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森羅万象 ~ 歩く印象派

船から大学生2人が海に転落、不明 伊豆大島沖

2011年07月31日 15時11分42秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)
2011年7月31日13時49分朝日COM

 31日午前2時40分ごろ、東京都伊豆大島の東南東約14キロの太平洋を航行中の貨客船「かめりあ丸」(3837トン、乗客289人)から、「乗客2人が海に転落した」との連絡が、下田海上保安部にあった。同保安部などが付近を捜索している。

 同保安部によると、転落したのは東京都江戸川区の男子大学生(22)と中野区の男子大学生(23)。2人は釣り仲間5人とともに乗船。甲板付近で2人でふざけあっているうちに転落したという。

 同船は、東京都港区の竹芝から八丈島に向かっていた。


M9南海地震で大阪平野部水没 最悪のシナリオで備えを

2011年07月31日 06時32分08秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

KyodoWeekly 2011/7/11号

中央防災会議の専門調査会座長を務める関西大の河田恵昭教授は6月23日、共同通信社の大阪きさらぎ会で講演し、東海・東南海・南海の3地震の連動 について「もう一つ地震が起こって4連動が起こる可能性もある」と指摘。巨大化した津波の被害で、死者が東日本大震災の10倍以上となる恐れもあると警鐘 を鳴らした。さらに、マグニチュード(M)9・0級の南海地震が起きた場合、大阪府内の平野部の大半が水没する恐れがあるとした。

▽東日本大震災を教訓に
関東、阪神、東日本の三つの大震災を比較すると、関東大震災では、ほとんどの人 は地震の時の火災で亡くなった。だから地震対策イコール火災対策と考えた。阪神大震災は、住宅倒壊による圧死者が約90%。圧死者の多くは15分以内に亡 くなっていたから、病院で通常通り診療できても、救えた命は300人以内だった。東日本大震災では、地震、津波、原子力災害のトリプルパンチを受けた。

阪神と比較して、今回の対応は遅いという指摘があるが、それは現場を分かっていない人の言うことだ。地震と津波による被害は全く違う。阪神では被災地人口の約0・1%が死亡した。今回、岩手は約3%、宮城は約1%。津波の方が被害が大きくなる。
東日本大震災は、広域で長期化した複合災害であることのほかにも、いくつかの特徴がある。たくさんの社会的弱者が亡くなったことや、防波堤、防潮堤などが 十分機能しなかったこと。市町村合併も影響した。例えば石巻市は2005年に7市町が合併して人口16万人の新しい石巻市となったが、市役所職員は大きく 減っていた。

道路輸送に偏った物流の問題もあった。今は、何でも宅配便で送る。軽油が安い日本の特徴かもしれないが、鉄道も船も太刀打ちできない。関西での被害 を考えると、例えば奈良県は南海地震が起こったら無傷ではいられない。津波は来ないが、大阪や京都にある物流拠点が被害に遭って奈良県に物が入らなくな る。物流を陸上だけに頼っていると、一気に駄目になる。

阪神の地震災害のがれきは小山にして回収できたが、津波災害のがれきは散乱してしまうため、回収が難しいことも分かった。
もし東海・東南海・南海の3地震が同じ規模で起こったら、死者は東日本大震災の10倍を超えるだろう。沿岸市町村の人口は静岡県だけで、200万を超えている。死亡率が3%で6万、1%でも2万人だ。私たちは、東日本大震災の教訓を生かさなければいけない。

▽連動で津波巨大化
東日本大震災では、深い所で地震が起こり、津波が伝わってくる途中に、浅い所でも地 震が起こって津波がさらに大きくなった。こういうことが起こるということは、東海・東南海・南海の3地震の連動を考えた場合、南海トラフの深い海域で、も う一つ地震が起こってもおかしくない。つまり4連動が起こる可能性が出てきた。私が座長の専門調査会で見直しているが、この南海地震の震源モデルをもう少 し西にしてみると、津波は豊後水道から大分県、山口県、広島県へ入る可能性があって、大きな被害につながるのではないかと心配している。

