2019年の鈴鹿8耐は、近年稀にみる好レースで、二輪企業が持つトップチームであるワークスチームの戦いとはこういう凄いものだと改めて知ることができた。鈴鹿8耐と言う、国内二輪レース最高峰のエキサイティングなレースが国内の多くのレースファンや二輪ユーザーを虜にし、そして二輪業界が再び盛り上がってくれたらと期待している。
今年の優勝は、カワサキワークス「Kawasaki Racing Team」となった。
ただ、8時間終了前の19:28分に、それまでトップ走行の「Kawasaki Racing Team」所属のライダーが転倒しゴールできなかったので、ルール上、優勝はヤマハワークスの「TECH21」が暫定優勝チームとして表彰された。しかしその後、「Kawasaki Racing Team」からクレームが付き協議された結果、初期の暫定結果は覆り、「Kawasaki Racing Team」が暫定優勝となった(これらの経緯はFIMEWCの結果表に記載あり)。その理由が詳細に報道されていなかったので、何で?と不可思議に感じ、実に後味悪い結果となった。明けて29日の午後過ぎ、「鈴鹿サーキットの最終結果が告知」され、暫定の文字が消え、正式に「Kawasaki Racing Team」が最終優勝と認定された。同時に「裁定経緯も公表」され、またヤマハもこの結果を受けいれると報道「2018-2019 FIM世界耐久選手権シリーズ最終戦 “コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第42回大会 YAMAHA FACTORY RACING TEAMがライバルとの激闘の末2位を獲得」とし、内容は「暫定リザルトの改訂につきましては、当社としましてもレース審査委員会へ説明を求めましたが、裁定に至る経緯説明を受けた結果、その裁定を尊重して受け入れました」との記載がある。
最終結果が二転した問題のジョナサン・レイの転倒シーンがこれ。
レース217周目にKawasaki Racing Team Suzuka 8Hのジョナサン・レイが転倒。即座に赤旗が掲示され、レースは216周で成立した。
公表された裁定経緯によると、
1.暫定結果として、計時モニターにて 「#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAM」を 総合優勝とした根拠:
「FIM Endurance World Championship and Cup Regulations 1.22.5に基づき、"レースが終了"して以降、5分以内にフィニッシュライ
ンを通過しなければならないという規則が存在するため、転倒後フィニッシュラインを通過できなかった「#10 Kawasaki Racing Team
Suzuka 8H」は順位認定から除外」。
2.「#10 Kawasaki Racing Team からの抗議を受けて、#10を総合優勝とした根拠:
「FIM Race Directionにおいて赤旗の運用規則を再度厳密に精査し、FIM Endurance World Championship and Cup Regulations 1.23.1
に定められた赤旗中断時の規則を適用し、"赤旗提示の1周前(216周)の順位を結果として採用する"という規則に則り、暫定結果を変更した」
鈴鹿レポートをもう少し詳しく解説した資料を探すと、「motorsport.com 日本版|モータースポーツ情報サイト」の「鈴鹿8耐の暫定結果改定の理由は? “赤旗”掲示時の処理がカギに」にこうあった。
「これについてレース終了後から2時間が経った21時30分に、FIMが報道陣に対してリザルト変更の経緯について説明した。また、その場で赤旗が掲示される1周前の順位に基づき、カワサキが優勝となることが伝えられた。 しかし、疑問となるのが『なぜ当初はヤマハが優勝とされたのか?』、そして『カワサキが優勝という結果に変更される根拠は何か』というふたつの点だ。
●リザルト変更の理由と当初の暫定結果についてFIMそしてレースディレクション側は以下のように説明した。
