記事は「国連総会(193カ国)は24日、ロシアのウクライナ侵攻から満3年となるのに合わせて特別会合を開き、ロシアを非難し、ウクライナの領土保全を支持する欧州側提出の決議案を、93カ国の賛成多数で採択した。アメリカ、ロシアなど18カ国が反対票を投じ、65カ国が棄権した」として、アメリカはロシアを非難する決議に反対した。この決議に反対するという事はロシアのウクライナ侵略を正当化するもので、西側諸国のリーダー格であるアメリカが反対票とは理解しがたい。二次大戦後、民主主義国家であれだけ強固に結びついていると信じていた欧州とアメリカが、大統領が代ると180度も考えが違うものかと恐ろしくなった。またある別の論説に寄ると 「トランプが何を考えているのかわからない。停戦交渉ではなくウクライナと取引しようとしている。鉱物資源と引き替えに停戦なんてバカげた話だ。これで戦争が終結する見通しもない。欧州は徹底抗戦する方針だ」とあった。これではアメリカに追従することで安心しきっている日本はどのような論理・思想でアメリカのトランプ政権と接していくのだろうか、今週、最も気になったニュースの筆頭。
頻繁にテレビに出演しロシア状況について解説している東大の小泉准教授の解説:産経ネット誌の「
<正論>人ごとではない頭越しの「停戦」」はアメリカトランプ政権の考えを詳しく解説している。ロシアのウクライナ侵攻を正当化したトランプ大統領に対する日本の対応について、小泉准教授はこう言っている。「
安全保障の根幹を米国の拡大抑止力に依存する我が国としても、これは見過ごせない事態である。・・・(略)・日本は「たまたま」米国にとって最重要正面に位置しているのであり、安全保障への米国のコミットメントを今後とも当然視する確固たる根拠はもはやあるまい。1979年の電撃的な米中和解を思い起こすなら、大国が我々の頭越しに地政学的構図を一気に書き換えてしまうということは十分にありうる」と警告している。
● 「露ウクライナ戦争3年」
ウクライナ戦争の「停戦」に向けた動きが加速している。1月20日に発足した米国のトランプ政権の強い主導によるものだ。3年に及んだ戦争が終わるのであれば、望ましいことは間違いない。
● ただ以上の文章では「停戦」という言葉にカギカッコを付した。トランプ政権が目指すそれは、カギカッコ抜きで停戦と呼べるものであるのかどうか、という疑問を持つからである。最も基本的な意味での停戦とは「戦闘を止めること」であろう。もう少し広義には紛争の原因について何らかの解決を図る、ということまで含む場合もある。このように考えた場合、トランプ政権の政策はカギカッコなしの停戦と言えるのかどうか。
● ロシアとウクライナはこれまでにも停戦合意を結んだことがある。2014年から15年にかけてロシアはウクライナに対して最初の軍事介入を行っており、これに対して第1次・第2次のミンスク合意が結ばれた(これに追加議定書を加えてミンスク諸合意と呼ぶ)。だが、14年9月の第1次ミンスク合意は数カ月しかもたず、新たに結ばれた15年2月の第2次ミンスク合意は7年で破られた。現場レベルでの小規模な停戦合意違反となると20回以上に及ぶ。
● このような経験を踏まえるなら言葉の上でだけロシアに停戦を約束させるのでは不十分である、ということは明らかだ。予想されるロシアの停戦違反を阻止すること、ましてそれがウクライナに対する大規模侵略の再来とならないことが求められる。だがトランプ政権の周辺からはこの点に関し具体論がどうにも聞こえてこない。
● 「欧州の問題なんだから、欧州がしっかりしろ」というトランプ大統領らの言い分はもっともである。実際、ロシアの侵略が成功して一番困るのは欧州各国なのだから、今後の停戦を担保する取り組みに関しては欧州の役割が強く期待される。英仏が平和維持部隊の派遣に向けて動いていることは、この意味で歓迎されよう。
● トランプ政権の対応は迷走
ただ気になるのはトランプ政権幹部たちの口ぶりに「欧州がしっかりしろ」というよりも「欧州にはもう関わらない」というニュアンスが感じ取れることだ。長期的な停戦の信憑(しんぴょう)性を危うくするものだ。「もう米国は欧州情勢に首を突っ込んでこないだろう」とロシアが考えるようなら、停戦はほんの一時的なものにしかならない。
● 一方、より広義の停戦、すなわち紛争の原因解決についてはどうだろうか。残念ながらトランプ政権の対応は迷走していると言わざるを得ない。ロシアがウクライナに対して侵略を企てたのであって、それを認めてはならないというのは特に論ずるまでもない基本中の基本である。
しかしトランプ大統領は「ウクライナが戦争を始めた」「ゼレンスキーは独裁者だ」とロシアのプロパガンダまがいの言説を公然と口にし、ウクライナの頭越しに米露間で「停戦」を決めようとしている。伝えられるところでは停戦後にウクライナで大統領選を実施し、最終的な終戦合意を目指すという(『産経新聞』2月20日)。
● 問題は、こうした停戦の道筋を話し合うにあたって当のウクライナが蚊帳の外に置かれ、欧州諸国まで対話から締め出されていることだ。あまりに大国中心主義的であるし、どのような条件で、尚且(なおか)つ停戦後のウクライナの安全をいかに保証するのかも全く見えてこない。前述のトランプ大統領の姿勢を見るに、ロシアに一方的に有利な合意を結んで手仕舞いにしてしまう、という可能性も排除できないだろう。この意味で、トランプ政権のウクライナ停戦政策を形容するには、カギカッコを3重くらいにする必要がある。
● 日本も見過ごせない事態
安全保障の根幹を米国の拡大抑止力に依存する我が国としても、これは見過ごせない事態である。先般の日米首脳会談では、米国側から日本防衛やインド太平洋地域の安全保障に対するコミットメント継続の意思が表明され、「一安心」という空気が漂った。
実際問題として、これは重要な成果であるものの、手放しでは喜べまい。侵略の被害国であるウクライナを冷酷に見捨てる米国が、日本周辺の安全保障には手厚いのはなぜか。米国の覇権を脅かす力を持ったライバルはロシアよりも中国であると見なされているからに他ならない。
別の言い方をすると日本は「たまたま」米国にとって最重要正面に位置しているのであり、安全保障への米国のコミットメントを今後とも当然視する確固たる根拠はもはやあるまい。1979年の電撃的な米中和解を思い起こすなら、大国が我々の頭越しに地政学的構図を一気に書き換えてしまうということは十分にありうる。
もちろん、「米国が信用できなくなったから、今度はどこの国の側につこうか」ということであってもならない。自らの安全保障を自ら全うするという主体的な覚悟と、具体的な構想とが、いよいよ求められているのである。(こいずみ ゆう)