10月25日の全日本モトクロス選手権 最終戦、菅生GP大会をパソコン観戦した。
前回の関東大会をパソコン観戦し、最終戦までチャンピオン争いは持ちこされたので、今回のレースを楽しみにしていた。
250ccクラスは関東大会においてホンダワークスの富田選手がダントツの速さでチャンピオンを決定させたが、
一方、450ccクラスは混戦状態が続き、スズキワークスの小島、熱田両選手のチャンピオン争いとなっている。
しかし、菅生大会はGP大会となっており、全日本ライセンスのない外国選手が出場できるので、今回も、ホンダ、
ヤマハの両ワークスから出場することになり、チャンピオン争いに大番狂わせが起こる可能性は少なくなった。
今や世界のモトクロス選手の実力から完全に蚊帳の外に置かれている日本のワークス選手が、日頃から戦い慣れたコース(菅生)で、
日本選手が優位に立てる条件の下で、菅生のコースに馴染みのない外国選手がどの様な戦いをするのをか楽しみにパソコン観戦した。
日本のワークス選手が海外のワークス選手にどれほど肉薄した戦いができるか興味津津だった。
ところがである。前日土曜日からの公式練習や公式予選結果等のパソコンから流れてくるネット情報は、日本人ワークスライダーに
とって惨めな物だった。ただただ、外人ライダーは凄い(スゲー)、速い(ハエー)という単語しかネットに出てこない。
日曜日、全日本GP当日、天候は晴れ、風強くやや寒いとの情報。
観客の入りは上々。海外のワークスライダー参戦と言う事もあって、多くのモトクロスファンが菅生に来たようだ。
「全日本MXダースポ速報 」
で、ヒート1、2を目を凝らしてMFJライブタイミングにツイッターやFBを見た。結果は、250cc、450ccとも外人ライダーの圧勝!!
日本人ワークスライダーは外人ライダーに付けいる隙もなく、25、6年前にも似たような場面を見たような記憶が蘇ってきた。
その昔の時代、毎年開催された日本でのスーパークロスレースや全日本選手権に外国ワークスライダーが参戦する時期を境に、
日本選手のレベルは毎年格段に向上し、日本トップライダーは外人ライダーに肉薄するようなレベル近くまでに向上していた。
しかし、今回のライブタイミングをみると、日本人ワークスライダーも周遅れになった事実を見るに、レベル差は後退し更に一段と開いたと感じる。
まさに、先月開催された、Motocross of Nations(国別モトクロス選手権大会)の結果と全く同じで、日本チームは海外チームに全く歯が立たない。
その時は、戦い慣れていない海外でのコースハンディもあるのかなと思っていたが、今回の菅生GPをみると、コースへの慣れ不慣れどころか、
それ以前の実力差が如何ともし難いほど開きがあることを見せられた。 20年ほど前からレベルが一段と退化しているようにも感じられる。
全日本モトクロス選手権が海外から隔離した狭いコップの中の競争に終始し、これが海外との実力差が付いた主因のように思われてしまう。
こうして、海外ライダーとの実力差を現実のものとしてファンが見てしまうと、これではMFJの目標でもある、海外選手に肉薄すると言うにはほど遠い。
ところで一方、今日(25日)の日経Web刊に「
代表の4年後に潜むワナ 危機感のパス、つながるか 」と言う記事があった。
今、最大の人気スポーツとして急上昇している日本ラグビーチームのことである。それには、「日本ラグビーを盛り上げることを償いとしてやってきた」として、
「償い――。スポーツの選手の試合後の談話としては、そうそう聞ける言葉ではない。期待された前回大会で1勝も挙げられず、ファンを失望させたという自責の念は、
自分を罪人と感じるほどに強かった。(略)・・ 今回、選手が抱いていた覚悟は日本の大きな強みだったといえる。注目を浴びる自国大会とはいえ、
4年後のチームも同じ心境でW杯に臨めるかどうかは重要な課題になる。」つまり、人気スポーツに急上昇してきたラクビーチームの危機感である。
その少し前、成程と思う記事があった。10月13日NHKの「しぶ5時」で取りあげていたラクビー日本代表チーム 帰国報告でのこと。