「赤旗でレースは終了となり、5分以内に全選手がピットレーンに入ってきた段階でレース終了という考えだった」
「この考えは、5分以内に(ピットレーンへ)入ってきたマシンの順位ということで、これはFIMワールドチャンピオンシップの見解だ」
FIMのレースディレクションは当初出された暫定結果についての説明を行った。なおこの発言に関してはFIM世界耐久選手権レギュレーション1.22.2『規定周回数、または時間を走行することを競う競技会において、トップのライダーには、コース上のフィニッシュラインに立つオフィシャルによってチェッカーフラッグが振られる。チェッカーフラッグは後続ライダーにも出し続けられる。 もし、トップのライダーが5分以内にフィニッシュラインを通過しない場合、暫定2位のライダーに対しチェッカーフラッグが提示される』がその根拠と思われる。
●チーム(カワサキ)から(この結果について)抗議を出された」
「抗議内容は『レースディレクションは赤旗でレースを中断した場合、サーキットの全てのポストに赤旗が掲示される。赤旗が掲示される前の最後の周回で全車がコントロールラインを通った順位をレース結果とする(※FIM 世界耐久選手権レギュレーション 1.23)』と明記されているというものだ」
●「結論として、赤旗が掲示される1周前(216周終了時点)をレースリザルトとすることとした」、と書いてある。
FIMの耐久レース規則「FIM Road Racing Endurance World Championship and Cup Regulations」によると、
1.22 「FINISH OF A RACE AND RACE RESULTS」規則には、「規定周回数、または時間を走行することを競う競技会において、トップのライダーには、コース上のフィニッシュラインに立つオフィシャルによってチェッカーフラッグが振られる。チェッカーフラッグは後続ライダーにも出し続けられる。 もし、トップのライダーが5分以内にフィニッシュラインを通過しない場合、暫定2位のライダーに対しチェッカーフラッグが提示される」と明示されており、これは耐久レース勝者を明文化したものと思われる。(一般的には、例えばFIM規則を準拠する全日本ロードレース選手権の勝者規定は「優勝者は規定の距離(周回数)または時間を完走して最初にフィニッシュラインを通過したもの」とだけ規定し、FIM耐久規則のような5分間規定はない。)
1.23 「INTERRUPTION OF A RACE」規則には、赤旗掲示等にてレース途中でレースが中断された場合の規則が書いてあり、この場合は赤旗が掲示される前の最後の周回で全車がコントロールラインを通った順位をレース結果とするだけ書いてある。
今回、鈴鹿8時間耐久にて、FIM技術役員が当初優先裁定した規則は1.22。この規則は多分、耐久レースの目的そして特殊性から、その勝者の定義をより明確に明文化したものあろうと考えられる。耐久レースの勝者は、規定周回数または時間を経過したトップライダーはフィニッシュラインを通過後、5分以内に再びフィニッシュラインに戻らねばならないと決めた規則。赤旗レース中断の場合も、赤旗中断規定のフィニッシュラインは赤旗が降られる前の周と判断するも、トップ走行のライダーはフィニッシュラインに5分以内に戻らねば勝者としないと判断したと思われる。だから、トップだった♯10は5分以内に再通過能わなかったのでトップ無効となり、その時の2位のライダーを優勝とした。2位以下の順位はFIMの赤旗ルールに従っており、FIM技術委員の当初の裁定はFIM耐久規則に準拠したもので、あながち間違っていないように思われる。しかし、技術委員が、再び、その裁定を覆したのは、単に、赤旗中断規則を優先したものと思われる。
耐久レースと言う特殊なレース(24時間あるいは8時間)中に発生しうる経験や想定を加味し、それでもなお耐久の勝者として認定するには、フィニッシャライン5分間ルールが必要だったのだろう。今回の鈴鹿8時間の事例での勝者を決定するに、耐久規則のどの規則を優先するかの判断だが、その判断の決定者はFIMの技術委員なのだ。クレームがついて勝者を決める優先規則を変更するなど、お粗末すぎる。