1946年に発生したM8・0の南海地震で、高知市は、1・2メートル沈下して津波が来る前に水浸しになった。Mが大きくなればもっと沈下する。浦 戸湾には4メートルの津波が来るとされ、土地が2メートル下がったら6メートルの津波がやってくるのと同じ形になる。高知県は海側が全部水没する可能性も ある。これも大変心配な点だ。

大阪では南海地震が起こると津波の第一波は約2時間で来ると予測している。落ち着いて逃げれば命を落とすことはないが、地下街で遊んでいると、とん でもないことになる。そういうことをもっと行政が言わないといけない。住民が全員、小中学校に避難したら入れない。そういったことも、政治がちゃんとやる べきで、起こるかもしれないことに目をふさぐわけにはいかない。

▽南海地震は800回発生
3地震の30年以内の発生確率は東海87%、東南海70%、南海60%だ。
室戸岬は、南海地震が起こると跳ね上がって、以降は6ミリずつ沈下する。下がりきる前に次の地震が起きるので、今は標高186メートルにある。そこで12 万年前の貝の化石が見つかった。つまり12万年かかって岬ができたということだ。684年に南海地震が起こって以降、今まで8回起こっているが、間隔は最 長150年だ。12万年で間隔が150年とすると、800回の南海地震起こっていることになる。繰り返し起きているのだから、これからも必ず起こるという ことだ。

試算では、M9の地震なら津波も高くなって、紀淡海峡には400万トンの海水が流れ込んでくる。大阪湾にも、想像を絶する量の海水が入ってくるだろ う。海面がすっと上がって、先端だけが砕けながらやってくる。氾濫水が大阪市内の奥へ行く、そういうイメージの津波だろう。大阪に押し寄せる津波の高さは 5・5メートルとなり、大阪府内の平野部の大半が水没する恐れがある。高槻市など府北東部まで来る。

堺市と大阪市だけで300万の人がいる。1%が亡くなるとすれば、大阪では3万人の犠牲者が出る。もちろんもっと正確な計算が必要だが、こういうこ とが起こるかもしれないと、気を付けなければいけない。どんな津波が来るか分からないが、最悪のシナリオを頭の隅においておくことは、とても大事なことだ


九電やらせメール「きっかけは佐賀知事会談」と第三者委

2011年07月30日 22時18分25秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)
2011年7月30日20時6分朝日COM

 「やらせメール」などの問題を調べている九州電力の第三者委員会の郷原信郎委員長(名城大教授、弁護士)は30日、福岡市で会見し、佐賀県の古川康知事と前副社長ら幹部が会談したことが、やらせメールのきっかけになったことを明らかにした。

 九電幹部が作成したメモによると、古川知事は国主催の玄海原発(佐賀県玄海町)の説明番組について「インターネットを通じて賛成意見も集まるようにしてほしい」と要請していたという。メモの内容は電子メールで社内の複数の関係者に配られたという。

 九電側は古川知事の意向を受けて「賛成の声がもっと表に出るようネットを活用するべきだ」との認識を社内で共有。組織的なやらせの指示につながっていっ たとみられる。郷原氏の聞き取りに古川知事は、メモに書いてあるような「賛成意見の要請」はしていないと、述べたという。


映画「あしたが消える どうして原発?」 原発に警鐘 22年前のドキュメンタリー映画上映へ

2011年07月29日 16時00分46秒 | 歩く印象派

2011年7月28日19時27分朝日COM

写真:映画「あしたが消える どうして原発?」から拡大映画「あしたが消える どうして原発?」から

 日本の原子力発電の問題点に迫りながら、一部でしか公開されなかった22年前のドキュメンタリー映画「あしたが消える どうして原発?」(1989年) が、8月6日から東京・渋谷のユーロスペースで上映される。原発の安全設計の問題や原発労働者の実態など、東日本大震災後に浮上した様々な問題点を「予 言」した内容だ。

 「あした~」は、86年のチェルノブイリ事故を機に、日本の原発の安全性を問うべきだと考えた映画プロデューサー3人が出資し、製作した。原発労働者の 父ががんで急逝したことから、原発の安全神話を疑う投書を朝日新聞に寄せた宮城県の主婦の証言を軸に、東京電力福島第一原発の設計にかかわった元原子炉設 計技術者や原発労働者たちの告白などで構成されている。55分の短編作品だ。

