以下はジョルダンニュース(9月26日)http://news.jorudan.co.jp/docs/news/detail.cgi?newsid=JD1380126051128より
旧暦の8月15日は、今年は新暦で9月19日だった。
中華圏や韓国では「中秋節」と言い、日本の「お盆」となる。先祖の霊が地上に降りてくるとい う日だ。この日をはさんで中華圏では「秋のお休み」。今年は気が早いところでは9月14日の土曜日からの1週間を休むところも多かった。大学などの教育機 関でも休講になるところが多いが、だいたいは18日から20日まで本格的な連休となった。今年は20日が金曜日だったため、そのまま週末も含めて18日か ら22日までという大型連休だった。
いつも韓国で仕事をしている私も、この18日からの休みに日本行きの飛行機を取ろうとしたが、1か月 前の予約では満席で取れなかったため、仕方なく前日の17日の便でかろうじて席が取れた。しかし、韓国でのテレビのニュースを見て「ひょっとして」と思 い、18日を一週間前に控えた11日に再度18日の予約を入れて見たところ、なんと簡単に取れてしまった。そして、18日の日に韓国から成田行きの飛行機 に搭乗して重ねて驚いた。韓国の人がほとんどいなくなっていたのだ。
連休ともなれば、特にアウトドアの山歩きが流行っている韓国では、日 本での山登りの客が増えてきていて、連休初日などはかなり前から日本行き飛行機の予約を取らないと席が取れないという状態だった。しかし、今回はいつもの 「連休ラッシュ」がなかった。いや、直前になってそのラッシュが消えた。
実は韓国内のニュースを見て「これは連休初日の飛行機が取れるか も?」と思ったのは、他でもない、日本の福島原発の事故による大量の放射能汚染水漏れのニュースが韓国でもこの期間にあり、特に韓国では日本からの魚の輸 入を停止するなどの措置が取られた、ということがあったからだ。
韓国ではソウルなど大都市で「日本居酒屋」が大流行していて、当然「日本製の魚の刺し身」などは多くの人に好まれている。日本で労働問題などでなにかと話題になることも多い大手居酒屋チェーンも進出していて、大繁盛していた。
し かし、2020年の東京オリンピック招致に成功した7日前後から、この大量の放射能汚染水問題のニュースが世界中に配信され、韓国でも多くの人の口にこの 話がのぼっていて、私も「日本は大丈夫ですか?」と聞かれることが非常に多くなっていた。そして、この連休が終わった途端、韓国系の航空会社が韓国-日本 便の大幅な減便などを行うことを発表した。韓国だけなく、このところ増便を繰り返していた台湾や中国からの日本への旅行客も、特に東京やその近辺へ行く飛 行機を中心に激減している。
一部の「嫌韓」と呼ばれている人たちは「韓国なんか来なくてせいせいする」と言っている人もいるようだが、これは韓国だけの話ではない。観光客の世界的な「日本忌避」が始まっていることを覚えておいたほうがいい。
国 土交通省・観光局の統計によれば、2013年1-8月の日本への外国からの入国者はおおよそ686万人で、そのうち韓国からの入国者が26%の180万人 と、一番多くかつ過去最高となっている。続いて台湾からが147万人(21%)、中国からが84万人(12%)、となっていて、この3国・地域だけで日本 への入国者数の70%近くを占める。
2020年の東京オリンピックでも、当然のことながら韓国からの観光客は一番多くなることが予想され る。逆に言えば、韓国や、台湾を筆頭とした中華圏からの観光客が減ると、日本のオリンピック、ひいては「日本復興」の掛け声も、特に観光立国を考えれば大 きな打撃を受ける可能性もあるのだ。
そして1週間の日本での休暇を終え、韓国の職場に戻ってきたとき、コンビニエンスストアに入って驚い た。このあいだまでコンビニの棚にあった「売れ筋」の日本製ビールの数や種類が半分以下に激減していたのだ。テレビをつければ「日本は、魚が危ない。水が 危ない」などのニュースも毎日のようにやっているが、一方で韓国の政府は日本からの魚の放射能汚染の全数検査を行うことを発表し「日本製は危なくない」と いうことをかなり力を入れて宣伝している。しかし、友人の韓国の人に聞いたら「韓国の政府の言うことはみんなあまり信用していない」と言う答えが返ってき た。
そう言われて、外務省が出している「日本製品を輸入禁止にしている国のリスト」を再度見てみた。韓国だけの「日本の水産品輸入禁止」がニュー スになっているが、中国、タイ、台湾なども含め、多くの国が韓国どころではない日本製品の輸入禁止措置をとっていることがわかる。韓国だけではないのだ。
韓国に限らず日本を見る外国人の目が、この半月ほどのあいだに、180度変わった。
オリンピックどころではなくなってきた、というのが実感だ。
(参考1)観光局統計の外国人観光客の入国統計
(参考2)外務省・日本製品の輸入禁止や制限をしている国のリスト
【ニュース解説チーム】
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