8・原子の姿、って
逆電荷が引きつけ合い、同電荷がはじき合うという、電気による磁石のような効果を、クーロン力という。
陽子(+)と電子(-)はクーロン力でお互いに引き寄せられ、くっつき合う・・・かと思いきや、まんま磁石のようにはくっつかない。
電子は、ほぼ光速というとんでもないスピードで飛びつづける定めなので、陽子の引力圏に取り込まれながら、角運動量による遠心力で、陽子の・・・つまり水素原子核の周囲をぐるぐると回る軌道に安住の地を見出す。
元素周期表の筆頭、輝かしい背番号1をつける水素原子の出来上がり!というわけだ。
こんな様式で、原子核の外側を(惑星をめぐる衛星のように)周回するのが、原子の古典的なモデルだ。
ところが、例によって量子的な実相はそうじゃない。
量子物理学の説明によれば、電子は原子核の周囲を「回る」ことはしない。
確率的な軌道上のあちこちいたるところに分身したかのように同時にいるし、どの位置にも姿はないとも言える。
つまり、運動量があるためにそこに存在してるとは言えるんだけど、肝心の実体はどこにもなく、いる場所を特定しようとすると運動量が無限大となってパンクしてしまう。
素粒子とは、不確定性原理と波動関数という純粋数学上の存在なんだ。
無、なんであり、そこには計算式があるばかりなんだ。
が、確かに電子は実在する。
エネルギーという形式で質量が割り出せるので、そのへんにはいる、とするしかない。
そこで仕方なく、最近の原子モデルでは、電子は原子核を取り巻く雲として視覚化される。
この雲の形は、波動方程式の解を座標化して集合させたものなんで、「電子がいると思われる場所」を確率的に表すには正確なんだけど、言ったようにそこに電子はいるともいないとも言えないわけで、まあこの先は哲学の領分に入るんである。
とにかく、そんな形の水素原子ができたんだった。
つづく
東京都練馬区・陶芸教室/森魚工房 in 大泉学園