 当時は反原発の市民グループなどの間で上映されたが、小規模な広がりにとどまった。映画の存在を東日本大震災後に知った映画宣伝・配給会社社長の有吉司さん(56)が「今こそ再び上映されるべきだ」と関係者に働きかけた。


保安院のやらせ依頼、第三者委で調査 海江田氏が発表

2011年07月29日 15時57分24秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)
2011年7月29日15時47分朝日COM

 経済産業省原子力安全・保安院が、プルサーマル発電に関するシンポジウムの際、参加者の動員や発言を依頼していた問題で、海江田万里経済産業相は29 日、記者会見を開き、「極めて深刻な事態だ。徹底した解明を行っていきたい」と述べた。海江田氏は、法律家などでつくる第三者委員会を設けることを表明。 内部調査を行い、8月末までに結果を報告する。

 海江田氏によると、経産省主催のシンポジウムで、2006年6月には四国電力に、07年8月には中部電力に対し、国が質問内容を示したうえで社員らに発言を行うよう要請。海江田氏は「(要請したのは)保安院だと思う」と述べた。


四国電の原発シンポでも保安院から要請 参加や発言など

2011年07月29日 15時55分33秒 | 歩く印象派
  1. asahi.com
2011年7月29日15時49分

 四国電力(高松市)は29日、2006年6月に愛媛県伊方町で国が主催した伊方原発3号機のプルサーマル発電に関するシンポジウムで、伊方原発や関連企 業3社の従業員10人と地域住民19人の計29人にプルサーマル関連の質問や意見をするよう例文を示した上で依頼していたと発表した。原子力安全・保安院 から「多くの参加者を募り、質問や意見が多く出るようにしてほしい」との要請を受けたという。

 シンポの会場では15人が質問したが、そのうち10人が四電が依頼した人だった。内訳は社員2人、関連会社員3人、そのほかの住民が5人だった。

 例文では、「プルサーマルは燃料のリサイクルであり、資源が乏しい日本は、再利用できる有益な資源は積極的に活用すべきではないか」「プルサーマルはプ ルトニウムの特性や性質をきちんと把握して行うとのことなので安心した」などで、10人中7人が例文に近い発言をしたという。(島脇健史)


原発事故で欠陥露呈のマスコミ 社員は受験点取り虫ばかり

2011年07月29日 14時59分58秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

 

2011年7月29日 07時00分

 新聞・テレビは、私たち国民が知りたいことをわかりやすく報じているのだろうか。東日本 大震災、福島第一原発事故後、メディアから流れてくるのは、「ただちに健康に影響はありません」「確認中です」等々、国民を不安がらせる官僚用語の垂れ流 しばかりではないか、とエッセイストの神足裕司(こうたり・ゆうじ)氏は指摘する。

 * * *
 テレビ・新聞メディアの原発事故報道は、わけがわからず、気分を暗くする毒薬にしかならなかった。

 いつも「言論の自由」と声高に言いながら、もっとも大事な地震後の1か月、政治と同じく、大メディアは国民を守らなかったし、極秘情報をもとに家族だけを関西方面へ避難させる“放射能インサイダー”のような輩もいた。

 私たちは放射能に汚染されているのかいないのか? 政府もメディアも信用できない。

 官邸、文部科学省、経済産業省の原子力委員会、東京電力が二重三重の記者発表をしてますます混乱が深まる中、福島第一原発3号機はプルサーマル、すなわちウランとプルトニウムをMOX燃料として使う、人類最悪の猛毒施設ではないかとの世間話がざわざわと流れた。

  これを打ち消すように大メディアが流したのは、「プルトニウムの放射能は紙一枚で防げる」という事実ではあっても冗談のような発表だった。放射能汚染を少 なめに発言すれば「御用学者」と非難された。だが、風評被害を広めた学者不信にも、メディア側の致命的な伝達力不足がある。

「御用学者」と罵倒された人も含め、専門家に取材した筆者、コータリがたどり着いた答えは、放射能漏れは危険レベルでも安全レベルでもないというものだ。つまり、ほとんどわからないということだ。

