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森羅万象 ~ 歩く印象派

石原不況

2012年11月27日 05時33分50秒 | 読んだ本・おすすめ本・映画・TV評

中国人エリートは日本人をこう見る [著]中島恵

[文]永江朗  [掲載]2012年11月23日(週刊朝日)

■中国人エリートと手を結ぶべきか?

 中国で日本車が売れなくなっている。影響は部品メーカーにまで及ぶ。「尖閣ショック」と呼ぶメディアもあるようだが、ぼくは「石原不況」と呼ぶべきだと思う。この際、責任の所在をはっきりさせよう。
 もっとも、すべての中国人が反日感情を抱いているかというと、そうでもない。すべての日本人が中国嫌いではないように。
 中島恵の『中国人エリートは日本人をこう見る』は、中国人若手エリート約百人に聞いた、日本観・日本人観である。
  びっくりしたのは、小泉元首相の人気がけっこう高いという話。靖国神社参拝で対立の種を蒔いた張本人ではないか、と思ったが、小泉のように白黒はっきりす るほうがわかりやすいということらしい。人気があるからといって、靖国神社参拝に賛成している中国人が多いということではない。
 登場するのは日本への留学生をはじめエリートたちだ。高い教育を受け、経済的にも恵まれている。都会育ちで、家庭環境もいい。
  彼らは冷静に日本と日本人、中国と中国人、そして世界を見ている。日本はいい国だといい、日本人に対してもよい感情を持っている。中国のGDPが日本を追 い抜いたことについても浮かれてはいない。国民一人当たりではまだ大差があるからだ。「中国に負けた」「日本はもうダメだ」と悲愴感ばかりの日本人よりも ずっとクールである(と、つい自虐的に悲愴感にひたってしまう)。
 しかし、親日的なのがエリート層だということに注意を払わなければならない。貧しい、地方の、高い教育を受けられない人びとは、反日的な感情を抱いているだろう。それは中国社会の矛盾かもしれないし、もしかするとその矛盾を政治が利用しているのかもしれない。
 国家間の対立を煽って状況がよくなることなどあり得ない。歴史を振り返ればそれは明らかだ。暴走老人よりも中国人エリートと手を結び、新しい日中関係を築いていくべきだ。


なぜ生産性を高めるほど経済は没落するのか

2012年11月23日 06時34分52秒 | 歩く印象派

 

 なぜ「お受験エリート」は間違えるのか――。「『皆が言っていること』を鵜呑みにして『事実』を見ようとしないからだ」と『デフレの正体』著者・藻谷浩介さんはいう。全国をくまなく歩き、現場を知悉する理論家が、日本経済に関わる疑問に答える。


 「労働生産性」とは、労働者1人当たりのアウトプットのことだ。「付加価値額」を労働者数で割ったものが労働生産性となる。

 労働生産性を上げるには、分子である付加価値額をブランド向上などの努力で増やすか、分母である労働者の数を機械化などで減らすという方法がある。ただ し、前者は容易ではない。このため結果的に、「生産性を向上させる」=「人員削減を進める」という単線的な考え方が広まってしまった。

 この問題を理解するには付加価値額について正確に知る必要がある。付加価値額とは、企業の利益に加え、企業が事業で使ったコストの一部を足したものだ。

 企業の利益が高まれば付加価値額は増えるが、最終的に収支がトントンでも、途中で「地元」に落ちる人件費や貸借料などのコストが多ければ、付加価値額は増える。

 なぜ利益だけでなく、地元に落ちるコストも付加価値に算入するのか。

 地域経済全体で見れば、大きなプラスになるからだ。地域経済が元気になれば、結局巡り巡って自分の業績も伸びる。江戸時代の商売人は直感的にこのことが わかっていて「金は天下の回り物」と言った。自分が使ったお金は誰かの儲けに回り、その儲けがお金として誰かに使われることで、自分の儲けに戻ってくる。 これこそが、「経済感覚」である。

 江戸時代の日本人も、付加価値の定義を考えた西洋人と同じ経済感覚をもっていたのである。

■人件費削減は付加価値率も下げる

 ところが日本で行われている生産性向上は、この逆である。「いくら生産年齢人口が減少しようとも、労働生産性さえ上げられれば、GDPは落ちない」とい う間違った命題が流布している。多くの企業は、人を減らし、人件費を減らし、コストダウンに邁進している。それは労働生産性の向上には結びつかない。まし てやリストラや雇い止めも当然であるかのような風潮は、経済感覚の欠落を意味している。それは、自己を破壊する行為なのだ。


