この映画は面白かったし、泣けてもくる。「ゴジラ-1.0」だ。
新聞の映画評に、アメリカの観客&批評家が絶賛したと書いてあった。アメリカの映画ファンが、この「ゴジラ-1.0」のどこに面白さを感じたかはよくわからんが、同時代を生きた我々年寄りが見ても非常に面白く、1年ぶりの映画に、場面場面に涙が出た。
時は終戦時の物語。太平洋戦争に日本は負け、多くの市民は必死になって立ち直ろうと一周懸命に働きもがいていた。ところが、奈落の底に落ち込んだ日本国民に、さらに追い打ちをかける大災難が、何ら理由もなく突然やってくる。ゴジラと言う怪物が存在していることを多くの市民は知っているが、戦争に負けた日本の、その首都東京にやってきて、突然大暴れする。東京の多くの建物が無差別に理由もなく破壊され、また多くの住民がゴジラに足蹴にされ死んでいく。映画は、この巨大なゴジラと言う大災害と日本の戦争の生き残り者の戦いの物語だ。
ゴジラは圧倒的破壊力で無慈悲に街を、建物を、何の理由もなく破壊していく。戦争に負け、戦う武器は何もなく、戦勝国の非難を恐れてただ無策に穴に首を突っ込んで嵐が過ぎるのを待つだけの政府、戦争の生き残り者を集めて戦おうという声が出るも、武器もなけれ戦えるはずもなしとチームから離れていく人もいる。大災害は突然にやってきて町が破壊されている現実に、どうする日本。かって戦争に負け、苦難の道を歩かされてきた日本の戦後の道筋の延長上に、この映画があるような感じすらあって実に分かりやすい。
太平洋戦争後すぐに生まれ、その後、貧しい日本の歩みを実体験してきた身なので、場面場面は非常にわかりやすい。ゴジラと言う世紀の大災害が突然やってくるも、戦争に負けた日本が武力を出すわけにはいかないと、だんまりを決める無策の政府に何も期待できず、しかし大災害は都市のど真ん中に現実にやってきたのだ。大した武器もなく戦うすべを考え実行に移す戦争の生き残りの日本人、そんな武器では戦えるはずもなかろうと思えど、これが現実の姿だから戦わないと皆死んでしまうのだから、少ない武力を拾い集め知恵を絞って戦う。最後は、戦時中の特攻の生き残りの若者が爆弾を満載した飛行機でゴジラの口に飛び込んで爆発させ、ゴジラを海の底に沈め、勝ったと大歓声がわき上がる。しかし、海中深くに沈みながらも再び起き上がるべく体を再生させていくゴジラの姿が映画の最後に映し出される。災害はまた再び襲ってくるサインだ。保身ばかりに走る政府に頼る事もなく、有志を集め大きな外敵と闘う姿に心を洗われる気すらして、見終わったあとは爽快感が漂い涙が出てきた。日本の若い人も捨てたもんじゃないよ、と感じた。
ゴジラ映画と言えば、2016年に「シン・ゴジラ」を見た。
この時も思ったが、ハリウッド版「ゴジラ」に比べれば、日本製ゴジラの方が現実的で親近感もあり、迫力のすごさを加わって、やはり日本本場の「ゴジラ」の方が断然面白い。しかし、前回の「シン・ゴジラ」の主役、官僚役が早口でしゃべるので何を言っている大半は理解できず、役者の動きでその流れを後から付いていくだけで、正直大変疲れる映画だった。専門用語らしいセリフを鉄砲みたいに早口でしゃべられても、予備知識が全くない当方観客にとって、見ていて大変落ち着かない映画だった、と言うのがシン・ゴジラの印象だ。そして、最後に頼りになるのは自衛隊と言う実行部隊の組織力と素早い行動力だった。官邸や役所が法律論から一歩も出ることできない中で、実力を保持する部隊に最後は頼らざるを得ない。最後に日本を守るのは自衛隊しかないと感じられたのが「シン・ゴジラ」だ、と思えた。