  放射能は遺伝子を破壊する。また細胞を破壊することによって人体にストレスを与える。この両者によって、一度に大量被曝すれば重大な症状が出る。原爆後の 広島市爆心地付近へ入って紫の斑点を出しながら亡くなった兵士のようなケースだ。一方、同じ線量を浴びても、長い年月をかけたものであれば影響はわかりに くい。部分的に破壊された遺伝子は自己修復するからだ。これは理論だ。

 では実際、国が定める基準値以上の放射能を浴びるとどうなるかは、わからない。なにを素人がと言われようが、学者が拠り所にする被曝データは広島、長崎、チェルノブイリのわずかなものしかないからだ。

 はっきり言うべきではないか。放射能被曝と人体への影響は、細かい数値で本当らしく説明するほどにはわかっていないのだと。

 ここで、メディアの別の欠陥がわかってくる。出世競争にともなう政治家との癒着以外に、スタッフが受験戦争を勝ち抜いた点取り虫しかいないことだ。

「わからない」とは口が裂けても言わない。知識の欠落を疑われれば、無関係なデータを並べて相手を翻弄しようとする。同じく点取り屋でメディアよりは少し偏差値が高い官僚のやり口と一緒だ。

 原発事故後の新聞紙面を見ればいい。原子炉の図解があり、放射線表があり、あらゆる専門家のコメントがあり、それでいて、とっくの昔にメルトダウンしていた事実を伝えるのは後回し。

 あとは個々人が判断するしかないって? わかりにくい隠蔽競争をしておいて、判断などできるか?

 お分かりでしょう。ニュース記事や番組が何を伝えているのかわからなかったのはあなただけではない。書いたり、しゃべったりしている当のマスメディアが、悲しいほどにわかっていなかったのだ。

※SAPIO 2011年8月3日号


保安院が「やらせ質問」工作=中部電は動員、やらせ依頼は拒否―07年

2011年07月29日 14時58分59秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

 

2011年7月29日 12時52分

中部電力は29日の会見で、07年のプルサーマル関係シンポジウムを前に、保安院から「質問が反対一色にならないように」などと、依頼を受けていたことを明らかにした。写真は「工作依頼」で会見する寺田法務部長 【時事通信社】

[拡大写真]

 中部電力は29日の記者会見で、2007年に国が主催したプルサーマル関係のシンポジウ ム(静岡県御前崎市)を前に、経済産業省原子力安全・保安院から、「質問が反対一色にならないよう、(容認の立場からの)質問書を作成し、地元の方に発言 してもらう」よう、口頭で依頼を受けていたことを明らかにした。中部電は、かえって地域の信頼を失うと判断し、この「やらせ質問」工作を拒否したとしてい る。

 また、この保安院の「工作」依頼には、「空席が目立たないよう地元から参加を募る」内容も含まれていた。中部電側は、「やらせ質問」 の文案を作成したが、「法令順守の観点から問題がある」と最終判断し、保安院に依頼を断る旨を報告した。ただ、同社員や関連企業に参加を依頼。これについ て、「誤解を招くおそれがあり、反省している」とした。

 問題のシンポは07年8月、使用済み核燃料を再利用するプルサーマル発電につい て、浜岡原発(御前崎市)のある地元住民らに理解を求めるため、国主催で開かれた。中部電は、その直前の7月下旬に保安院から中部電の本社原子力グループ 長に対して口頭で依頼があったと説明した。 


「本当の原発発電原価」を公表しない経産省・電力業界の「詐術」

2011年07月27日 12時18分58秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

Foresightコンテンツ-新潮社ニュースマガジン

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「本当の原発発電原価」を公表しない経産省・電力業界の「詐術」

塩谷喜雄 Shioya Yoshio
科学ジャーナリスト
Foresightコンテンツ 爆発後の福島第1原発3号機原子炉建屋[東京電力提供]=2011年3月21日【時事通信社】

 この国では、「安定した復興」とは元の黙阿弥のことを指すらしい。政治家たちの錯乱ぶりに隠れて、 原発と電力の地域独占は何の検証も経ずに、今まで通りそっくり継続される気配が濃厚である。福島の事故が打ち砕いた原発安全神話に代わって、経済産業省と 電力会社が流布するのはもっぱら原発「安価」神話だ。