 例を挙げよう。図版に7つの産業を並べている。このうち、付加価値率の最も高い産業はどれだろうか。

 正解は7番の「サービス」が最も付加価値率が高く、一番の「自動車」の付加価値率が最も低い。「ハイテク=高付加価値」と思いこんでいる人は多く、講演 でこのクイズを行うと、ほとんどの人が間違える。実際には、多くの人間を雇って効率化の難しいサービスを提供しているサービス業が、売り上げのわりに一番 人件費がかかるので、付加価値率が高くなるのである。

 労働者の数を減らすのに応じて、1人当たりの人件費を上昇させ、人件費の総額を保つようにすれば、付加価値額は減らない。あるいは人件費の減少分が企業 の利益(マージン)として残れば、付加価値額の全体は減らない。しかし生産年齢人口の減少を迎えている現在では、自動車や住宅、電気製品といった人口の頭 数に連動して売れる商品では、マージンは拡大するどころか下がっていく。

 退職者の増加に連動して会社の人件費総額を下げるのは当然のことになり、収益率と人件費率、すなわち付加価値額と付加価値率も下がり、生産性の向上は阻害されてしまう。

 日本企業が生産性を上げるには、人手をかけブランドを向上させることで、マージンを増やす方向に進む必要がある。

 ※すべて雑誌掲載当時

日本政策投資銀行 特任顧問 藻谷浩介 

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日本政策投資銀行 特任顧問 藻谷浩介(もたに・こうすけ)
1964年、山口県生まれ。88年東京大学法学部卒、同年日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)入行。米国コロンビア大学ビジネススクール留学、日本経済研究所出向などを経て、10年参事役、12年より現職。11年4月には政府の復興検討部会の委員に選ばれた。
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構成=上阪 徹 撮影=永井 浩


週のはじめに考える 私たちを侮辱するな

2012年11月18日 09時23分02秒 | 歩く印象派

 2012年11月18日  (東京新聞社説)

