小中学校で机の天板を大きくする動きが広がっているという。 タブレット端末などを使う授業が増え
従来の机だと教材を置くスペースが足りないためだ。 教育現場を取材した記録を見てみた。
12月、渋谷区立千駄谷小学校(東京・渋谷)。 6年生の国語の授業をのぞくと、児童は紙の教材で説
明文を読んで、タブレット端末で感想を打ち込んでいた。 その感想は前方のモニターに映し出さ
れた。 記者(24)の小学校時代とは様変わりの授業風景に驚いたという。
児童の机に目を向けると、天板を大きくする着脱式の拡張ツールが取り付けられた。 同校が全クラ
スで導入したのは学校用品などを手がける内田洋行の「天板拡張くん」。 奥行きを10㌢長くす
ることができる。 モノを落としにくいように前方と左右に落下防止ガードが付いている。
歴史や政治・国際の教科書、資料集、ノート、文房具、タブレット端末‥‥。 6年生の"Tさん"に最
も教材が多い社会科の授業中の机を再現してもらうと、従来の机では今にもどれかが落ちてしまい
そうな量だ。 拡張ツールがあると「『また鉛筆が落ちた』というのがなくなり集中力が途切れな
い」とTさん。 同級生の"Mさん"も「昔はテスト用紙を折り曲げていたけれど、今はそのまま広
げられる」と笑顔で話してくれた。
学校机のサイズが決まったのは1952年。 旧JIS(日本産業規格)で天板は横60㌢、奥行き40
㌢と定められた。 98年から99年の学習指導要領の改正を機に、教科書サイズも大きくなった。
これに伴い、新JISで標準の目安とされるサイズは横65㌢、奥行き45㌢に拡大した。 面積
にすると約2割増だ。
国立教育政策研究所文教施設研究センターの調査(公立の小中学校335校が回答)によると、2020年
9月時点で新JISの机を使っている学校は5割強と、旧JISを使っている学校(45.%)を上回る。
すべての学校が厳密に新JISに合わせているわけではないが、「拡張ツールなどを使い天板を大
きくする学校はじわりと増えている」(内田洋行・学びのプロダクト課の中村さん)ようだ。
大きな契機は国が19年に打ち出した、小中学生に1人1台端末を配布する「GIGAスクール構想」だ。
新型コロナウイルス過でオンライン授業が必要となり、端末の配備は当初計画より前倒しになった。
教育現場でICT(情報通信技術)の利用が急速に進んだ。
しかし、学校での対面授業の再開後、タブレット端末やPCを机の上に置くと、その他の教材が広げ
られないなどの問題が明らかになった。 文教施設研究センターの調査では、旧JISの天板を使
っている小中学校の約8割でICT利用時に支障をきたしていると回答している。
京都教育大学付属桃山小学校(京都市)は19年から4年生以上の机の天板を大きくし、横70㌢、奥
行き50㌢のサイズに変更した。 熱中症対策で水筒も置けるよう十分なスペースを確保した。
椅子も取り換え、キャスター付きのオフィスチェアを導入した。 高さを自由に調節できるほか、
座面も回転する。「児童同士が積極的に意見を交わしやすくなった」と副校長の"桑名さん"は指摘
する。 同校は25年にタブレット端末とPCの1人2台を持ちを計画している(5年生以上)。
一方、机が大きくなるにつれ課題も浮上している。 教室の通路が狭くなるため、児童が机にぶつ
かって転ぶといったことが起きやすい。 千葉工業大学創造工学部の教授、"橋本さん"は「災害
が起きた時に避難経路を確保できるか、転ばないかを確認してから机のサイズを決めた方がよい
」と指摘している。
学校の教室の多くは横8㍍。縦8㍍(64平方㍍)の広さ。 1クラス35人としても机を大きくし
過ぎると、先生が教室を回って指導するのが難しくなる。 コロナ禍が一服しても机同士を離し
たままにする学校も比較的多く、これも教室の狭さに拍車をかける。
千駄谷小学校が採用したような着脱式の拡張ツールが着目されている背景には、こうした事情もあ
る。 天板ごと取り換えるのに比べ、コストも抑えられる。 文具大手コクヨも奥行きを5㌢長
くする「つくえ+」を販売している。
教育現場ではデジタル教科書の導入が進んでいる。 普及すれば紙の教科書が減るため、机の天板
を大きくする必要性は薄れるかもしれない。 一方、大きい方がストレスを感じにくく、快適に
