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森羅万象 ~ 歩く印象派

放射能拡散情報公表が遅れた背景に「政府の初動ミス隠し」

2011年04月26日 18時55分13秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)
2011年4月26日 07時00分

 政府には、原発事故発生の際に稼働する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(通称“SPEEDI”)」がある。

  SPEEDIには、全国の原子力施設の炉型や周辺地形などがデータとして組み込まれている。原発事故が発生して放射性物質が放出されると、気象庁のアメダ スと連動して、風向や風速、気温などから放射性物質の拡散を計算して図形化し、最大79時間後までの飛散を予測する能力を持つ。

 SPEEDIは事故直後の3月11日17時から動き始めたものの、最初に拡散予測図が公表されたのは3月23日、その後4月11日に2枚目が公表されたにとどまっている。その背景を追跡してみた。

 東京電力は地震発生翌日の3月12日に1号機と3号機で炉内の圧力を下げるために放射能を帯びた水蒸気などを建屋外に放出する「ベント」に踏み切り、13日には2号機でも実施。さらに、15日にはフィルターを通さない緊急措置である「ドライベント」も行なった。

 このタイミングで大量の放射性物質が飛散したことは間違いない。それはモニタリングのデータもはっきり示している。
 
 だが、枝野幸男・官房長官は1号機のベント後に、「放出はただちに健康に影響を及ぼすものではない」(12日)と発言し、20km圏のみの避難指示を変更しなかった。センターの証言によれば、枝野氏はSPEEDIのデータを知っていたはずだ。

 SPEEDIを担当する文科省科学技術・学術政策局内部から重大証言を得た。

「官邸幹部から、SPEEDI情報は公表するなと命じられていた。さらに、2号機でベントが行なわれた翌日(16日)には、官邸の指示でSPEEDIの担当が文科省から内閣府の原子力安全委に移された」

 名指しされた官邸幹部は「そうした事実はない」と大慌てで否定したが、政府が“口止め”した疑いは強い。なぜなら関連自治体も同様に証言するからだ。

 システム通り、福島県庁にもSPEEDIの試算図は当初から送られていたが、県は周辺市町村や県民に警報を出していない。その理由を福島県災害対策本部原子力班はこう説明した。

「原子力安全委が公表するかどうか判断するので、県が勝手に公表してはならないと釘を刺されました」

 福島県は、玄葉光一郎・国家戦略相や渡部恒三・民主党最高顧問という菅政権幹部の地元だ。玄葉氏は原子力行政を推進する立場の科学技術政策担当相を兼務しており、渡部氏は自民党時代に福島への原発誘致に関わった政治家である。

 この経緯は、国会で徹底的に解明されなければならない。「政府が情報を隠して国民を被曝させた」とすれば、チェルノブイリ事故を隠して大量の被曝者を出した旧ソビエト政府と全く同じ歴史的大罪である。

 しかも、その後も「安全だ」と言い続けた経緯を考えると、その動機は「政府の初動ミスを隠すため」だったと考えるのが妥当だろう。

※週刊ポスト2011年5月6日・13日号


首都圏でも直下型地震? 警戒時期に入ったのか

2011年04月26日 18時33分53秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)
2011年4月26日 11時00分 (2011年4月26日 12時43分 更新)

   東日本を中心に余震がいまも頻発している中で、首都圏でも大規模な地震が起きる可能性を指摘する専門家もいる。M7.3規模の地震が東京で起きた場合のシミュレーションでは、1万1000人の死者、21万人の負傷者を想定している。

   三 陸沖を震源とする東日本大震から2011年4月25日で1か月以上が経つが、M5.0以上の余震は400回以上を記録している。3月12日は長野県北部で M6.7、3月15日は静岡県東部でM6.4、4月11日は福島県浜通りでM7.0など、本震から離れた場所でも大規模な地震が起きた。4月21日には M6.0の地震が千葉県東方沖であった。

余震以外での大規模地震「否定できない」

   気象庁は、茨城県南部で4月16日に起きたM5.9の地震について、「余震域から外れている」とし、余震以外での大規模地震の可能性も「否定できない」とした。本震により地殻が動いたことから、新たな余震を誘発している可能性も指摘されている。