 火力や水力に比べ原発の発電原価が断然安いという、架空の、妄想に近い数字が幅を利かせている。評 価も監視も放棄した新聞・テレビは、今度も懲りずに虚構の安価神話をただ丸呑みして、確かな事実であるかのように伝え、社会を欺き続けている。日本経済が 沈没するとすれば、その原因は原発停止による電力不足や料金高騰などではなく、行政と業界が一体となった利権と強欲体質の温存が主因であろう。

国民への「二重の恫喝」

Foresightコンテンツ 「やらせメール」事件で、事実上、再稼働が白紙に戻った九州電力玄海原子力発電所=2011年5月24日、佐賀県東松浦郡玄海町【時事通信社】

 6月13日、経産省所管の日本エネルギー経済研究所が、停止中の国内原発がこのまま再稼働せず、稼 働中の19基も順次停止した場合、その分を火力で賄うと、2012年度は1家庭当たりの電力料金が毎月1049円増えるという試算を発表した。電力需要が ピークを迎える夏を前に、停止中の原発の再稼働が議論になり始めたタイミングで、あまりにもあからさまな再稼働応援歌であった。

 政策選択において、自分たちに都合のいい試算や見通しを、傘下の研究機関に出させるのは、経産省のいつもの手口である。今回は、単なる世論誘導にとどまらず、原発を止めたら電気料金は上がり、一方で停電の危機も増大するという、2重の恫喝を含んでいた。

 この発表を普通に受け止めれば、発電原価が安い原発が止まって、原価が高い火力で代替すれば、発電コストが上がって料金も上がるのは仕方ないと、納得してしまう。

 しかし、電力会社もそれを監督する経産省も、発電所ごとの発電原価を一切公表していない。何度も情 報開示を要求されているが、「企業秘密」だとして、かたくなに公開を拒んでいる。どこの原発がどれくらいのコストで発電しているかが分からないのに、それ を火力で代替するといくら原価が上がるのかをはじき出せる道理がない。

 だから、試算をいくら読んでも、なぜ標準家庭1世帯当たり月1049円上がるのか、論理的根拠が見 つからない。書いてあるのは、原発の分を火力で賄うと、燃料費が新たに3.5兆円かかるので、その分を料金に上乗せすると、1kWh当たり3.7円、1世 帯で月1049円増になるという計算である。

 火力の燃料費増加分をそっくり料金に上乗せするというのは、全く論理性を欠いている。もしそれが正 当なコストの反映なのだとしたら、原発というのはいくら動かしても一銭もかからない存在で、コストはゼロだということになってしまう。コストゼロというの は大抵の場合は「大ウソ」である。

 

「モデル試算」という空想の発電コスト

Foresightコンテンツ 浜岡原発の停止を受け、停止中の2号機を再稼働させる中部電力・武豊火力発電所(手前)。燃料は重油。海を挟んだ奥には石炭を燃料とする碧南火力発電所が見える=2011年5月14日、愛知県武豊町【時事通信社】

 本来は、原発稼働時の発電原価と、それを火力で代替した場合の発電原価を比較しなければならないはずなのに、原発の発電原価を隠してごまかすために、追加燃料費の全額上乗せなどという目くらましの虚構を組み立てねばならなかったのだろう。

 こんなご都合主義の数字をご大層に押し戴いて、原発が再稼働しなければ日本は沈むなどと、国民や地 元に誤った判断を迫った新聞・テレビの罪は重い。もしまっとうな批判能力があるなら、この試算が実は「原発は止められる」ということを、原子力利権ムラ自 身が証明したものであることに、気づいたはずだ。燃料費だけを追加すれば、日本の全原発の発電量を、火力で十分に代替できることを、経産省が認めたのであ る。

 経産省と電力業界は、「本当の発電原価」は公開していないが、原発安価神話の源になった、ご都合主 義の数字ならちゃんと出している。半可通のエコノミストなどがよく例に引く「モデル試算による各電源の発電コスト比較」というのが、2003年に電気事業 連合会(電事連)から発表されている。

 これはモデルプラントという架空の原発が理想的に運転されたときの、空想の発電コストを示した「夢 と幻」の産物である。現実の原発のコストを何も反映していないし、何も示していない。実体とは無関係だから、見せかけの原発のコストが下がるように、好き 勝手な、恣意的な設定で計算している。法定耐用年数が16年の原発も、15年の火力発電所も、40年間無傷のまま動かしたとして、コストを想像してしまっ た。