#10が転倒後、8時間には少し時間が残っており、SCもコース上に入っていた(テレビにSCが入ったのが見えた)ので、SCが入ったまま8時間走行させるのが良かったと思うが、赤旗掲示によりレースは中断した。従って最終的には、利害関係の強い団体が上位の国際スポーツ審査委員会等へ上程しない限り、今回の最終リザルトは決定される。今回の優勝者認定の裁定経緯は、素人の8耐ファンにとっては今一つ釈然としないものだが、規則を熟知しているはずのFIMの技術役員でさえ混乱した規則は、法解釈論としては良い素材と思われるので学生達の討論素材に適と思われる。
何れにしても、翌日の車検結果をもって再暫定結果が正式結果となった。
FIMの競技委員の結論が二転三転したため混乱し、正式結果に至る経緯は非常に後味の悪いものであったが、耐久レースをテレビ観戦した範囲では、「Kawasaki Racing Team」は、耐久レース中さしたるミスもなく、それ以上にジョナサンレイの走りは参戦ライダーの中で突出しており、まさに鬼神にもせまる迫力があり、これぞスーパーバイクの世界チャンピオンだと感じさせるほど見事な物だった。一方、「Kawasaki Racing Team」と同一周回の走りを見せたヤマハワークス、ホンダワークスの戦いも見事だったが、さしたるミスもなく淡々と耐久レースをこなした優勝チームの「Kawasaki Racing Team」と比較するとミスが目立ったように思う。例えば、ヤマハワークスは、昨年迄の圧倒的な走りやスピードが無くなっていることは事前合同テストや全日本レースにて判明したため、これでは激しい戦いを強いられると予感されたにも係わらず、そのための対策が十分ではなかったのだろう。特にピットイン/アウト作業の遅さは、致命的なロスとして問題が露見した。過去、ヤマハワークスが他の競争相手よりも圧倒的に早いラップタイムを保持していた時には見過ごされていたがこの4年間、問題として指摘されてきたにも拘らず、改善されなかったピット作業の遅さは如何ともしがたい。テレビを見ながら、ピット作業タイムを計測したり、テレビに流れる計測タイムを聞いても、カワサキワークスやホンダワークスに比べバラツキもあるが4~5秒遅い場合もあり、リザルト結果を見ると、ホンダワークスより計約35秒遅れ、カワサキワークスに比べ計25秒もロスした。216周時のカワサキワークスとヤマハワークスのゴール差が18.7秒だったことを思うと、ヤマハワークスのピット作業の遅さは致命的だ(ピット作業を正確にかつ早くは毎日の練習の積み重ね以外にない。かって、複数チームを参戦させたとある企業チームは、本番で正確に、かつ早くピット作業を完遂させる競争をしており、1位チームのピットクルーには金一封を出したと聞いたことがある)また、スーパーバイク世界選手権レースでの負傷が完全に癒えておらず、且つウィークテストでタイムが出ないマイケル・ファン・デル・マークは、スティント後半になるとタイムが低下(EWCのライブタイミングによる)していたにも拘わらず、二回も走行させたのは本当に正解だったのかと疑問を持ってしまった(タラレバの話になるが、ピット作業をカワサキやホンダワークス並みに消化できたら、ヤマハは勝てたかもしれない)。ホンダワークスに関して言えば、エースライダーの高橋の走りは見事だったものの、ホンダは勝とういう強い意志が感じられなかった。特にライダーの選択がまずい。例えば、ステファン・ブラドルは本当に走るのか本番直前まで疑問視されたと新聞にも書かれたり、本番は走行したもののさしたる速さはないまま高橋選手の稼いだマージンを食いつぶし、また、もう一人の清成選手も宇川監督の弁では、「フィジカルの問題あり」とインタビューで発言したりと、「鈴鹿8耐は勝ちに拘る」と標榜している企業のワークスチームの割には、カワサキワークスそしてヤマハワークスにも返り討ちに合って、表彰台確保するも降参に等しい。ホンダ、8耐と聞くと目の色を変えた勝手の、あのホンダはどこかに消え、鈴鹿8耐に取り組む姿勢が悪いと思う。結果的にヤマハの5連覇は無くなり、カワサキワークスの優勝となったが、耐久中ミスなく自分の持ち分を淡々と無難にこなしたカワサキが優勝し、幾多の作戦ミス等が重なったヤマハワークスとホンダワークスはカワサキの後塵を浴びることになったのは必然の結果だったと思う。
