野々池周辺散策

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飛燕の記事

2022-09-03 06:24:52 | 日常生活
9月1日付けのFBを眺めていると、RSK山陽放送の「戦闘機「飛燕」が伝える戦争 動き出した復元プロジェクト「戦争の理不尽さ後世に」【岡山】」と言う記事があった。ニューギニア島のジャングルで発見された機体 をインターネットオークションで見つけ、その復元に取り組んでいる人の紹介記事だ。世の中には色んな考えの人がいるんだな、と感心しながら新聞記事を読んだが、「飛燕」と言えば、6年ほど前の2016年、神戸ポートターミナルの大ホールで、川重創立120周年記念展として、太平洋戦争時、当時の陸軍戦闘機の一つで、旧川﨑航空機製の戦闘機「飛燕」が展示されていたので、見物に行ったときの印象を、当ブログに投稿していたのを思い出し、再稿してみた。 

「飛燕の排気管と過給機空気取り入れ口」
神戸ポートターミナルの大ホールで、川重創立120周年記念展として、太平洋戦争時、当時の陸軍戦闘機の一つで、旧川﨑航空機製の戦闘機「飛燕」が展示されているので、見物に行った。記念展の表題は「世界最速にかけた誇り高き情熱」としてあった。同展を紹介する、幾多のメディア記事の多くが、展示された「飛燕」は国内で唯一現存している機体で、米軍が接収した後、昨年まで鹿児島県の知覧特攻平和会館で展示されていたが傷みが目立ち、同社岐阜工場で約1年間、修復作業が進められていた機体で、今回の120周年に合わせて展示されたものと説明している。だけど、記念展パンフレットの一番最初に「世界最速にかけた誇り高き情熱」とあったので、それに類する記述部分を場内で探したが見つけることができず、あったのは動画の一部に「過給機」によってエンジン出力を向上させたと説明があったので、「世界最速」と言う意味は「過給機」の開発を意味し、その流れの一環で「飛燕」のエンジンである「ハ40」から最新のカワサキ製二輪で「過給機」を装着した「NinjaH2R」の展示へと繋がっていると理解した。そうは言っても、実際の展示物は、記念展の主題はレストアされた「飛燕」がメインで、かつその一部に「飛燕」に搭載された内燃機関「ハー40」があり、その中の一部品である「フルカン式接手過給機」がある。そして出口の別仕切り部屋に「過給機」の一種である「スーパーチャージャー」搭載の二輪車へとつながるようになっていた。丁寧にレストアされた飛燕のフルカン接手遠心式過給機が大きく展示されている一方、戦時中の過給機開発の誇り高き情熱の流れの延長上にあると思われる、最新式二輪の過給機の説明や展示は一切無く拍子抜けしてしまった。今回の120周年では、あくまで「飛燕」が主役、最新式二輪は脇役として展示されていたようにも感じられた。
     「飛燕エンジンと左側面の過給機」
 
ところで、「世界最速にかけた誇り」としての「飛燕」は世界最速を第一に開発されたのかに興味があって、30年ほど前に購入した単行本「戦闘機 飛燕 掟 義郎著」を文庫棚から取り出し再読してみた。合わせて「三式戦闘機」をウキペディアで読んでみた。ウキペディアの緒言には「当時の日本唯一の量産型液冷戦闘機である。防弾装備のない試作機は最高速度590km/hを発揮したが、防弾装備や燃料タンク等を追加した量産機では鈍重な戦闘機になり下がり、アメリカ軍に「もっとも食いやすい(つまりアメリカ軍にとっては攻撃し易い)戦闘機」という印象を与えている。基礎工業力の低かった当時の日本にとって不慣れな液冷エンジンハ40は生産・整備ともに苦労が多く、常に故障に悩まされた戦闘機としても知られる。(略)そこで星型空冷エンジンを急遽搭載した日本陸軍最後の制式戦闘機、五式戦闘機が生産された」とある。敵国の航空機に比べて有利な空戦を行う為には戦闘能力の向上こそが命題で、最高速を主眼に求めるものでは決してなかったとあるが、飛燕の試作機は同時期の日本戦闘機よりも最高速で勝っていた(量産機の最高速は遅くなったとあるが)との記述もある。主任設計者の土井さんによると「液冷戦闘機の抵抗面積は空冷戦闘機に比べて20%程度も減少し、速度は6%向上する」とあるので、飛燕の最高速は機体のスリム化によって達成されたようだ。