『こうした日本出身選手と外国出身選手が一体となって達成した偉業に、心を動かされたのがヤマハ発動機の清宮克幸監督だ。
20日夜に出演したNHK「サンデースポーツ」で、率直な思いを口にした。
「ラグビー観とか人生観が変わりました。私は常々、日本のラグビーのためになるにはどうしたらよいか、ということを口にしていた。
選手の中に日本人が何人いなきゃだめだとか、監督やスタッフが日本人じゃなきゃだめだとか、そういった発言をしてきたんですが、実にささいなこと。
そんなことにこだわっていても仕方がない、と試合を見て感じてしまったんです』
日本代表のチームの活躍に、ヤマハ(発)清宮克幸監督はラグビー“日本人純血”主義を「ささいなこと」としたと言う記事だった。
何故日本代表ラクビーチームの過去の日本人純血主義を取りあげたかと言うと、全日本MXワークスが日本人に拘りすぎではないのかと言う思いを捨てがたいからだ。
かっての一時期、全日本モトクロス選手権ではカワサキとスズキがアメリカンライダーをワークス参戦させていた事があった。
その時のことをカワサキから全日本に参戦していたJEFF MATIASEVICHがRacerXonlineに語ったインタビュー 記事「
BETWEEN THE MOTOS: JEFF MATIASEVICH」がある。
「カワサキでレースに専念できたことが一番素晴らしい時代だった。特に1995、‘96、’97と日本のカワサキワークスチームと契約し全日本のチャンピオンシップに勝ったこと。
日本でレースに専念できた3年間は、私の経験したなかでも最高の時間だった。日本のサポート体制は最高だった。カワサキのワークスバイク驚くほど素晴らしく、
要求するものはなんでもカワサキはトライしてくれた。 他のカワサキワークスバイクより2年も先行する優れた仕様を採用してくれた。それは5年後量産移行する仕様だ。
驚くほど素晴らしいバイクをカワサキは用意してくれた」「私は1986年にプロに転向し、1998年に引退した。この間、最高の契約条件は日本のカワサキとの契約だった。
私のキャリアの中で最高の3年間だった」
彼は、彼なりに全日本で活躍することがカワサキのためになることを知っていた。それは結果的に全日本モトクロス界の活性化に繋がり、日本人選手の技能向上に繋がった。
その裏付けの客観的評価は何度も書いたが、当時のカワサキの元ワークス榎本選手が「ダートスポーツ」 の『砂煙の追憶』に、含蓄のある発言をしている。
それには『彼らにしてみれば全日本で走るのは出稼ぎだったかもしれないが、彼らが思っている以上に結果として多くのものを残してくれたはず。
受け継がずに過去のものにするのは、あまりにももったいない。育つものも育たない』と。こうしてみると、全日本ワークスが日本人純血主義に拘っているかのように見えるのは、
日本ラクビーチームにかってあり、清宮監督の言う「ささいなこと」に該当するかもしれない。
グローバル時代とよばれ、日本の国技である相撲もしかり、プロスポーツ界では外人選手と日本人選手の垣根をなくし、交流を盛んにすることで共に技量UPを図っている。
そこで勝ち進む実力のある選手こそが世界を席捲できるはずだが、日常的に世界と戦って成長している「Motocross of Nations」の選手と比較すれば、
日本村から中々脱しきれない状態にある現実を、多くの日本のモトクロスファンも選手達も気が付いてしまって久しい環境を、何とはなしに寂しさを感じてしまう。
さりとえ、全日本に外人ライダーを走らせることへの抵抗勢力は依然としてあるのも事実のようで、日本人を優先しないことのやっかみでもあるのだろうか、
ルールに則った競争世界で、国粋主義でもあるまいしと思いながらも、日本人は異文化を上手に取り込むことで、文化的にも経済的にも成長してきた歴史があるのに、
何とも情けない話を風評に流す暇な人種もいるのかと思ったりで、どこの世界にも既得権益はあるんだなと。
そしてのど元過ぎれば元に戻り、来年がまた再びきて、外人ライダーは凄いよねと繰り返すのだろうか。