 その豊かな想像力の産物が「1kWh当たり原子力5.3円、石炭火力5.7円、LNG火力6.2円、石油火力10.7円、水力11.9円」という数字になって、霞が関や大手町を大手を振って独り歩きしている。

電力会社自身の見積もりと激しく乖離

Foresightコンテンツ 使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを利用するプルサーマル発電を国内で初めて実施した九州電力玄海原子力発電所3号機の原子炉容器へウラン・プル トニウム混合酸化物(MOX)燃料を装てんする作業の様子[代表撮影]=2009年10月16日、東松浦郡玄海町【時事通信社】

 この数字がいかに現実と乖離しているかは、電力会社自身が原発の設置許可申請の時に、経産省の電源 開発調整審議会(現・電源開発分科会)に提出した資料を見ればよくわかる。それによると、日本の主要な原発の1kWh当たりの発電原価見積もりは、「泊1 号機17.9円、女川1号機16.98円、柏崎刈羽5号機19.71円、浜岡3号機18.7円、大飯3号機14.22円、玄海3号機14.7円」となって いる。5.3円なんて原発はどこにも存在しない。

 比較的原価見積もりが高い原発を列挙したが、1kWh当たりのコストが10円を切っている原発が2つだけある。大飯4号機の8.91円と、玄海2号機の6.86円である。それを考慮しても、どこをどうやったら、日本の原発の発電原価が5.3円などと言えるのか。

 きっと原子力利権ムラの提灯持ちたちは、こう言うに違いない。「電調審への申請数字は、初年度の原価見込みか、16年の法定耐用年数運転を前提にしたもので、40年耐用のモデル試算は別物で、比較しても意味はない」と。

 それでは、現実の原発コストとは何の関係もないモデル試算を、何のためにはじき出したのか。その理 由を経産省と電事連には聞きたい。原発は安いという架空のイメージを植え付けるだけでなく、本当は原発が他の電力に比べて圧倒的に高い「孤高」の電源であ ることを、ひた隠すためのプロパガンダではなかったのかと。

 2003年のモデル試算には、核燃料サイクルのコストは全く反映されていない。その後、さすがにま ずいと思ったのか、経産省も核燃料サイクルやバックエンド(放射性廃棄物の処理・処分)の費用を、少しは組み入れた。しかし、高速増殖炉の開発・運転費用 や、再処理を委託した英仏からの返還廃棄物の関連費用などは除外し、廃炉費用も極端に安く見積もっている。

じつは断トツで高い原子力の発電コスト

Foresightコンテンツ 四国電力伊方原子力発電所。左の円筒が1号機、中央のドーム型が2号機、右奥の大きいドーム型が3号機。定期点検中の3号機を2011年7月に再稼働する 予定だったが、菅直人首相の指示でストレステスト(安全検査)を実施することになったため、断念した=2006年7月11日、愛媛県伊方町【時事通信社】

 モデル計算ではなく、公開されている電力会社の有価証券報告書から、これまでの原発の発電実績と費 用をもとに、原発の発電原価を計算したのが、大島堅一・立命館大学教授である。現在の発電原価に1番近いと思われるその数字は、原子力8.64円、火力 9.8円、水力7.08円で、原発は決して安くない。

 需要の変動に合わせた柔軟な負荷変動運転が苦手な原発は、需要の少ない夜間も目いっぱい発電する。 それを昼に持ち越すために、夜間電力を使って水を下から上にくみ上げ、それを昼に落下させて電気を起こす「揚水発電」をしている。これはいわば原発専用の サブシステムだから、1kWh当たり40円とも50円ともいわれるそのバカ高いコストを原発の発電原価に組み入れ、さらに電源立地の名目で地元懐柔策に投 入されている膨大な税金も反映させると、発電コストは原子力12.23円、火力9.9円、水力7.26円になり、原子力が断トツで高い電源となる。

 経産省や電事連の「試算」という名の発表が、大本営発表よりたちが悪いのは、経済成長の担い手とし ての、メディアからの盲目的な信頼を利用して、真っ赤なウソではなく、それらしい信頼性の意匠を凝らしていることだ。まさか、幹部のほとんどが東大卒の役 所と会社が、詐術に等しい数字をもてあそぶはずはないと思ってしまう。モデル試算を現実と取り違えるのは受け手の方が悪いという、巧妙な逃げも用意されて いる。