戦時中、唯一の液冷エンジンだった「飛燕」のエンジン「ハ40」について、「戦闘機 飛燕 掟 義郎著」に興味ある記述がある。例えば「ハ40」は超有名なドイツの戦闘機「メッサーシュミット」に使用されたダイムラーベンツ社製の戦闘機エンジン「DB601」からライセンスを受けて生産したものだが、この高性能エンジンの購入をめぐって帝国陸海軍は役所同士の実にくだらない官僚的縄張り争いでドイツ側の嘲笑を浴びたそうだ。当時の陸海軍は国家の杞憂より勢力争いに終始し、結局、陸海軍別々にライセンス料を支払うという国費の無駄づかいに当時のヒトラーが失笑したという情けない記述もある。また、最も苦労したのは当時世界にただ一つしかない燃料噴射ポンプの実物をドイツから日本に輸送する箱根丸の臨検のくだりも面白い。だが、当時世界最高レベルにあった、ダイムラー社の「DB601」を国産化するには当時の日本の技術力では如何ともしがたい生産技術上の遅れがあった。その代表がクランク軸のローラー・ベアリング(参考:動かぬ無機物も好きな人)で、大端ベアリングのローラー端の仕上げ工程が均一ではなかったので、大荷重が負荷されたときの弾性変形によって端部に異常な力が掛かり疲労破損が生じたこと。またニッケルを使用しないクランク軸も疲労強度が弱かった。ダイムラー社もニッケルレスのクランクを使用したが窒化処理で強度を高めていたようだ。このように、ダイムラーベンツは斬新なことをやっているが日本の工作技術では製造困難の懸念があり、当時、交渉担当だった川航パリ駐在員林貞助技師はダイムラーエンジン導入には難色を示めした等が記述されている。また、今回の主役の一つである、フルカン接手遠心式過給機にも大きな問題を抱えていた。フルカン接手の調整不良によりエンジン出力が一定しないという大問題を抱え故障の連続で、所謂整備士泣かせの「ハ40」は上記本では不運なエンジンだとして記述されている。また、過給機の防塵対策も大変だったようで、強烈な太陽の乾ききった南方の砂塵が大敵で、展示されていた過給機の入り口には金網が張ってあったが、南方現地での過給機防塵対策に苦慮したとある。結局一兵卒の提案「へちま」が以外にも好結果があり、へちまの多量調達に至った等の記述もあり、現地整備士泣かせのエンジンだったようだ。優れた素質の片鱗もありながらも、エンジン不具合に泣かされて飛び立つこともできず、どこからともなく油が漏れ、フルカン接手の軸折れや調整不良によるエンジン出力不足、燃料噴射ポンプの故障などの対策で、明石工場は大混乱をきたし、結局液冷エンジンを諦めざるを得ず、三菱の空冷エンジン搭載となった、五式戦闘機は非常に強い戦闘機に変身したとある。

一方、過給機を装着した二輪2機種が「飛燕」の横にひっそりと置かれていた、一つはターボ式過給機搭載の二輪と機械駆動式過給機(スーパーチャージャー)搭載の二輪車。「飛燕」の過給機と最新式ターボ過給や機械式過給機の関連説明を探したが見つける事ができずじまいだった。最新式過給機を搭載した「NinjaH2R」は遊星歯車(だったか?)で増速駆動した過給機(スーパーチャージャー)で、”KAWASAKI USA”と言うフェイスブックに、「NinjaH2R」がアメリカのボンネビル・スピードウィークで最高速チャレンジした記事があった。この記事によると、最高速は220マイル(352㎞/h)とあった。昨年も同コースで最高速チャレンジを実施したらしく、今年は昨年よりか若干最高速の向上があった由(ホンダも同じ頃、ボンネビルで最高速チャレンジを実施したと本田技研工業のHPに記載されたが、「NinjaH2R」の最高速チャレンジの件はカワサキのHPには記載されていないので最高速データの真偽は不明)。
  「FB"KAWASAKI USA"」
ところで、ボンネビル挑戦時の「NinjaH2R」の最高速352㎞/hの値は、二輪ロードレースの最高峰MotoGPマシンではごく標準的な値で、MotoGPの最高速は、ボンネビルのように最高速狙いの長い直線コースではなく通常のサーキット走行中の速度であり、加えてMotoGPマシンは過給機の装着していないマシンでの350㎞/h(ロードレースでは、最高速の早い車が必ずしも優れたマシンとしては直結しないと言われている)を考慮すると、過給機を装着した「NinjaH2R」が現時点では特段に速い車ではなさそうだ。さすれば、120周年の表題である「世界最速にかけた誇り高き情熱」は今後もチャレンジ続ける情熱を持ち続けるという意味なのかもしれない。更に加えて驚いた事と言えば、「NinjaH2R」マシンを眺めながら気が付いたが、このマシンの先頭カウリング部分に川重が戦前から使用していたロゴマーク「リバーマーク」が張ってあった。「リバーマーク」と言えば、カワサキ製車両やカワサキ製橋梁等に貼り付けていたものと一緒で、リバーマークに重厚長大のイメージを持つ人たちにとっては二輪のリバーマークには馴染めなかった。これからのカワサキ製二輪はリバーマークが全車つくんだろうか。加えて、「NinjaH2R」のH2Rとは何を意味するのだろうか。カワサキのH2Rと言えば、1970年代に活躍した2サイクルエンジン搭載の750㏄レーサーがよく知られているが、「NinjaH2R」とどんな関係があるのか疑問を持ちながら展示場を後にした。

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