 見出しの「侮辱」とは極めて強い言葉です。ひどい扱いを受けた者の発する言葉です。政治にせよ、

原発にせよ、私たち国民は、侮辱されてはいないか。   手元に一通の手紙があります。学校で国語

を担当されていた元先生からです。この夏、東京であった脱原発の市民集会に出かけた時のことが記

されていました。 

 こんな内容です。 …何人もの演説の中、一番心に響いたのは作家の大江健三郎さんが述べた

「私たちは侮辱の中に生きている」という言葉でした。

◆大江さんのスピーチ   

その言葉は、大江さんも紹介していたそうですが、福井生まれの昭和の作家、中野重治の短編小説に

ある文句です。中野はプロレタリア文学で知られ、大戦前の思想統制では自身も激しい国家弾圧に遭

っています。   その短編小説は、昭和三(一九二八)年、全日本無産者芸術連盟(略称ナップ)の機

関誌に掲載された「春さきの風」。検挙された同志家族をモデルにしています。   思想をとがめられ

た検束で父とともに母と赤ん坊も警察署に連行される。その赤ちゃんの具合が悪くなる。ろくな手当

ても受けられずに亡くなってしまう。母親はもちろん医師を頼みましたが、無視された。理由のない

平手打ちを受けるばかり。   小説はそれらの動きを、きびきびとした文体で描き、最後は母親が留

置場の夫に手紙を書く場面で締めくくられます。   母親は砂を巻く春風の音の中、死んだ赤ん坊は

ケシ粒のように小さいと思う。そしてこう書く。   「わたしらは侮辱のなかに生きています。」

(「中野重治全集第一巻」筑摩書房より)   中野重治が実体験として記した侮辱という言葉、また

大江さんが原発に反対する集会で引いた侮辱という言葉、その意味は、もうお分かりでしょう。

◆デモクラシーの軽視   

権力が民衆を、国家が国民を、ほとんど人間扱いしていないのではないかという表現にちがいありま

せん。   つまり倫理違反なのです。   先日、東京電力は、原発事故時のテレビ会議記録を新たに公

開した。二回目の公開です。   その中に自家用車のバッテリーを集めるというやりとりがありました。

原子炉の圧力が上昇し、蒸気逃がし弁を動かすためバッテリーをつないで電源を確保しようというので

す。しかも足りなくて買うお金にも困る。   備えも何もなかったわけですから、社員らの苦労も分か

ります。しかし、これを知った福島の被災者らはどう思ったでしょう。   東電も国も、その程度の取

り組みと真剣さしかなかったのか。住民の守り方とはそのぐらいのものだったのか。言い換えれば、

それは侮辱に等しいでしょう。   侮辱は継続しています。しかもデモクラシー、民主主義の軽視とい

う形で。   原発で言えば、大飯の再稼働はろくな検証もなく、電気が足りなくなりそうだという理由

だけで決まりました。国民の安全がかかわる問題なのに、これほど非民主的な決定は前例がないでしょ

う。   沖縄へのオスプレイ配備も、米兵事件に対するその場しのぎの対応も侮辱にほかなりません。

国家が人間を軽視しているのです。   原発から離れれば、一票の格差を放置してきた国会とは、デモ

クラシーの不在も同然です。立法府だけではなく、最高裁が「違憲状態」と判示しつつ、違憲であると

踏み込めなかったことは、憲法の番人としての責務を果たしえたか。疑問は残ります。   今の政治に

は、ほとほとあきれたと多くの人が口にします。それはおそらくはデモクラシーの軽視に起因している

ことで、国民は自分の権利の蹂躙(じゅうりん)を痛々しく感じているのです。政治に侮辱されている

と言ってもいいでしょう。   その状況を変えるには、何より変えようという意思を各人がもつことで

す。デモや集会はその表れの一つであり、選挙こそはその重要な手段です。

◆戦うべき相手はだれ   

冒頭の国語の先生の手紙は今、自分の抱える恐ろしさをこんなふうに表していました。 

 …(中野重治の)戦前と違って現代は戦うべき相手の姿が明確に浮かび上がらない分、かえって恐ろ

しさを感じます…。   戦うべき相手は広範で、しかも悪賢く、しっぽすらつかませないかもしれませ

ん。政財官などにまたがる、もやもやとした霧のようなものかもしれない。   しかし、こう思ってそ

の相手を見つけようではありませんか。一体だれが私を侮辱しているのか、と。私たち自身の中にそれ

は忍び込んでいないか、と。投票の前に見つけようではありませんか。


市立図書館と和光大が相互利用協定、専門書の貸し出しも/川崎

2012年11月12日 06時25分30秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)
2011年3月4日

 川崎市立図書館と和光大学付属梅根記念図書・情報館(東京都町田市)は、3月から図書館の相互利用を始めている。川崎市内に七つある市立図書館と同大付属図書館による協力貸出に関する確認書の調印式が4日、同大学で行われた。

 同大付属図書館には、人文・社会科学分野の資料を中心に、和洋図書47万冊や雑誌5千種などが所蔵されている。キャンパスの敷地が川崎市麻生区岡上にも またがることから、市民の利用を進め、高校生以上の利用者が同大付属図書館の資料を閲覧などできる覚書を2007年に市立図書館と交わした。

 今回、新たに協定を結んだことで、利用者は最寄りの市立図書館のカウンターで申し込めば、大学図書館所蔵の専門書などを借りられるようになった。川崎市 では初めての試み。利用できるのは、市立図書館や県内の公立図書館が所蔵していない資料に限られる。同大学生や教職員も、キャンパスにいながらにして、市 立図書館の蔵書を利用できる。蔵書の運搬は、第1・第3金曜の午前中に市立図書館の車両が行う。

 市立図書館は専門書や教育関係の本の利用が増えることを見込んでおり、「一層協力関係を深めて、市民によりよいサービスを提供していきたい」と話していた。問い合わせは市立麻生図書館電話044(951)1305。 


県立図書館閲覧・貸し出し廃止検討、再考求める声広がる/神奈川

2012年11月12日 05時57分47秒 | 時事スクラップブック(論評は短め)

11月11日(日)19時15分配信

 
 
