2月7日のMotocross Actionネット誌の「RUMORS, GOSSIP & UNFOUNDED TRUTHS: 」の中に、面白い記事「 WHY KTM DESERVES YOUR GRATITUDE FOR TWO-STROKES?」があった。KTMが多くの日本企業が止めた2ストロークのモトクロスマシンをなぜ開発したのかの理由を書いている。

「KTM’s Stefan Pierer explained in an Alan Cathhart interview, why KTM kept making two-strokes when everyone else was quitting. “When I started at KTM 30 years ago— back in 1992, I had to make the decision of whether or not to produce a new 125cc two-stroke engine platform. But, at that time, we didn’t really have the liquidity to support it, so we were thinking very seriously, should we do it or not? So many comments were made that the two-stroke is dead, but finally I said, ‘That’s the only new engine platform that we can afford to do, because a two-stroke motor is much cheaper to develop than a four-stroke, so let’s do it.’ And 30 years later it’s still alive in a quantity which I should not name, but if you twist my arm we’re talking about 50,000 bikes a year! Honda tried to stop everyone from making two-strokes, but Yamaha kept making them, too.」
KTMのStefan Pierer(KTMの前CEO)がAlan Cathhart(著名な二輪ジャーナリスト)のインタビューを受けた際、多くの企業が2ストロークマシンの開発・製造を止めていく中で、KTMがなぜ2ストロークエンジンを開発し続けた理由を語っている。
「私がKTMに入社した30年前の1992年、私は新しい125ccの2ストロークエンジン・プラットフォームを製造するかどうかの決断を迫られていた。しかし、当時はそれをサポートする流動性がなかったため、やるべきかやらないべきかを真剣に考えていました。2ストロークはもうダメだという意見が多かったが、最終的に私は、『2ストロークエンジンは4ストロークよりも開発費がはるかに安いので、それをやろう』と言った。 そして30年経った今でも、名前は伏せておくが、年間5万台のバイクが生産されている!ホンダはみんなに2ストロークの開発を止めようよと提案してきたが、しかしヤマハは2ストロークエンジンを開発し続けている。」
「I remember in back in 2000 the Japanese told me in Tokyo, “We stopped with the two-stroke, everything is heading towards four-stroke.” Okay, but because of that racing got much more expensive, with really high-end technology, because a four-stroke top end is almost rocket science with 15,000 rpm, titanium valves and all those kinds of expensive things. KTM makes two-strokes because the customer wants them. We hope that with direct fuel injection we might even achieve street-legal homologation.」
「2000年頃、東京である日本人が私に言ったことを覚えている。"我々は2ストロークを止めた。皆は4ストロークエンジン開発の方向を向いているよ" と言った。でもしかし結果は、4ストローク化でレース自体が非常に高くなってしまった。4ストロークエンジンのトップエンドは、15,000rpm、チタンバルブ、その他もろもろの高価な部品を多用したもので、ほとんどがロケットの科学と同じように高価な技術で構成されており、従って4ストロークは非常に高くなっている。KTMが2ストロークを作るのは、顧客がそれを望んでいるからだ。ダイレクト・フューエル・インジェクションを使えば、ストリート・リーガル・ホモロゲーションも達成できるかもしれない。
この話題は、同じくMotocross Actionネット誌が 2,3年ほど前に取り上げていた”2ストロークモトクロスマシン待望論”と重複するもので、オフ車大国米国では、コロナパンデミックの暗黒時代が到来後、2ストロークマシンの部品、プラスチック、ピストン、エキゾートパイプが飛ぶように売れ、そしてオフロードブームが再到来した時期、2ストロークマシンが急増した。この事実をスズキ、カワサキ、ホンダの首脳陣は無視し続けたが、一方、 KTM, Yamaha, Husqvarna, GasGas, Beta, Sherco, TMはその事実を真剣に受け止めた。彼らは、2ストロークマシンが復活してくると判断した。結果は「 In fact, KTM was selling more two-stroke dirt bikes than the Japanese brands were selling four-strokes」となって、実際、KTMの2ストロークバイクの販売台数は日本ブランドの4ストロークバイクの販売台数よりも多いのだと言う話と重複する。4ストロークの$12,400 CRF450WEも$1500の2ストロークの中古バイクもモトクロスマシンとしての楽しさ・面白さは何も変わらないのだ。4ストロークの$12,400 CRF450WEが格段に面白さを提供してくれるものではない、とも書いていた。
KTMは末端ユーザーの視点をよく理解してきたので、ハイエンドの技術を駆使したパワフルな4ストロークと軽量で安価に楽しめる2ストロークは必ず両立すると考えてきたのだと思う。だからこそKTMはオフ車市場の頂点に昇りつめた。 KTMの成長過程や現在の法的再建の事例推移を見ると、二輪事業は経営手腕によってはまだまだ「未来ある事業体」と言えるのではないだろうか。当たり前のことだが、最後は結局、経営戦略の優劣が勝敗を決する。かっての大昔、BSフジプライムニュースに出演した”ジャパネットたかた”の高田社長が面白いことを言っていた。「最近のメーカーは新商品の特徴をさかんに強調するが、重要なのは、その商品を買う事でお客がどんな素晴らしい生活を楽しめるかを十分説明しきれていない。職人はいるが商人が不十分」。 ・・" Let The Good Times Roll"・・