   そうした中で、首都圏における大規模な地震への警戒も出始めている。「週刊朝日」(4月29日号)では「首都圏直下大地震の戦慄」と題した記事を掲載した。故・溝上恵東京大学名誉教授(享年73歳)が生前に指摘してきた、茨城県沖、茨城県南部での地震の多発からの首都圏直下型地震がくる可能性を検証している。

   八木勇治筑 波大学准教授(地震学)は4月19日放送のTBS系情報番組「ひるおび!」に出演した際、「(本震の)震源域とは違う領域でも地震が発生している。震源域 があまりにも広いために、広範囲で誘発される地震が起きている。そういった意味で、東京も例外ではないかもしれない」と話した。

   また、かつて直下型地震の被害想定について取材経験のある経済学者・池田信夫氏もブログ(4月2日付)で、「東京に地震が来たら」と題した記事を公開。地震が起きた場合の問題点を指摘する中で、「東京は直下型地震を警戒する時期に入ったと思う」と警鐘を鳴らしている。

「東京は火災リスクが非常に高い」

   首 都圏で直下型の地震が起きた場合のシミュレーションもある。2005年に中央防災会議・首都直下地震対策専門調査会が発表した「首都直下地震の被害想定」 によると、震源地を東京湾北部するマグニチュード7.3(冬夕方18時)とした場合、死者1万1000人、負傷者21万人と試算されている。

揺れによる建物全壊が15万棟、火災による消失は65万棟。首都の経済中枢機能や交通ネットワーク機能への支障が出て、経済被害は実に約112兆円にものぼるという。

   防 災に詳しい東京大学・廣井悠助教(都市工学専攻)は「東京は火災リスクが非常に高いと言える。震災が起きたときには、消防が不足する可能性も考えられる。 地震で出火点が多くなると、消防車が現場に向かえないケースも出る」と言う。ちなみに、火災については初期消火が非常に大切で、火が燃え盛った場合は逃げ るしかない。

   また、シミュレーションではM7.3の地震が前提だが、東日本大震災を踏まえ、M9.0レベルの地震を想定した方がいいのではないか。これについて廣井氏は、次のように指摘する。

「シ ミュレーションには2つの観点――地震の規模や場所の想定、そして地震が起きた後にどういう被害が起こるかの想定――がある。規模等についてはたしかに再 考の余地があるかもしれないが、東京で大地震が起きた場合の被害は想定されているだけでも大きな数値。大事なのは、どうやって想定されている被害を最小化 させるか(リスクコントロール)、もう一つは想定以上の災害が起きた場合にどう対応するかだ。たとえば、地震で行政が機能不全に陥ったとしたら、その時に どうするのか。現段階で想定される被害以上のことが起きた場合を考えておく余地はあるだろう」

30分間に震度5弱以上8回 大震災直後、気象庁解析

2011年04月26日 00時20分47秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

 


2011年4月25日 19時44分

 東日本大震災で本震後のわずか30分間に、余震を中心に震度5弱~6強の揺れとなったマ グニチュード(M)4・6~7・7の地震が、東北沖から東海にかけての地域で計8回起きていたことが25日、気象庁の解析で分かった。これまでの発表で は、本震後30分間の5弱以上の余震は2回としていた。同庁は「集中的に複数の地震が起きた上、本震のエネルギーが巨大で揺れが長時間続いたことから、 データの精査に時間がかかった」と説明。また、大震災により東京都の8地点で新たに震度5弱~5強の揺れを観測していたと判明。全国で震度5弱以上となっ た観測点は、震度計の不具合が判明し取り消した地点を除き、計738地点となった。本震は3月11日午後2時46分ごろ。これまで気象庁は「3時6分ごろ に三陸沖でM7・0の余震」としていたが、ほぼ同時に岩手県沖と静岡県・伊豆地方で、M4・6~7・4の地震が計3回起きていたことが分かったという。


雑誌の「夏の電力充分」報道で政府の電力供給見通し方向転換

2011年04月26日 00時13分30秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

 

