド 西村孝次訳(新潮文庫)


《あらすじ》

死の悲しみよりも強い愛の優しさを
高らかに謳いあげた名作『幸福な王
子』のほか、『ナイチンゲールとば
らの花』『わがままな大男』『忠実な
友達』『すばらしいロケット』『若い
王』『王女の誕生日』『漁師とその魂』
『星の子』など9編を収める。諷刺
と逆説に生きた一代の才子ワイルド
の献身的な人間愛が全編にあふれ、
簡素だが陰影に富む格調高い文章で
綴られた珠玉童話集。


《この一文》

” かわいそうに小さなつばめは次第に寒くなってきましたが、しかし王子を置き去りにして行ことはしませんでした、つまり心から王子を愛していたのです。
    「幸福な王子」より   ”



寒くて、悲しくて、惨めで、報われることもなく、そうであっても結局のところ世の中はなんと美しいのでしょうか。
そんな感想です。

『黒い時計の旅』

2004年12月26日 | 読書日記ー英米
スティーヴ・エリクソン 柴田元幸訳(福武文庫)


《あらすじ》

バニング・ジェーンライト。アドルフ・ヒトラー
のために、ポルノグラフィーを書く男。「ふたつの」
世界を旅する男。彼の口から、果てしない迷路
のような物語、呪われた愛をめぐる”もうひとつ
の二十世紀”の物語が、いま語りだされる・・・。
数多の絶賛を浴びながら、現代アメリカ文学界
に彗星のごとく登場したスティーヴ・エリクソン
の傑作長篇。


《この一文》

” 復讐の世紀における復讐の神。この世紀が結局のところは救済の世紀だった、なんてとうていあり得るとは思えない。まさか。冗談じゃない。これだけ悪業を積み重ねてきた私が、どこかで、何か小さな、目につかない優しい行為、すべての罪を贖い帳消しにするささやかな善行を行なったのだ、なんてとても考えられない。そんな馬鹿な話があるものか。だがそれでも、時間と空間があらゆる基準点からみずからを解放した世紀にあって、もしかしたら、たったひとつのささいな善良な行ないが宇宙それ自体を所有しているのかもしれない。怪物のごとく醜悪な、千もの悪の世界たちが、その行ないの愛の前に、服従を余儀なくされているのかもしれない。私にはもう分からない。   ”



ガルシア=マルケス、ホセ・ドノソ等のラテン・アメリカ文学の魔術的レアリズムの衣鉢を継ぐ作風で知られる作家と言われて、読まないわけにはいきません。
実際読んでみると、面白かったです。
最初の方は正直退屈で辛かったのですが、途中から異常な盛り上がりでした。
いくつかの話が平行して進んでいくのがこの人の特徴かもしれません。
『彷徨う日々』という小説も最近読みましたが、これまた面白かったです。
私としては珍しく気に入っているアメリカの作家です。