「カワサキワークス「Kawasaki Racing Team 」万歳!!」
今年の優勝は、カワサキワークス「Kawasaki Racing Team」となった。
ただ、8時間終了前の19:28分に、それまでトップ走行の「Kawasaki Racing Team」所属のライダーが転倒しゴールできなかったので、ルール上、優勝はヤマハワークスの「TECH21」が暫定優勝チームとして表彰された。しかしその後、「Kawasaki Racing Team」からクレームが付き協議された結果、初期の暫定結果は覆り、「Kawasaki Racing Team」が暫定優勝となった(これらの経緯はFIMEWCの結果表に記載あり)。その理由が詳細に報道されていなかったので、何で?と不可思議に感じ、実に後味悪い結果となった。明けて29日の午後過ぎ、「鈴鹿サーキットの最終結果が告知」され、暫定の文字が消え、正式に「Kawasaki Racing Team」が最終優勝と認定された。同時に「裁定経緯も公表」され、またヤマハもこの結果を受けいれると報道「2018-2019 FIM世界耐久選手権シリーズ最終戦 “コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第42回大会 YAMAHA FACTORY RACING TEAMがライバルとの激闘の末2位を獲得」とし、内容は「暫定リザルトの改訂につきましては、当社としましてもレース審査委員会へ説明を求めましたが、裁定に至る経緯説明を受けた結果、その裁定を尊重して受け入れました」との記載がある。
最終結果が二転した問題のジョナサン・レイの転倒シーンがこれ。
レース217周目にKawasaki Racing Team Suzuka 8Hのジョナサン・レイが転倒。即座に赤旗が掲示され、レースは216周で成立した。
公表された裁定経緯によると、
1.暫定結果として、計時モニターにて 「#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAM」を 総合優勝とした根拠:
「FIM Endurance World Championship and Cup Regulations 1.22.5に基づき、"レースが終了"して以降、5分以内にフィニッシュライ
ンを通過しなければならないという規則が存在するため、転倒後フィニッシュラインを通過できなかった「#10 Kawasaki Racing Team
Suzuka 8H」は順位認定から除外」。
2.「#10 Kawasaki Racing Team からの抗議を受けて、#10を総合優勝とした根拠:
「FIM Race Directionにおいて赤旗の運用規則を再度厳密に精査し、FIM Endurance World Championship and Cup Regulations 1.23.1
に定められた赤旗中断時の規則を適用し、"赤旗提示の1周前(216周)の順位を結果として採用する"という規則に則り、暫定結果を変更した」
鈴鹿レポートをもう少し詳しく解説した資料を探すと、「motorsport.com 日本版|モータースポーツ情報サイト」の「鈴鹿8耐の暫定結果改定の理由は? “赤旗”掲示時の処理がカギに」にこうあった。
「これについてレース終了後から2時間が経った21時30分に、FIMが報道陣に対してリザルト変更の経緯について説明した。また、その場で赤旗が掲示される1周前の順位に基づき、カワサキが優勝となることが伝えられた。 しかし、疑問となるのが『なぜ当初はヤマハが優勝とされたのか?』、そして『カワサキが優勝という結果に変更される根拠は何か』というふたつの点だ。
●リザルト変更の理由と当初の暫定結果についてFIMそしてレースディレクション側は以下のように説明した。
「赤旗でレースは終了となり、5分以内に全選手がピットレーンに入ってきた段階でレース終了という考えだった」
「この考えは、5分以内に(ピットレーンへ)入ってきたマシンの順位ということで、これはFIMワールドチャンピオンシップの見解だ」