2011年4月25日 07時00分

週刊ポスト前号(4月29日号)「『原発完全停止』でも『停電』なし」が、政府と東電を大慌てさせた。震災対応そっちのけの大騒ぎは呆れるしかないが、彼らにはそれほど「痛いところを突かれた報道」だったのだろう。

本誌がスクープしたのは資源エネルギー庁作成の「東京電力の設備出力の復旧動向一覧表」という極秘資料だ。これには7月末の東京電力の供給能力が「4650万kW」と記され、これが「真夏の大停電が起きる」という政府の“脅し”の根拠にされた。

と ころが資料を子細に検証すると、ここには東電管内全体で1050万kWの発電力を持つ揚水発電(※1)が全く含まれず、停止中の火力発電所も加えられてい なかった。これらを含めれば、企業や一般家庭に使用制限を設けずとも「真夏の大停電」は回避できる。それをしない背景には、与野党政治家の「原発利権死 守」の思惑があった、というのが前号の概要である。

その締め切り日だった4月14日、揚水発電についてエネ庁を直撃すると、狼狽した様子で極秘資料の存在を認め、「確実に発電できるものしか供給力には含めない」(電力基盤整備課)と苦しい回答に終始した。

が、 同庁は本誌取材の直後、舌の根も乾かぬうちに、「全く別の指示」を東電に出した。翌15日夕方、東電は「揚水発電の400万kW、震災で停止中の共同火力 発電所(※2)の再稼働110万kWなどで550万kWの上乗せが可能になったため、7月末の供給力は5200万kWになった」と発表したのである。

経緯を知る経産省幹部が明かす。

「『ポスト』が取材をかけたあと、エネ庁から東電に揚水の一部を供給力に含めろと指示が下った。記事が指摘していた通り、これまでエネ庁は東電に“原発の必要性がわかる資料”を要求してきたから、彼らも突然の方向転換に面食らったようだ」

要は「電力隠し」を見抜かれたエネ庁と東電が、本誌スクープで国民裏切りの大嘘がバレるのを恐れ、発売前に大慌てで供給力の水増し調整を行なったというわけである。

それでも枝野幸男・官房長官は4月15日の会見で、「これで需給ギャップが埋められるものではない」と強調した。まだ“原発は必要”といううそにしがみつく醜いあがきだったが、弥縫策(びぼうさく)はまた綻ぶものだ。

(※1)揚水発電/水力発電所を挟んで上貯水池と下貯水池を作り、夜間などの余剰電力を利用してポンプで水を汲み上げ(この作業を「揚水」と呼ぶ)、昼間の電力使用ピークの時間帯に水を流下させて発電する仕組み。

(※2)共同火力発電所/東電が他社と共同で出資・運営し、電力供給を受ける火力発電所のこと。4月15日 に発表された見通しでは、鹿島共同火力(出資は東電50%、住友金属工業50%)の1、3、4号機と、常磐共同火力(出資は東電49%、東北電力49%な ど)の8、9号機が今夏までに再稼働するとされた。

※週刊ポスト2011年5月6日・13日号


追加の電源装置、冷却機能に懸念 9社の原発ともんじゅ

2011年04月26日 00時11分02秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)
2011年4月25日 19時36分 (2011年4月25日 23時05分 更新)

 柏崎刈羽原発に配備された4500キロワットの電源車(東京電力提供)

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 東京電力福島第1原発事故を受け、全ての電源が断たれた場合に備えて各電力会社などが新 たに配備した電源車や発電機では、ほとんどの原発で原子炉を安定した停止状態にすることはできないことが25日、電力会社などへの取材で分かった。容量が 小さく、原子炉を冷却する装置を一部しか動かせないのが理由。地震後の福島第1原発と同様に、非常用発電機が使えない場合の代替電源がない状況は事実上、 改善されていない。経済産業省原子力安全・保安院は、緊急安全対策の一つに位置付けているが、こうした状態での運転継続は議論を呼びそうだ。原発を所有す る電力10社と、高速増殖炉もんじゅ(福井県)を持つ日本原子力研究開発機構によると、事故後に電源車や可搬式発電機を原発に配備した。だがこうした電源 で動かせるのは計器類や小規模の注水装置だけで「非常用発電機のバックアップとは言えない」(電力関係者)という。