18日のダイヤモンド オンライン記事に、「ホンダが弱点のアフリカに戦略車を投入」とあった。
いよいよ、ホンダ二輪がアフリカに本格的攻勢をかけるようだ。
ホンダは1980年初頭に、ナイジェリアで二輪車工場を立ち上げ、アフリカの二輪市場に参入していたと、記憶している。アフリカ市場は中国メーカーによる低価格帯商品の投入で市場は拡大しており、ホンダも低価格商品で市場の90%を占める中国製品との本格的競争にのりだすのだろう。中国資本が育てた市場を、ホンダがより強烈な戦略機種を持って本格的に参戦する。10数年後に向けて熾烈な二輪市場獲得戦争が始まった。
この戦争、ホンダが勝利すると思う。
2000年初頭のベトナム市場では、中国資本が低価格二輪車をもって参入し、一時的には圧倒的シェアを拡大した時期があった。その頃のベトナムの二輪市場を見る機会があった。旧タイカワサキがベトナムに進出し、ベトナムに組立工場を建てた時期だ。タイでは評判の悪かった小型モペットが小柄なベトナム女性(ベトナム女性のバイク利用は高い)には好評で、そのモペットをベトナムで本格生産する計画だった。販売店や路地裏のモペット修理屋と部品屋が集合した地域がアチコチに点在しており、その数カ所見る機会があったが、当時どの販売店も中国製の低価格車を恐れていた。しかし、数年後、中国製は一掃され日本製モペットに変わった。日本車に取って代わった理由は分析され、報告書もある。
それにしても、信号らしきものが無い交差点で、雲霞(ウンカ)の如く湧き出てくると表現した方が適正だと思うほどのモペットの大群を見たとき、モペットをこれ程までに市場に認知させたホンダ技術者と営業担当には本当に敬服した事を覚えている。この光景は「二輪事業に携わったホンダマンこそ男冥利に尽きる」と感心したものだ。本当に頭が下がる思いだった。
鈴鹿8耐や世界の二輪レースではホンダと鉾を交えて戦う機会を得てホンダの戦い方は何となく理解していたが、ベトナムでのホンダの大群を見たとき程、二輪事業に携わった一人の技術者として羨ましさを感じた事はなかった。
アフリカと中近東は最後に残った二輪市場だと思うが、ホンダはどの二輪市場でも先鞭をつけて進出し成功を収めてきた先駆者だ。昔、昼休みの事務所の片隅で、遊びのトランプ賭けごとに興じながら、トランプ仲間の営業の大先輩が言っていた事を覚えている。「ドイツの山奥で、こんな処にバイクを売りに来た営業マンはいないだろうと聞いたら、「おまえはホンダについで二番目だ」」。ホンダの成功を期待している。
これから10~15年先、アフリカは二輪の大市場になる可能性は高く、そして次は、政情が安定化さえすれば中近東も二輪の大市場となる。
どの国の人々ももっと豊かになりたいと思って経済活動を推進するはずであるから、新興国はアフリカ市場を焦点にして経済活動を推し進めるだろう。これからは、次の市場アフリカを舞台に、ホンダの中国やインドとの競争は続く。
ベトナム市街交差点でのモペットの大群
中国勢に勝負かけるホンダ二輪
「弱点のアフリカに戦略車を投入」
アジアで強いホンダも、アフリカでのシェアは1%程度。
ホンダが二輪車でアフリカに攻勢をかける。出遅れていた最後の成長市場で挽回を図るため低価格戦略車を8月に投入するのだ。
年間1145万台(2010年度)を販売するホンダは、世界最大の二輪車メーカー。特に、東南アジアでのシェアは高く、ほとんどの国で過半
を握っている。 今後の成長余地もまだまだ大きい。
年間1145万台で売上高1兆2881億円という10年度の実績に対して、「将来的には新興国を中心に3000万台近くにまで伸びる」(ホンダ関係
者)と見ている。 新興国でのおよその収益構造は、「工場建設に100億円を投入し、年間売上高約500億~600億円を見込み、2年分の利益
で100億円を回収」というもの。 資金も期間も四輪事業の数分の1以下ですむ機動的なビジネスだ。二輪事業の営業利益は1385億円、売
上高営業利益率は10.8%と四輪事業の3.9%よりも高い(10年度)。
ホンダの屋台骨を支え、アジアでは向かうところ敵なしの二輪事業だが、アフリカではまったく事情が異なる。
年間300万台が販売されるアフリカ大陸全体でのホンダのシェアはわずか1%程度。ほとんどを中国とインドの格安二輪車メーカーに握られ
ているのだ。 アフリカ市場は「格安のバイクを壊れるまで乗りつぶして、アフターサービスは気にしない」という特性があるという。
そうした前提で作られた二輪車と価格差が生まれるのは必然だ。
現在、ホンダの主力商品である排気量125ccの二輪車はナイジェリアでは10万円以上で売られている。これに対して、中国やインド製の格
安二輪車は5万~7万円程度だという。 その市場に8月、新たな戦略車を投入し、勝負をかける。新車種は、中国での部品調達体制を見直
し、品質を落とすことなく安価な部品を入手、それをナイジェリアの工場で組み立てることにした。
その結果、日本円にして約6万5000円を実現した。5万円程度という中国車の価格よりは高いが、インドのメーカーであるパジャージの主力
車種と同等になる。まずはナイジェリアで販売し、アフリカ全土を狙う。「15年ほどたてば、アフリカはホンダにとって大きな市場になる
可能性がある」と見込む。2000年代初頭、ベトナムなどで中国製の粗悪なコピー二輪車が市場を席巻。ホンダの地位が脅かされた時期があ
った。しかし、コピーメーカーが決してまねできないレベルの安くて壊れない二輪車を投入することで、再びシェアを挽回することに成功
した。ホンダがアフリカで狙うのは、アジアビジネスの成功に学んだ一気呵成のシェア奪取だ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 清水量
介)