環境問題でも示された経産省のあざとい試算

Foresightコンテンツ 経済産業省が地元CATVとインターネットで2011年6月26日に放送した佐賀県玄海町の九州電力玄海原子力発電所の緊急安全対策などについての説明番 組。九州電力本社社員が3事業所と子会社の社員に再稼働を支持するメールを説明会宛てに投稿するよう求めていた[ユーストリームより]【時事通信社】

 その典型的な事例が地球環境問題でもあった。2009年8月5日、経産省の総合資源エネルギー調査会需給部会に、経産省から1つの試算が示された。お得意の試算である。経産省の試算インフレなどともいわれている。

 中身は地球温暖化防止の基本計画によるCO2など温室効果ガスの排出抑制策と、家計の可処分所得や 光熱費負担の関係を、はじき出したという触れ込みだった。当時の自公政権の掲げた排出抑制目標は、2020年までに2005年比で、15%削減というもの だった。それに対し、民主党は1990年比で25%の削減を主張していた。

 試算は両者が家計にどれくらい影響を与えるかを計算している。間もなく解散総選挙という時に、政権を争う与野党の環境政策の優劣を、一役所が比較してみせるという、かなりあざとい技だった。

 この試算をマスメディアのほとんどはこう報じた。「15%削減なら可処分所得は年に4万4000円 減り、光熱費が3万3000円増える。25%削減だと可処分所得は年に22万円減、光熱費は14万円増える」。記事を読んだりニュースを聞いたりした人 は、25%なんて削減すれば、これから毎年36万円も負担が増えると受け取ったに違いない。自公政権への露骨な応援歌である。

 事実、「家計を傷めて何が温暖化対策だ」という反応があちこちで聞かれた。この試算、今年6月の原 発停止と家計負担の試算と同じで、奇妙奇天烈な想定でつくられている。2009年から2020年まで毎年1%以上の経済成長が続くと、20年には現在より 家計の可処分所得は90万円以上増える。排出削減策を講じると、25%削減でも可処分所得は70万円ほど増えるが、何も策を講じなかったときに比べれば増 加分が22万円少ないという話である。12年後に予想される可処分所得の増加分が、少々目減りするという程度の話で、無意味といってもいい。

 そんな数字を有難がって、排出削減を嫌う経産省や経団連の目論見通り、来年から毎年、家計の所得が 22万円ずつ減っていくと触れまわったマスメディアの罪は重い。今年6月の試算と共通するのは、無理して虚偽を積み重ねているので、発表した経産省が自分 の首を絞めている部分があることだ。25%減という大胆な排出削減を行なっても、経済は成長し、可処分所得は増えると、アンチ温暖化の経産省が認めている のだ。

 


早く賠償受け入れれば奨励金 中国列車事故、遺族反発

2011年07月26日 22時39分20秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)
2011年7月26日21時4分朝日COM

 中国浙江省温州の高速鉄道事故で、鉄道省などは26日、犠牲者の遺族に賠償することを決め、一部が50万元(約625万円)で合意したと公表した。早期 に賠償を受け入れた場合の「奨励金」を含んだ額だという。奨励金に反発の声も上がっており、ほかの遺族が受け入れるかは不透明だ。

 23日夜の脱線事故で親族が犠牲になった遺族の男性が、火葬場で顔を真っ赤にして声をあららげた。

 「人が死んで、奨励金とは何事だ。商売の話をしているんじゃない」。遺族の一人が50万元の賠償金を受け取ると報じられたが、短期間のうちに政府の賠償案にサインすれば金額が加算されるとの記述があった。

 政府の賠償案に合意した林エン(エンは品の口がそれぞれ火)さんの遺族によると、政府側に「通常の鉄道事故だと賠償は15万元だが、今回は一律に20万 元を上乗せする」と説明された。さらに列車事故保険の2万元や埋葬費を加え、50万元との差額を奨励金として支給すると言われたという。遺族は「政府は時 間と人員を節約し、遺族の問題を早期に解決しようとしているのだと思った」と話す。