県教委が廃止方針を表明した県立図書館=横浜市西区

 県立図書館における貸し出しと閲覧について、廃止検討を打ち出した県教育委員会。横浜、川崎の特色ある2館は、豊富な蔵書を誇り、半世紀以上にわたり県 民の「知の拠点」という役割を担ってきただけに、利用者は困惑し落胆を隠せない。唐突ともいえる県教委の方針表明は、県の緊急財政対策のしわ寄せを受けた 形。再考を求める声が広がっている。

 緑豊かな落ち着いた雰囲気に包まれた横浜市西区紅葉ケ丘の県立図書館。横浜市南区の男性(55)は「とても残念」と失望を隠さない。現在は失業中で、再 就職に向けて週5日ほど利用し、コンピューター関連の本を読む。混雑しがちな近隣の横浜市中央図書館に比べて「静かで利用しやすく、気に入っていた。削る べき経費はほかにあるはず。なぜ図書館なんだ」と憤る。

 同市戸塚区のアルバイト女性(21)も困惑する。月に1日ほど足を運び、本を借り、自習室で英検の勉強をする。地元にも図書館はあるが、「(県立図書館 は)蔵書が豊富で小説などの古い本があり、利用できなくなると困る。自習室を使えなくなるのも悲しい」と利用廃止の再考を求める。

 週に2日以上利用するという同市磯子区の研究職男性(76)。落ち着いた雰囲気が調査・研究に向いており、「今後の活動に大きな支障が出る」と訴える。資格試験の準備などで利用している人も多いだけに「学習意欲をそがれてしまう人も多いのでは」と話した。

 一方、全国トップクラス、1万5千冊以上の会社史(社史)を所蔵する県立川崎図書館。その特色を生かし、図書館機能にとどまらぬ貴重な存在になっている。

 たとえば、高度経済成長期に入る1961年には、同図書館を拠点に周辺の企業の資料室担当者らが「京浜地区資料室運営協議会」を設立。後に県資料室研究 会として発展し、現在は県内企業、研究機関の資料室や知的財産部門を持つ県内企業を中心に90を超える機関が加盟している。事務局は同図書館に置かれ、企 業間連携の取り組みや社史の研究の場にもなっている。

 こうした経緯もあり、民間企業の技術者らの来館が多い。長年にわたり同図書館を利用している企業関係者は「科学技術の発展や最先端の研究を形にした書籍や文献からは、情報を年代ごとに、系統立てて入手することができる」と話す。

 同図書館と並び、国内有数の社史の所蔵で知られる大阪府立中之島図書館(大阪市北区)とは「社史グランプリ」を共同企画。「工都」と「商都」に立地する特色ある図書館ならではの魅力を発信している。

 利用者は「貴重な蔵書はもちろん、図書(情報)の収集、整理、提供といったノウハウ、機能は残してほしい」と訴えた。


2億1500万年前に巨大隕石=木曽川地層に証拠―大絶滅の原因か・鹿児島大など

2012年11月06日 06時19分49秒 | 地球の不思議・宇宙の不思議

時事通信 11月6日(火)6時7分配信

 約2億1500万年前にアンモナイトなどが絶滅した原因とみられる巨大隕石(いんせき)衝突の証拠を、鹿児島大などの研究チームが5日までに発見した。 隕石と絶滅の関係では、恐竜などを滅ぼした中生代白亜紀末(約6500万年前)の隕石衝突が有名だが、衝突の証拠を捉えたのは珍しいという。論文は米科学 アカデミー紀要電子版に掲載される。
 古生代三畳紀後期(約2億~2億3700万年前)には、アンモナイトなどの種が大規模に絶滅した。カナダ・ケベック州のマニクアガンクレーターを作った直径数キロ規模の巨大隕石衝突が原因の一つとされるが、衝突の証拠が見つかっていなかった。
 鹿児島大の尾上哲治助教らの研究チームは、岐阜県坂祝町の木曽川河床の地層を採取。鉱物などを詳しく調べた結果、地球の表層にほとんどなく、隕石に特有 のイリジウムなど6種類の白金属元素を、通常の50~2000倍の濃度で検出した。白亜紀末の地層で見られる特殊な鉱物も含まれており、衝突で巻き上がっ たちりが降り積もったと分かった。
 地層の上下には海洋プランクトン類の化石も含まれており、衝突時期を約2億1500万年前と特定。北米付近でアンモナイトや哺乳類型は虫類などの大規模絶滅が起きた時期に当たるという。