勉強できるという児童もいる。 どの程度の大きさがベストなのか。 模索は続きそうだ。
従来の机だと教材を置くスペースが足りないためだ。 教育現場を取材した記録を見てみた。
12月、渋谷区立千駄谷小学校(東京・渋谷)。 6年生の国語の授業をのぞくと、児童は紙の教材で説
明文を読んで、タブレット端末で感想を打ち込んでいた。 その感想は前方のモニターに映し出さ
れた。 記者(24)の小学校時代とは様変わりの授業風景に驚いたという。
児童の机に目を向けると、天板を大きくする着脱式の拡張ツールが取り付けられた。 同校が全クラ
スで導入したのは学校用品などを手がける内田洋行の「天板拡張くん」。 奥行きを10㌢長くす
ることができる。 モノを落としにくいように前方と左右に落下防止ガードが付いている。
歴史や政治・国際の教科書、資料集、ノート、文房具、タブレット端末‥‥。 6年生の"Tさん"に最
も教材が多い社会科の授業中の机を再現してもらうと、従来の机では今にもどれかが落ちてしまい
そうな量だ。 拡張ツールがあると「『また鉛筆が落ちた』というのがなくなり集中力が途切れな
い」とTさん。 同級生の"Mさん"も「昔はテスト用紙を折り曲げていたけれど、今はそのまま広
げられる」と笑顔で話してくれた。
学校机のサイズが決まったのは1952年。 旧JIS(日本産業規格)で天板は横60㌢、奥行き40
㌢と定められた。 98年から99年の学習指導要領の改正を機に、教科書サイズも大きくなった。
これに伴い、新JISで標準の目安とされるサイズは横65㌢、奥行き45㌢に拡大した。 面積
にすると約2割増だ。
国立教育政策研究所文教施設研究センターの調査(公立の小中学校335校が回答)によると、2020年
9月時点で新JISの机を使っている学校は5割強と、旧JISを使っている学校(45.%)を上回る。
すべての学校が厳密に新JISに合わせているわけではないが、「拡張ツールなどを使い天板を大
きくする学校はじわりと増えている」(内田洋行・学びのプロダクト課の中村さん)ようだ。
大きな契機は国が19年に打ち出した、小中学生に1人1台端末を配布する「GIGAスクール構想」だ。
新型コロナウイルス過でオンライン授業が必要となり、端末の配備は当初計画より前倒しになった。
教育現場でICT(情報通信技術)の利用が急速に進んだ。
しかし、学校での対面授業の再開後、タブレット端末やPCを机の上に置くと、その他の教材が広げ
られないなどの問題が明らかになった。 文教施設研究センターの調査では、旧JISの天板を使
っている小中学校の約8割でICT利用時に支障をきたしていると回答している。
京都教育大学付属桃山小学校(京都市)は19年から4年生以上の机の天板を大きくし、横70㌢、奥
行き50㌢のサイズに変更した。 熱中症対策で水筒も置けるよう十分なスペースを確保した。
椅子も取り換え、キャスター付きのオフィスチェアを導入した。 高さを自由に調節できるほか、
座面も回転する。「児童同士が積極的に意見を交わしやすくなった」と副校長の"桑名さん"は指摘
する。 同校は25年にタブレット端末とPCの1人2台を持ちを計画している(5年生以上)。
一方、机が大きくなるにつれ課題も浮上している。 教室の通路が狭くなるため、児童が机にぶつ
かって転ぶといったことが起きやすい。 千葉工業大学創造工学部の教授、"橋本さん"は「災害
が起きた時に避難経路を確保できるか、転ばないかを確認してから机のサイズを決めた方がよい
」と指摘している。
学校の教室の多くは横8㍍。縦8㍍(64平方㍍)の広さ。 1クラス35人としても机を大きくし
過ぎると、先生が教室を回って指導するのが難しくなる。 コロナ禍が一服しても机同士を離し
たままにする学校も比較的多く、これも教室の狭さに拍車をかける。
千駄谷小学校が採用したような着脱式の拡張ツールが着目されている背景には、こうした事情もあ
る。 天板ごと取り換えるのに比べ、コストも抑えられる。 文具大手コクヨも奥行きを5㌢長
くする「つくえ+」を販売している。
教育現場ではデジタル教科書の導入が進んでいる。 普及すれば紙の教科書が減るため、机の天板
を大きくする必要性は薄れるかもしれない。 一方、大きい方がストレスを感じにくく、快適に
勉強できるという児童もいる。 どの程度の大きさがベストなのか。 模索は続きそうだ。