FIMのレースディレクションは当初出された暫定結果についての説明を行った。なおこの発言に関してはFIM世界耐久選手権レギュレーション1.22.2『規定周回数、または時間を走行することを競う競技会において、トップのライダーには、コース上のフィニッシュラインに立つオフィシャルによってチェッカーフラッグが振られる。チェッカーフラッグは後続ライダーにも出し続けられる。 もし、トップのライダーが5分以内にフィニッシュラインを通過しない場合、暫定2位のライダーに対しチェッカーフラッグが提示される』がその根拠と思われる。
●チーム(カワサキ)から(この結果について)抗議を出された」
「抗議内容は『レースディレクションは赤旗でレースを中断した場合、サーキットの全てのポストに赤旗が掲示される。赤旗が掲示される前の最後の周回で全車がコントロールラインを通った順位をレース結果とする(※FIM 世界耐久選手権レギュレーション 1.23)』と明記されているというものだ」
●「結論として、赤旗が掲示される1周前(216周終了時点)をレースリザルトとすることとした」、と書いてある。
FIMの耐久レース規則「FIM Road Racing Endurance World Championship and Cup Regulations」によると、
1.22 「FINISH OF A RACE AND RACE RESULTS」規則には、「規定周回数、または時間を走行することを競う競技会において、トップのライダーには、コース上のフィニッシュラインに立つオフィシャルによってチェッカーフラッグが振られる。チェッカーフラッグは後続ライダーにも出し続けられる。 もし、トップのライダーが5分以内にフィニッシュラインを通過しない場合、暫定2位のライダーに対しチェッカーフラッグが提示される」と明示されており、これは耐久レース勝者を明文化したものと思われる。(一般的には、例えばFIM規則を準拠する全日本ロードレース選手権の勝者規定は「優勝者は規定の距離(周回数)または時間を完走して最初にフィニッシュラインを通過したもの」とだけ規定し、FIM耐久規則のような5分間規定はない。)
1.23 「INTERRUPTION OF A RACE」規則には、赤旗掲示等にてレース途中でレースが中断された場合の規則が書いてあり、この場合は赤旗が掲示される前の最後の周回で全車がコントロールラインを通った順位をレース結果とするだけ書いてある。
今回、鈴鹿8時間耐久にて、FIM技術役員が当初優先裁定した規則は1.22。この規則は多分、耐久レースの目的そして特殊性から、その勝者の定義をより明確に明文化したものあろうと考えられる。耐久レースの勝者は、規定周回数または時間を経過したトップライダーはフィニッシュラインを通過後、5分以内に再びフィニッシュラインに戻らねばならないと決めた規則。赤旗レース中断の場合も、赤旗中断規定のフィニッシュラインは赤旗が降られる前の周と判断するも、トップ走行のライダーはフィニッシュラインに5分以内に戻らねば勝者としないと判断したと思われる。だから、トップだった♯10は5分以内に再通過能わなかったのでトップ無効となり、その時の2位のライダーを優勝とした。2位以下の順位はFIMの赤旗ルールに従っており、FIM技術委員の当初の裁定はFIM耐久規則に準拠したもので、あながち間違っていないように思われる。しかし、技術委員が、再び、その裁定を覆したのは、単に、赤旗中断規則を優先したものと思われる。
耐久レースと言う特殊なレース(24時間あるいは8時間)中に発生しうる経験や想定を加味し、それでもなお耐久の勝者として認定するには、フィニッシャライン5分間ルールが必要だったのだろう。今回の鈴鹿8時間の事例での勝者を決定するに、耐久規則のどの規則を優先するかの判断だが、その判断の決定者はFIMの技術委員なのだ。クレームがついて勝者を決める優先規則を変更するなど、お粗末すぎる。
#10が転倒後、8時間には少し時間が残っており、SCもコース上に入っていた(テレビにSCが入ったのが見えた)ので、SCが入ったまま8時間走行させるのが良かったと思うが、赤旗掲示によりレースは中断した。従って最終的には、利害関係の強い団体が上位の国際スポーツ審査委員会等へ上程しない限り、今回の最終リザルトは決定される。今回の優勝者認定の裁定経緯は、素人の8耐ファンにとっては今一つ釈然としないものだが、規則を熟知しているはずのFIMの技術役員でさえ混乱した規則は、法解釈論としては良い素材と思われるので学生達の討論素材に適と思われる。
何れにしても、翌日の車検結果をもって再暫定結果が正式結果となった。
FIMの競技委員の結論が二転三転したため混乱し、正式結果に至る経緯は非常に後味の悪いものであったが、耐久レースをテレビ観戦した範囲では、「Kawasaki Racing Team」は、耐久レース中さしたるミスもなく、それ以上にジョナサンレイの走りは参戦ライダーの中で突出しており、まさに鬼神にもせまる迫力があり、これぞスーパーバイクの世界チャンピオンだと感じさせるほど見事な物だった。一方、「Kawasaki Racing Team」と同一周回の走りを見せたヤマハワークス、ホンダワークスの戦いも見事だったが、さしたるミスもなく淡々と耐久レースをこなした優勝チームの「Kawasaki Racing Team」と比較するとミスが目立ったように思う。例えば、ヤマハワークスは、昨年迄の圧倒的な走りやスピードが無くなっていることは事前合同テストや全日本レースにて判明したため、これでは激しい戦いを強いられると予感されたにも係わらず、そのための対策が十分ではなかったのだろう。特にピットイン/アウト作業の遅さは、致命的なロスとして問題が露見した。過去、ヤマハワークスが他の競争相手よりも圧倒的に早いラップタイムを保持していた時には見過ごされていたがこの4年間、問題として指摘されてきたにも拘らず、改善されなかったピット作業の遅さは如何ともしがたい。テレビを見ながら、ピット作業タイムを計測したり、テレビに流れる計測タイムを聞いても、カワサキワークスやホンダワークスに比べバラツキもあるが4~5秒遅い場合もあり、リザルト結果を見ると、ホンダワークスより計約35秒遅れ、カワサキワークスに比べ計25秒もロスした。216周時のカワサキワークスとヤマハワークスのゴール差が18.7秒だったことを思うと、ヤマハワークスのピット作業の遅さは致命的だ(ピット作業を正確にかつ早くは毎日の練習の積み重ね以外にない。かって、複数チームを参戦させたとある企業チームは、本番で正確に、かつ早くピット作業を完遂させる競争をしており、1位チームのピットクルーには金一封を出したと聞いたことがある)また、スーパーバイク世界選手権レースでの負傷が完全に癒えておらず、且つウィークテストでタイムが出ないマイケル・ファン・デル・マークは、スティント後半になるとタイムが低下(EWCのライブタイミングによる)していたにも拘わらず、二回も走行させたのは本当に正解だったのかと疑問を持ってしまった(タラレバの話になるが、ピット作業をカワサキやホンダワークス並みに消化できたら、ヤマハは勝てたかもしれない)。ホンダワークスに関して言えば、エースライダーの高橋の走りは見事だったものの、ホンダは勝とういう強い意志が感じられなかった。特にライダーの選択がまずい。例えば、ステファン・ブラドルは本当に走るのか本番直前まで疑問視されたと新聞にも書かれたり、本番は走行したもののさしたる速さはないまま高橋選手の稼いだマージンを食いつぶし、また、もう一人の清成選手も宇川監督の弁では、「フィジカルの問題あり」とインタビューで発言したりと、「鈴鹿8耐は勝ちに拘る」と標榜している企業のワークスチームの割には、カワサキワークスそしてヤマハワークスにも返り討ちに合って、表彰台確保するも降参に等しい。ホンダ、8耐と聞くと目の色を変えた勝手の、あのホンダはどこかに消え、鈴鹿8耐に取り組む姿勢が悪いと思う。結果的にヤマハの5連覇は無くなり、カワサキワークスの優勝となったが、耐久中ミスなく自分の持ち分を淡々と無難にこなしたカワサキが優勝し、幾多の作戦ミス等が重なったヤマハワークスとホンダワークスはカワサキの後塵を浴びることになったのは必然の結果だったと思う。
「カワサキワークス「Kawasaki Racing Team 」万歳!!」